共産党市議団 組織ぐるみで不正アクセス(後)

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 共産党調布市議団(岸本直子幹事長)が組織ぐるみで不正なアクセスをしていた事案についての後編をお届けする。前編では岸本幹事長が田村ゆう子市議が議員用のクラウドに閲覧権限のない者にIDとパスワードを伝えていた事実を把握しながら止めることなく、事実上、追認していたと認めた。後編は、田村市議にIDとパスワードを伝えた経緯を聞く部分から始める。

◾️元市議の男性が田村市議に謝罪

調布市役所

 調布市議会では新人議員に対してクラウドにアクセスするためのIDとパスワードを付与している。その際には他人に教えない、他人に閲覧させないように注意される。2023年に初当選した田村市議にも当然、その点は伝えられている。

 ーー当選された時に議会事務局からIDを渡されて、その時にどういう注意を受けましたか

 田村:第三者に渡してはいけない…

 ーー大切に保管してくださいと言われてますよね

 田村:はい。

 ーーそれは他の人に教える、使わせることは許されないという認識でしたか

 田村:そうです。

 ーー自分以外は使ってはいけないと認識しましたよね

 田村:はい。

 ーー元議員の男性にIDとパスワードを教えたのはいつ頃ですか

 田村:それはちょっと覚えてないんですけども…覚えてないです。

 ーーどういう経緯で渡しましたか

 田村:どういう経緯で?

 ーー向こうからお願いに来たとか、あるいは田村先生の方から使っていいよと言われたのか

 田村:どちらから言ったかというのは、覚えてないです。

 ーー(笑)いやいやいや、そんなことはないでしょう

 岸本:2年以上経ってるからね。

 田村:そうです。

 ーーいやいや、事務局から「これは大事に保管してください」と言われ、自分(田村市議)以外は使ってはいけないという認識を持ったと。それなのに田村先生が自分から「はい、どうぞ。使ってください」と言うわけないでしょう。元市議の方から「ちょっと教えてよ」と言ってきたと思いますよ

 田村:…

 ーーもし、田村先生の方から言ってるのであれば、最初から事務局の言うことを守る気がなかったということですよね? 事務局から厳重管理して、自分以外は見てはいけません、使ってはいけませんというニュアンスで受け取ったわけですよね?

 田村:はい。

 ーーそれを、「はいどうぞ。私の代わりに見てください」と言うわけがないでしょ。それとも、(田村市議は)そういう方なんですか? ルールなんて無視して、渡してしまう人なんですか?

 田村:いいえ。

 ーー違いますよね?

 田村:はい。

 ーーだったら、向こうから言ってきたんじゃないですか?

 田村:ちょっとそこは今の段階でははっきり答えられません。今、調布市議会としても対応を検討中の段階で…

 ーー調布市の対応どうこうではなくて、事実を聞いています

 岸本:誰から言ったのか、こっちから渡したのか、経過が分からないんですよね。覚えてないんですよ。

 ーー覚えてないんですか?

 岸本:そういう認識が薄らいでしまって、やったのかなって感じの、現状です。

 この後、田村市議は、事案が発覚後に元市議の男性から「申し訳ありませんでした」と謝罪を受けたことを明らかにした。もし田村市議の方から自発的にIDとパスワードを伝えていたのであれば、謝罪すべきは田村市議のはずである。「自分が教えろと言ったばかりに、申し訳ないということだったのでは?」と聞くと「ちょっとそこのニュアンスは申し訳ありません。」と田村市議はそれ以上の言及を避けた。

 こうした事実からは元市議の男性サイドからIDとパスワードを伝えてほしいと言ってきたのは明らかである。それが元市議本人なのか、あるいは元市議と通じて田村市議に命じることができる立場の人間なのかは今後の市議会の調査、あるいは司直の手が入るのを待つしかない。

 経緯を明らかにしないことは、違法と思われる行為の責任の所在を曖昧にする意図があるように思える。一連のやり取りから、組織ぐるみで”真犯人隠し”と感じるのは筆者だけではないはず。そうした組織が「再発防止を含めてしっかりと考えていきたい」(田村市議)と言っても信じる人がいるとは思えない。

◾️意識が薄かった…

 田村市議への質問は続く。

 ーー事務局から言われたことを守らなかったという認識はありましたか

 田村:はい。今、あります。

 ーー今ではなく、その(IDとパスワードを伝えた)時です

 田村:その時はその意識が薄かったということです。

 ーー薄かったということは、あったということですか

 田村:…

 ーーこれはやってはいけないことという認識はあったわけですね

 田村:そうですね。

 ーーなぜ、やったんですか

 田村:議案を検討するため…

 ーー議案を検討するためにルールを破っていいんですか

 田村:いけないと思っております。反省しております。

 ーーいけないと思っていることを何でしたんですか

 田村:繰り返しになりますが、意識が薄かったということです。

 ーー不正アクセス禁止法に違反しているという認識はありますか

 田村:渡した時点で不正アクセス禁止法という考えはなかったです。

◾️共産党調布市議団ぐるみの行為

 続いて組織ぐるみの違法と思われる行為について確認を行った。

 ーー元市議の男性が議員控室で田村先生のIDとパスワードを使って(クラウド内を)見ていたことは認識していたとおっしゃいましたね

 岸本:結局、私たちがいる時にアクセスしてもらって、その資料を見るって感じです。本人がアクセスするってことではないです、控室は。

 ーーさきほどの説明とは違いますね

 岸本:控室ではですよ。控室のパソコンは議員団の備品購入で使っているデスクトップがありまして、そこに田村さんの(IDとパスワード)を使って行けるデータがありまして、そこを開いて、こっちが見るって形です。

 ーー田村先生がアクセスして、これどうですか? と見てもらう形ですか

 岸本:この議案どうですか、この情報どうですかといって共有する形でしたね。

 ーー閲覧もしてはいけないですよね、一般の人は

 岸本:閲覧できない…

 田村:そうですね。

 ーー党としてはそういうことをやってましたよね

 岸本:そうですね。

 ーー党として遵法精神が欠如していると思いませんか

 岸本:ええ、その通りだと思います。私はそのことで危機管理意識の欠如というか、甘さというものについて幹事長会議では、それを言いました。

 ーーつまり、党ぐるみでルール違反をしていたわけですね

 田村:日本共産党という意味ですか

 ーーそうです、日本共産党調布市議団です、調布市議団ぐるみで違法な行為をしていたということですね

 岸本:結果的にそうなっています。そういうことですね。

 ーーそれがルール違反という認識はなかったのですか

 岸本:それは扱いについて慎重にしないといけないというのは分かってましたけど、議員団の議案に対する問題だとか、市政に関する問題だとかを共有するために、議員団の事務局として来ていただいていた元議員と共有してしまった、と。それが事実です。それだけが事実です。

 ーー分かってます。ですから、市議団ぐるみでそういう違法な行為を行なっていたということですよね

 岸本:法に抵触するおそれのあるやり方をしていたと。

 ーー控室では田村先生がアクセスして「これどうですか」と閲覧させていたわけで、それだけでもルール違反ですが、今回、問題となったのは、元市議が自宅から田村先生のIDとパスワードを使ってアクセスしていましたよね

 田村:そうです。

 岸本:(元市議が)体調を崩していて、いつもは本会議中も委員会中も必ず生で傍聴に来てくれていたのですが、何日か前に咳が出て、みんなに感染するのでお家でインターネットで傍聴してくださいってことだけは、お願いしてたんですよね。その傍聴している間に、そういう事象が起こったので、自宅からアクセスしたのかなとは思いました。

 ーーでも、自宅からアクセスできるとは思わないのでは? いつもは田村先生がアクセスして、はいどうぞと見せていた訳ですよね?

 岸本:原則それでした。

 ーー何で自宅でアクセスできるんですか

 田村:それはIDとパスワードを私が渡していたからです。

 ーーそうですよね、で、それはご存じだったのですか

 岸本:それはまさか、持って家にいるとは思わない…

 ーーそうではなくて、(田村市議が)IDとパスワードを教えたということはご存じだったのですか

 岸本:教えたというのは知ってました。

 ーー知ってたんですね?

 岸本:認知していました。

 ーーそれはいつからですか

 岸本:それが分からないんです。

 ーーかなり前からですか

 岸本:いつからかは覚えてないですけど、ここ(市庁舎)で(アクセスして)見ている現象を見てましたけど、家でやってるかどうかは、はっきりと把握はしていません。

◾️再発防止は真相究明が前提

 讀賣新聞オンラインでは、田村市議が単独で元市議の男性にIDとパスワードを伝えていた事案であるかのように報じられていたが、実際は共産党調布市議団ぐるみでルールを破り、違法と思われる行為を行なっていたのである。

田村ゆう子市議(右)と岸本直子幹事長(撮影・松田隆)

 田村市議は「再発防止を含めてしっかりと考えていきたい」と話すが、肝心の提供に至った経緯については記憶にないとして真相を覆い隠しているのは明らか。

 また、共産党調布市議団ぐるみの行為であるのに、岸本幹事長は当初、田村市議に注意をしていたと事実と異なる説明をし、田村市議本人から否定されて発言を訂正するという、偽装工作と思われても仕方がない発言をしている。

 調布市議会には事態を有耶無耶にすることなく、具体的に誰が主導したのか、誰が最も責任を負うべきなのか、責任の所在をはっきりとさせる毅然とした態度が望まれる。再発防止は真相究明が前提になるのは言うまでもない。

(終わり)

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