ウクライナ戦争 主攻撃対象はキエフか

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。
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 2月24日に、ロシア軍がウクライナを攻撃した。日本時間同日1200(モスクワ時間、同日午前6時、キエフ午前5時)にプーチン大統領が、軍事行動を認めると発表したと同時に攻撃が始まった。その感想を述べてみたい。

 筆者は「ウクライナ侵攻 短期間の東部限定攻撃か」という記事で「全面戦争の脅しをかけながら、東部限定侵攻か。その方がコスト安く政策目的が達成できるから」と勝手な予想をした。逆に東部限定攻撃と見せかけて仕掛けた全面攻撃になってしまった。外したことはお詫びする。目についたことを整理した上で、どのように展開するか、勝手な予想を、またしたい。外れたら申し訳ない。

 日本時間1900時点の情報と感想を羅列してみたい。

◆予想外の空挺攻撃、リスク大

ロシアの侵攻を伝える速報(TBS NEWS画面から)

(1)現代戦では初動の制空権確保が重要な鍵となる。その情報は全く伝わっていないが、ロシア軍による大規模な空港を中心としたミサイル攻撃から始まっており、またウクライナ軍とロ軍は作戦機で200機と2500機の差があり、おそらくロ軍が圧勝して決着はすでについているだろう。ただ希望もある。ウ軍は航空戦の劣勢を見越して西側の地対空ミサイルを大量に購入しているもようで、ロシア側の損害は増える可能性がある。

(2)いきなりロ軍は、空挺作戦をキエフ国際空港、他東部地域に複数仕掛け(3ヶ所ほど地名が上がっている)、またオデッサに上陸作戦を行ったと報道されている。上陸作戦の実施は前述記事で予想したが、いきなりの首都空港の強襲は驚いた。これは軍事作戦の常識に反する。空挺、上陸作戦は後続軍の存在が前提だ。孤立と全滅になりかねない。ただし、これについては続報がないので偽情報かもしれない。

ナザレンコ・アンドリュー氏が公開した地図(同氏ツイッターから)

(3)上記が事実であれば主攻撃はキエフだろう。ロシア空挺軍はPKO、緊急展開にも使われ、4個師団、4個独立旅団という大きな兵力を持っている。ただし4ヶ所への降下は分散しすぎで、運送能力も限られるはずで、少数の兵士しか運べず、危険を伴うものだ。

(4)在日ウクライナ人のナザレンコ・アンドリー氏が攻撃を受けた場所の以下のツイートを公開していた(攻撃を受けた都市の地図。全面戦争。)。

 ミサイルと思われるが、全国に散ってはいるものの、攻撃はキエフ近郊と、東部に集中している。これは前述記事で述べたような、北部と東部からの陸上部隊の進撃路の可能性がある。

(5)国境の重要都市ハルキウ(ハリコフ)にはロシア軍進出の映像が出ている。であるがもっとも広報用に、市庁舎や象徴的建物に旗を立てる等の確認する映像はなく、戦闘の経過は不明だ。

◆原子力発電所占領で大きな混乱か

(6)今回印象的なのはウクライナが欧米メディアの支援もあり、広報が積極的なことだ。またスマホの時代であり、市民が映像を流す。ロシア側も広報に積極的だ。クレムリン宮殿内で行われたプーチン大統領の出席した最高意思決定機関の国防会議を公開していたのには驚いた。両国とも軍の動きは沈黙している。 

 こういう情報で気をつけなければならないのは、フェイクの映像が流れプロパガンダに利用されることだ。一方で、世間の目があれば、戦争犯罪を抑制する可能性がある。ロシア軍は伝統的に、行儀が悪い。情報は多くの人に知られるべきであろう。

(7)ウクライナには原発が15基ある。近年の発電に占める割合は60%と高い。同国はエネルギー資源に恵まれないためだ。モルドバ寄りのベラルーシ国境地帯に2発電所6基、黒海のオデッサ近くに発電所3基、前回紹介した東部のドニエプル川下流のサポロージェ原子力発電所に6基がある。ロ軍は原発をいきなり破壊する蛮行はしないだろうが、それを確保すれば、ウクライナの社会と経済を混乱させることができる。

(8)今後の展開。通常ロシア軍は航空戦力の撃滅から始めるだろう。航空優位を確保した後で、特殊部隊の攻撃、大規模な地上攻撃を行うはずだ。ただし上記のキエフ、オデッサ攻撃が事実ならば、ロシア軍は、先行した部隊を救援するためこの2地点を確保することを急ぐはずだ。また筆者が前回指摘したように、北と東からの二重包囲によって東部国境のウクライナ軍を包囲撃滅する可能性もあるだろう。

◆日本政府のズレの悲しさ

(9)日本政府の動きが遅く、ずれて、悲しい。憲法9条によって何もできない国ではあるが、岸田首相は頼りない。問題への第一声が記者団への質問で「情報収集」「G7と協調する」であった。しかし、自由と民主主義と他国の主権への挑戦と、日本のよって立つ普遍的価値に反すると、ロシアを厳しく糾弾してほしかった。

 最後にプーチン大統領とロシアの侵略行為を批判し、ウクライナと同国民の被害が抑えられ、1日も早く平和が訪れることを祈る。

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