共産党市議団 組織ぐるみで不正アクセス(前)

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 調布市の市議が議員用のクラウドに閲覧権限のない者にIDとパスワードを伝えていた事案は、日本共産党調布市議団も事実を把握し、黙認していたことが17日、明らかになった。当サイトの取材に対して同市議団の岸本直子幹事長(63)は、田村ゆう子市議(39)が元市議の男性(73)にIDとパスワードを伝えていたことを把握し、違法なことと知りつつ黙認していたことを明らかにした。田村市議の個人的な行為ではなく、日本共産党調布市議団が組織全体でルールを破り、不正アクセス禁止法に違反する可能性がある行為を行なっていたことになる。

◾️報道は事実と認める

日本共産党の田村ゆう子調布市議(右)と岸本直子同市議(撮影・松田隆)

 調布市議会の厚生委員会に出席していた田村市議は17日、昼休みの時間を利用して日本共産党調布市議団の岸本幹事長とともに当サイトの取材に応じた。15日に報道された元市議の男性(73)にIDとパスワードを伝えていたことは事実であると認めた。伝えた理由についても報道にあるように議案への態度を決める時などに助言をもらうためであったとした(讀賣新聞オンライン・調布市の元市議が行政資料閲覧用クラウドに不正ログイン、共産党市議がIDとパスワード伝える)。

 岸本幹事長はIDとパスワードを伝えた事実は知っていたが、止めることはなく黙認していたという。日本共産党調布市議団は岸本・田村両議員の2名であり、市議団全体でルール違反であることを知りながらIDとパスワードを元市議である一般市民に提供してクラウドを閲覧させていたことになる。

 調布市議会事務局によると、新人議員にクラウドへのアクセスが可能なIDとパスワードを渡す際には「厳重に管理してください」と伝え、自分以外の者に閲覧させてはいけないという趣旨で注意喚起を行なっているという。

 そうした中で発生したこの事案について両市議に聞いたが、肝心な所は「記憶にない」を繰り返した。IDとパスワードがどのような経緯で元市議の男性に渡ったのか、元市議から求められたのか、田村市議が自分から提供して議員活動の援助を求めたのか、あるいは第三者が田村市議にIDとパスワードを伝えるように命じたのかは事案の性質を決定づける最も重要な部分であるが、その点については明言を避けた。

◾️共産市議の仲間割れ

 以下、両市議とのやり取りを記す。

 ーー(田村市議がIDとパスワードを元市議に)渡したことを党はご存知だったんですか

 岸本:党? いつ渡したかは知らなかったですけど、(IDとパスワードを元市議が)わかっているというのは後で知りました。

 ーー後というのは、報道の後ですか

 岸本:いえいえ、違います。それより前ですね。

 ーーということは、党としてもご存じの上で、渡していたわけですね

 岸本:ご存じの上で渡したんじゃなくて、渡したことを後で知りました。

 ーー黙認したのですか? たとえば「それダメですよ、やめなさい」とは言わなかったのですか

 岸本:それも言ったかなぁ…覚えていないんです。

 ーー言った覚えがないということですか

 岸本:注意が必要だってことは言ってましたけど…。

 ーー何の注意ですか

 岸本:そういうもの(IDとパスワード)を外に出しちゃいけないよって言うとかね、そういうことは言ってましたよ。

 ーー(田村市議へ)言われました?

 田村:それは私ではないです。

 岸本:(田村市議へ)それは、何?

 ーー党からそういう注意があったということですよね

 岸本:党ではなくて、私から、外に出しちゃダメよという話はしたことがありました。それがいつかは覚えていません。

 ーー(田村市議へ)言われました?

 田村:(岸本幹事長へ)それ、どの…

 ーー今、幹事長から重要なお話がありましたが…

 岸本:した話は覚えていますけど、いつかは覚えていません。

 ーー(話をしたのは)田村先生が議員になってから(2023年4月23日)ですよね

 岸本:そうです。(田村市議へ)話ってしたっけ?

 ーーしたっけ? したんですよね?

 岸本:新人議員の研修でタブレットを使う学習会みたいなのをやってましたよね?

 田村:はい。

 岸本:それで当然、それについて教えられてたんだよね?

 田村:はい。もちろん、それを「注意してください」ということを事務局から言われました。

 岸本:私が言ったかどうかは覚えていない…

 ーーいやいや、「私からした」と言いましたよ

 岸本:話が混同してごめんなさい。

 ーー党としては言ってないんですね

 岸本:党として…

 ーー幹事長はおっしゃってないんですね

 岸本:当然分かってると思っていました。

 ーーそれはいけない行為だから、当然(ルールを)守っているだろうと思っていたわけですね

 岸本:それは新人研修でやってるので、当然理解しているって感覚だった…

 ーー(管理に注意が必要だと)言ったんですか、言ってないんですか

 岸本:そのことについて明確に言った覚えはあまりないですねぇ…

 ーーさっき、「言った」と言いましたよ

 岸本:ごめんなさい、違うことです。

 ーーそれではおっしゃってないんですね?

 岸本:そう思います、はい。

◾️組織ぐるみの違法と思われる行為

 岸本幹事長は当初、田村市議に対してIDとパスワードの取り扱いについて「注意が必要だ」と言ったと主張していたが、田村市議本人に確認したところ、前言を翻した。事務局によると両市議は議会に対して事情を説明し、田村市議がIDとパスワードを元市議の男性に伝えていた事実を岸本幹事長も把握していたと認めたという。その場で岸本幹事長は以前から「注意が必要だと言っていた」と事実と異なる説明をした可能性がある。

 調布市議会は行為の違法性の有無について専門家に聞くとしているが、前提となる事実関係が正確に伝わらなければ、専門家の意見を聞く意味はない。両市議は、真相を究明し、再発防止のために尽力する調布市議会の努力を無にするかのような言動であることを、どこまで認識できているのか。

 続いて、今回の事案に共産党市議団がどこまで関与しているかについて聞いた。

 ーー(田村市議が)IDとパスワードを教えていたことを、いつ、お知りになりました?

 岸本:いつ? いつ知ったか…それはわからないです。

 ーー幹事長は(3月12日に)問題が起きる前にIDとパスワードを(田村市議が)教えていたってことはご存じだったのですか

 岸本:教えていた事象については知りません。

 ーーそれでは12日に、あるいは12日以降に初めてその事実を知ったのですね

 岸本:前から知ってたのかな…ですね。結局(元市議の男性が)アクセスできる状況だったってことは知ってたっていうか、見てた…控室で資料を見てたってことは知ってましたよ。

 ーーということは田村市議のIDとパスワードを元市議の方が知って使っているというのをご存じだったということですか?

 岸本:結果的にはそうなります。

 ーーご存じだったわけですね

 岸本:そうですね。

調布市議会の厚生委員会、中央手前で背を向けているのが田村市議(撮影・松田隆)

 岸本幹事長は、IDとパスワードは大事に管理しなければいけない、田村市議はそれを当然分かっているはずという認識であった。

 それが守られていない状況を認識した段階で、幹事長としては「やめなさい」と田村市議と元市議の男性に命じるべきであり、それをしないということは、きっかけは田村市議であったかもしれないが、共産党市議団としてその行為を追認し、違法と思われる行為を組織ぐるみで行なっていたと評価されるのは当然である。

 後編では、どのようにIDとパスワードが提供されたのかを聞き、岸本幹事長が組織ぐるみで違法と思われる行為をしていたことを認めた部分を紹介する。

(後編へ続く)

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