嘘がバレそうになり?説明を一変 共産党市議

松田 隆
@東京 Tokyo
不正アクセス事件に絡み問責決議が可決された共産党の調布市議2名が決議当日の27日、これまでの説明を一変させた。元市議の男性にIDとパスワードを渡した時期や方法について全く記憶にないとしていたものを一転して1年以上前に紙に書いて渡したと具体的に供述。説明を変えた理由は、嘘が露見する危険を察知したためと推測される。ここまでの一連の対応を見ると、口裏を合わせて真相究明を妨げる隠蔽工作に終始しており、調布市民を欺く行為と言い得る。
いきなり出てきた新事実
本会議後の取材の中で、両市議はいきなりこれまでの主張を覆してきた。田村ゆう子市議が元市議の男性にIDとパスワードを渡した時期や、その経緯(どちらが渡すように言い出したか)については記憶にないとしてきた(参照・共産党市議団 組織ぐるみで不正アクセス(後))。
ところが、この日27日、いきなり新たな事実を出してきた(ーーは筆者、ーー(Y)は讀賣新聞記者)。
【3月27日取材】
ーー前もお聞きしましたが、IDとパスワードをどういうタイミングで渡したかというのは覚えていませんか
田村:具体的な日付は覚えていません。
ーーいつ頃というのも覚えていませんか
田村:1年以上前ではあります。
ーーこの前(取材した3月17日)、それも言ってくれませんでしたね
田村:はい、すみません。
ーー岸本先生、それで間違いないですか
岸本:それは私は分からない。1年以上前なのか、最近でないのは確かだと思いますけども、1年なのか半年なのかも覚えていません。
ーー(Y)田村先生、1年以上前というのは、何か根拠があるのですか
田村:(使用している議員専用のクラウドにアクセスするソフトを)アップデートしたタイミングです。具体的な日付は分かりません。
ーーそれ、この前、私が聞いた時に言ってくれませんでしたよね
田村:言ってなかったでしょうか
ーー言ってません、何で言ってくれなかったんですか
田村:聞かれなかったからです。
ーーいえ、聞きましたよ、いつですかと
田村:ですから、具体的な日付はお答えできませんと。
ーーいつ頃ですかと聞いたら、分かりませんと、(岸本幹事長が)「2年以上前だからね」って言いました
岸本:2年以上とは言ってません
ーー言いましたよ、録音してますよ、聞かせましょうか?
岸本:2年以上?
ーー『2年以上前だからね、分からないよね』って言いましたよ、はっきり。お聞かせしましょうか?
岸本:ああ、ごめんなさい。
ーーそもそも2年以上前だと(田村市議は)議員になってませんからね(初当選は2023年4月23日)
岸本:そうですね。元市議が現職の時ですからね。ごめんなさい、間違えてる。
過去の発言との齟齬
当サイトが17日に取材した際のやり取りは、過去記事で詳細に伝えた。
【3月17日取材】
ーー元議員の男性にIDとパスワードを教えたのはいつ頃ですか
田村:それはちょっと覚えてないんですけども…覚えてないです。
ーーどういう経緯で渡しましたか
田村:どういう経緯で?
ーー向こうからお願いに来たとか、あるいは田村先生の方から使っていいよと言われたのか
田村:どちらから言ったかというのは、覚えてないです。
ーー(笑)いやいやいや、そんなことはないでしょう
岸本:2年以上経ってるからね。
田村:そうです。
17日に2人の市議が答えたことを、10日後の27日には2人揃って変更した。
紙に書いて渡した
27日の本会議後の取材での取材の状況を続ける。
【3月27日取材】
ーー(Y)取材の中で半年ぐらい前に(元市議の男性にIDとパスワードを)お伝えしたっていうお話を聞いたことがあるんですね、半年という期間にご記憶はありませんか
田村:それは以前、(自分が)お答えしてますか?
ーー(Y)それは田村さんがお答えしたっていう話を、取材の中で聞いたんですね、幹事長会議なのか、正副議長への説明での中なのかは分からないのですが、そういうワードが取材の中で出たので、そういうふうにお答えした記憶はありますか
田村:一番最初の時だと思うので(12日午後の正副議長と正副議運委員長への説明時か)、ちょっと日付が分からない中で半年以上前と答えたのだと思います。
ーー(ソフトの)アップデートのタイミングで渡したとのことですが、どのように渡したのでしょうか、紙に書いて渡したのか、メールなのか
田村:紙に書いて渡しました。
ーーそれは元市議から(渡すように)言われたのか、田村さんから『ねえねえ、持ってよ』と言ったのかは覚えていませんか
田村:覚えていません。それは繰り返しになりますが、本当に話の流れでそう(IDとパスワードを渡すこと)なったので、どちらから言ったかは本当に覚えていません。おそらく私の方からだと思います、というのは皆さんにお伝えしています。
ーー(IDとパスワードを田村市議が持っているのだから、相手に)渡すのは田村先生の方から渡すしかないでしょう
田村:あ、違います。やり取りの中で私の方から言ったんじゃないかなと思いますということは、(13日の)幹事長会議などでも言わせていただいています。
ここで17日の取材時の、該当する部分を再録してみる。
【3月17日取材】
ーーだったら、向こうから言ってきたんじゃないですか?
田村:ちょっとそこは今の段階でははっきり答えられません。今、調布市議会としても対応を検討中の段階で…
ーー調布市の対応どうこうではなくて、事実を聞いています
岸本:誰から言ったのか、こっちから渡したのか、経過が分からないんですよね。覚えてないんですよ。
ーー覚えてないんですか?
岸本:そういう認識が薄らいでしまって、やったのかなって感じの、現状です。
このように田村市議はあくまでも知らぬ存ぜぬを通そうとし、追及に対して今の段階でははっきり答えられないと事実を認めるかのような発言になった時に、岸本幹事長が横から「覚えてない」と口を挟んできている。
こうしたやり取りを見ると、市議団の中で取材に対応するごとにどのように答えるか口裏を合わせていることが強く推認される。
調布市情報公開制度
このように両市議が10日後に発言を180度変えてきたのには理由がある。もちろん、共産党市議団がそれを正直に語るはずもないが、田村市議の発言の中にヒントが隠されている。3月27日の取材でのやり取りを示した、最後の部分に注目していただきたい。
田村:あ、違います。やり取りの中で私の方から言ったんじゃないかなと思いますということは、(13日の)幹事長会議などでも言わせていただいています。
田村市議は13日、事情を説明するために岸本幹事長とともに幹事長会議に出席した。その時に「自分から言ったと思う」と発言したというのである。ところが、当サイトの17日の取材に対しては「全く記憶にない」で押し通した。
そこで当サイトでは取材から2日後の19日、調布市情報公開制度に基づき、13日の幹事長会議の議事録の開示を求めた。その申請は受付の総務課から担当部署の議会事務局へと届けられる。実は数日前に筆者は議会事務局の職員から開示請求の手続きについて必要な確認を求められ、説明を受けた。その際、当該職員は筆者が情報開示請求をしていることが周囲に分かると秘匿すべき取材方法が明らかになってしまう点を考慮してくれたのであろう、周囲に人がいない状況で確認してきた。筆者自身も開示請求したことはごく僅かな人にしか明かしておらず、情報漏洩しないように細心の注意を払っていた。
ところが、27日の共産党市議団への取材の後、ある市議の取材を行った際に「松田さんは13日の幹事長会議の議事録の開示請求をしていますか?」と聞かれた。開示請求の対象の文書を指定しての問いかけ。その市議はただ1人、問責決議に賛成しなかった会派の所属議員である。
どういうルートでその情報を掴んだのかは分からないが、共産党市議団も同様の情報を掴んでいたことは容易に想像がつく。そうすると、共産党市議団が意見を変えてきた理由は推測できる。いずれ、幹事長会議の議事録がメディア(当サイト)に流れると考え、取材で答えたことの虚偽が明るみになってしまうと考えたのではないか。そこで幹事長会議で言ったことまでは認めよう、取材に対して自らその部分を明かそうという作戦に切り替えたものと思われる。
調布市民を欺く行為
上記はあくまでも状況証拠から導かれる推測に過ぎないが、問責決議可決のタイミング、つまり取材に応じなければいけない時期に主張を変えてきたことを整合的に説明できる。
岸本幹事長、田村市議は取材に対して「本当に反省」と口にし、発表したコメントには「深くお詫び」と記載された。
ところが実際には、多くの調布市民の目に触れる当サイトの取材に対して議会に対する説明とは異なる説明をしていたのである。
共産党の岸本直子、田村ゆう子の両市議の対応は、調布市民を欺く行為と言っても過言ではない。