元市議も「記憶にない」共産党地区委員長明かす

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 調布市の共産党市議による不正アクセス事件は、権限なくクラウドにアクセスした元市議の男性(73)もIDとパスワードの入手時期や経緯について「覚えていない」と話していることがわかった。日本共産党調布狛江府中地区委員会の平野義尚(よしたか)委員長が22日までに当サイトに対して明らかにした。不正アクセスに関連した調布市議2人(岸本直子幹事長、田村ゆう子副幹事長)と元市議の男性の3人がIDとパスワードが渡った時期や経緯を全て忘れていることになり、口裏を合わせて真相を明らかにしない組織ぐるみの隠蔽が行われている可能性がある。調布市議会、調布市民に対する不誠実な態度に対して批判は避けられない状況である。

◾️3人そろって「忘れた」「記憶にない」

平野義尚氏(日本共産党東京都委員会チャンネル 一緒につくろう。わたしたちの未来。画面から)

 調布市議団が属する日本共産党調布狛江府中地区委員会の平野委員長は市議団と、元市議の男性の3人から事情を聴いていたことを明かした。田村市議のアカウントから全議員と一部の職員に対して通知が届けられた3月12日には市議2人から事情を聴き、別の日に元市議から話を聴いたという。

 元市議は聴取に対して自分からIDとパスワードを伝えてほしいと言ったかについては「そこら辺はちょっと記憶にないというふうに聞いてます」(平野委員長)とのことであった。「自分の方から言ったか覚えていないし、田村市議から言われたかも覚えていない、ただ、気がついたらもらっていたということでしたか」という問いに対して、平野委員長は「そういうことですね」とし、渡された時期についても「それは『ちょっと分からない』と言っていましたね」との回答であったという。

 これまで当サイトの調べに対しても田村市議、岸本幹事長ともに伝えられた経緯は覚えていないということで一致していた。幹事長は元市議の男性が閲覧することができないクラウド内の行政資料を見ていることを認識していたが黙認していたと説明した(参照・共産党市議団 組織ぐるみで不正アクセス(前)(後))。

 重大なルール違反がどのように行われたのか、その時期も含めた経緯を3人がそろって「忘れた」「記憶にない」とするのは不自然であり、共産党市議団と元市議による真相解明の妨害、隠蔽工作が疑われる。それゆえに日本共産党調布狛江府中地区委員会も共産党広報部を通じて「今回の事案の党議員団の関わりがどうであったかも、今後検証する必要があると考えています。」と回答してきたものと思われる(参照・共産党 ”組織ぐるみ”検証へ 調布市議不正アクセス)。

◾️理解に苦しむ個人の謝罪

 この問題では岸本幹事長は少なくとも元市議が閲覧してはいけない資料を見ている行為を黙認し、IDとパスワードを渡していたことも認識していたため、責任があるのは間違いない。ところが、15日の讀賣新聞オンラインでの報道で事件が公になった直後、市議団としてではなく、田村市議の個人のXのアカウントで個人名でお詫びが掲載された。組織ぐるみの可能性がある行為を、一個人に責任転嫁していると言わざるを得ない。その点について質問した。

 ーー15日に報道が出た際に、その日のうちに田村ゆう子市議のX上のお詫びが出ましたが、それは委員会の指示でしょうか

 平野:指示っていう訳ではないですけど、内容は相談してますね。

 ーー平野先生も「これは(お詫びを)出した方がいいよ」という感じだったのでしょうか

 平野:出した方がいいっていうか、出して当たり前ですよね。

 ーー事情聴取をした時点では平野先生としては、田村市議が単独で行った行為という認識だったのでしょうか

 平野:ああ~いやぁ~、単独かどうかは、あまり、議会との関係でも、それから報道との関係でも、そうですねぇ、単独かどうかというところはちょっとこれから検証しないといけないかなと思っています。

 ーー単独か組織全体かははっきりしないけれども、とりあえずIDとパスワードを渡している田村市議にお詫びを出させたという感じだったのでしょうか

 平野:それは形式的に田村さんが渡して…田村さんしか持っていないものを元市議が持つ訳ですから、それはどう考えても田村さんが謝罪すべきだと。

 ーーその時点では単独の行為なのか、それとも田村市議が誰かから指示を受けて行った行為なのかは、はっきりしなかったんですね

 平野:そうですね。

 ーー今もはっきりしていないんですね

 平野:そうですね、これから調査しないといけないかな、ちゃんと記憶がないってことなので。

 この辺りの説明は理解に苦しむ。報道が出る前に事情を聴き、誰が主導的な役割を果たしたのか分からない、個人の行為か組織としての行為なのか不明である状況であるにもかかわらず、田村市議が単独で謝罪を個人のSNSアカウントでお詫びをしているのである。組織ぐるみの行為の可能性がありながら、個人が謝罪して幕引きを図ろうとしたと疑われても仕方がない。

◾️岸本幹事長の指示の有無と責任

田村ゆう子市議(右)と岸本直子幹事長(撮影・松田隆)

 不正アクセス及びその操作の事案で分からない部分は岸本幹事長がどのような役割を果たしたかである。田村市議がIDとパスワードを渡した経緯について記憶にないというのは、責任の所在を明らかにしない政治的な目的があると考えられる。

 岸本幹事長は少なくとも関与していた、認識して黙認していたことまでは認めているが、実は主導的な役割を果たしていた可能性があるのではないか。その点の認識を聴いた。

 ーー共産党広報部から戻ってきた回答は「今回の事案の党議員団の関わりがどうであったかも、今後検証する必要があると考えています。」とのことですが、これは調布市議団は2人しかいませんから、岸本幹事長の指示があったかどうかを調べるということでしょうか

 平野:そうですね。

 ーー事情を聴いた時には、岸本幹事長から「私が指示を出した」という説明はあったのでしょうか

 平野:本当に記憶がないという感じでした。

 ーー岸本幹事長が指示を出したかどうかも、はっきりしないということでしょうか

 平野:そうですね。渡ってるわけですから、いずれにしても田村さんが謝るべきことですし。これからちゃんと、どうしてそうなったのかというのは、過去の資料も含めて当たらないといけないと思ってますけど。

 ーー岸本幹事長が指示を出したのであれば、覚えてないということはないですよね

 平野:う~ん…

 ーーそう思いませんか? 指示を出してないなら「いえ、私そんな指示出してません」と、はっきり言えると思いますし、出したら出したで、それを覚えていないなんてことありますか?

 平野:ちょっと分からないですね。

 ーーそこをはっきりさせないまま、(田村市議1人がお詫びすればいいや)というお考えだったのでしょうか

 平野:ちょっとおっしゃってる意味が分からないですね。

 ーー田村市議は「岸本幹事長から指示を受けました」と言ってるんですか

 平野:いや、それも覚えていないっていう感じでしたよね。

 ーー指示を受けたか、受けてないかも覚えていないと?

 平野:はい。

 ーーこれから、(組織の)関わりについて検証するという場合、本人たちが分からないと言っていたら検証のしようがないですよ

 平野:でも、形式的には渡っているわけですから、覚えてなかろうが、明らかに結論としてはこうだったよね、ということは確認できると思いますけど。それを発表しようと思っています。

 ーー本件で主導的な立場ですね、たとえば、仮に岸本幹事長が田村市議に渡しなさいと、言っていたとしたら、主導的な立場は岸本幹事長ということになりますよね

 平野:そういう指示を出していたらそうでしょうね。

 ーー田村市議が自分から元市議に渡して政策の提言などを受けたかったというのであれば、主導的な立場は田村市議ですよね

 平野:う~ん、そうなりますかね。

 ーーまず、事案の真相です。田村市議主導だったのか、岸本幹事長主導だったのか、あるいは元市議の男性が主導だったのか、それをはっきりさせないと。責任の取り方も変わってきます。例えば岸本幹事長が主導して田村市議が逆らえない、意思を抑圧される立場であったら、間接正犯の道具とされた訳ですよね。その場合にもっぱら刑事責任は岸本幹事長にいくわけです。

 平野:はいはい。

 ーー間接正犯の道具とされた者が責任もないのに謝る、主導した人は何も謝らないというのは、これは調布市民に対して、調布市民を欺く行為と私は思います。ですから真相の解明は党として当然と思いますが、そのあたりいかがでしょうか

 平野:真相解明は当然だと思います。それはそうですね。議員団の関わり方、岸本さんの関わり方がどうだったのか、検証が必要だと思います。

 ーー結局、岸本幹事長が指示をしたかどうかは分からないのですね

 平野:そうですね、現時点では。

 ーー後から分かる可能性もあるわけですね

 平野:繰り返しになりますけど、覚えてないからといって、「覚えていませんでした、まる」では済まないことだと思っています。それはどう考えてもこういうふうに類推されるので、こういうふうに責任を取りましょう、ということになると思います。

◾️司直の手に委ねるべき事案

 今回の不正アクセスの事案に関しては、元市議の男性が本来閲覧できない資料を不正な手段を用いて見ていたということは大きな問題であるが、それ以上に12日の本会議で田村市議のアカウントから全議員に対して通知が送られていることは大問題である。

 その時に田村市議はタブレットを操作していなかったために、これはどういうことかと問題が明るみに出た。仮に操作をしていたように見えた場合、田村市議のアカウントを第三者(元市議の男性)が操作していたことは分からず、通知を送ったのは田村市議の議員活動の一環とされていた可能性がある。

 市民の負託を受けた議員の行為を民間人が勝手に行い、それが市政に影響するようなことがあれば、地方自治の根幹を揺るがしかねない。その意味の重大性を市議団はもちろん、地区を統括する平野委員長も十分に認識しているとは思えない。最後にその点を確認した。

 ーー議会は刑事告訴も視野に入れていますが、平野先生としても重大な事案と考えていますか

 平野:それは重大な事態だと考えています。

 ーー議会との協力関係はどうでしょうか、議会から何か要請があったら(協力するか)…

 平野:それは当然です。

調布市民の声は議会に届くのか…(京王線調布駅前)

 IDとパスワードが伝えられた経緯を3人がそろって分からないと答え、それを追及することなく田村市議に謝罪させた平野委員長がどこまで真相を明らかにできるのか疑わしい。

 市政への妨害という大きな被害を受けている調布市議会としては、刑事告訴により司直の手で真相を明らかにして、刑事責任を負わせるべき人に負わせるのが最善の解決策と思われる。調布市民の多くもそれを望んでいるのではないか。

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