聖隷クリストファー 55年前の不可解選考再び
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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第94回選抜高校野球大会(3月18日開幕)に聖隷クリストファー高(静岡)が選出されなかったことが問題になっている。不透明な選考過程にネットでは批判が起き、主催する毎日新聞社が選考について説明する記事を掲載するに至った。過去の選考などから、聖隷クリストファーの落選事情を探ってみた。
■準優勝チームが補欠に
春の選抜の東海地区の代表は2校が選ばれた。前年の秋季大会(東海地区)を制した日大三島(静岡)と、準決勝で日大三島に5ー10で敗れた大垣日大(岐阜)が選出され、決勝で日大三島に3-6で敗れた聖隷クリストファーは補欠とされた。
準優勝チームが補欠となり、4強で敗退したチームが出場権を得るというのは極めて分かりにくい。しかも、聖隷クリストファーは大会での大垣日大との直接対決はなかったため、少なくとも同大会で大垣日大よりも優れていることを直接証明する手段はなかった。
高野連東海地区・選抜選考委員長の鬼嶋一司氏は、選考理由について以下のように説明した。
①優勝した日大三島(静岡)のチーム力は申し分ない。
②「頭と体を使う高校生らしい野球」で準優勝した聖隷クリストファーを推す声と、1回戦で好投手を打ち崩し、次の試合で強豪校を破った大垣日大を推す声が拮抗していた。
③「守りからリズムをつくり、攻めに入る力を備えた総合力の高いチーム」として大垣日大を選んだ。投打に大垣日大が勝ったという判断、特に投手力で差があった。甲子園で勝てる可能性の高いチームを選んでいる。
④地域性は全く考慮していない。
(以上、毎日新聞・センバツ出場校の選考について 毎日新聞社からのご説明、中日新聞・高野連は丁寧な説明必要 東海2位の聖隷クリストファー落選、スポニチ・【センバツ選考事情】東海地区の「逆転現象」に鬼嶋委員長が見解「投打に大垣日大が勝った。投手力で差」 から)
■5つの出場校選考基準
選抜高校野球の選考基準は「出場校選考基準」に沿って検討される。高野連のHPに掲載されているので、そのまま示す。
<出場校選考基準>
(1)大会開催年度高校野球大会参加者資格規定に適合したもの。
(2)日本学生野球憲章の精神に違反しないもの。
(3)校風、品位、技能とも高校野球にふさわしいもので、各都道府県高校野球連盟から推薦された候補校の中から地域的な面も加味して選出する。
(4)技能についてはその年度の新チーム結成後よりアウトオブシーズンに入るまでの試合成績ならびに実力などを勘案するが、勝敗のみにこだわらずその試合内容などを参考とする。
(5)本大会はあくまで予選をもたないことを特色とする。従って秋の地区大会は一つの参考資料であって本大会の予選ではない。
(公益財団法人 日本高等学校野球連盟・第94回選抜高等学校野球大会要項 から)
この5点からの選考ということであるが、(1)(2)については鬼嶋委員長の発言からは問題とされていないようであり、しかも(3)の地域的な面についても「全く考慮していない」としているから、残るは(4)と(5)になる。
(5)は秋の地区大会は参考資料であって、予選ではないとわざわざ明言していることから、聖隷クリストファーが同大会で大垣日大の成績を上回ったとしても絶対的に有利になるというわけではない。その上で、(4)の実力、試合内容から大垣日大を上と見たと解釈できる。その結果、聖隷クリストファーが落選したということになるが、これで納得しろ、と言う方が無理があると思う。
■半世紀以上前の不可解な選考
既に報じられているが、前年の秋季大会・東海地区の決勝進出チームが翌年の選抜に選出されなかったのは1978年(昭和53)の優勝校・中京(現中京大中京)以来、44年ぶり。もっとも、この時、中京は不祥事で推薦を辞退しており、今回とは状況が異なる。
さらに遡って決勝進出チームが出場を逃した例を探すと、55年前の1967年(昭和42)の第39回大会にたどり着く。この大会では前年の秋季大会で優勝した愛知(愛知)が選ばれ、決勝進出の名古屋電工(現愛工大名電、愛知)は落選。その名古屋電工に準決勝で敗れた三重(三重)と、1回戦で敗れた岐阜商(岐阜)が選出されている。
この不可解な選考については以下のように報道されている。
「もっとも困難だったのは中部の東海勢と近畿である。とくに中部の場合は、地区大会の成績より、対校戦などの資料が重視された。地区大会優勝の愛知がすんなり決ったが、あとの二つをどうするかでかなり活発な意見が出た。試合巧者で、本格派の中川投手を持つ三重がまず選ばれ、地区大会一回戦で敗れた岐阜商が、準決勝に出た岐阜短大付に連勝していることが大きくものをいった。」(朝日新聞1967年2月7日付け朝刊・代表24校きまる 初出場桜美林など11校)
準優勝の名古屋電工は、準決勝で負かした三重の後塵を拝し、さらに1回戦で負かした岐阜商にも甲子園のチケットを譲っている。一体、どうやったら名古屋電工は甲子園に出られたのか、当時の選考委員に聞いてみたい。
そもそも「地区大会の成績より、対校戦などの資料が重視された。地区大会優勝の愛知がすんなり決ったが、」という短い文章の間に矛盾があると思うのだが、朝日新聞の記者は書いていて(おかしい)と思わなかったのか、不思議に感じる。
この不可解な選考の理由として考えられるのは、出場校選考基準(3)にある地域的な面の考慮ではないか。つまり決勝を戦った愛知から2校を出すのは好ましくないということなのかもしれない。もっとも、その点は報じられていないので、何とも言いようがない。
■過去の選ばれなかった決勝進出チーム
もう少し、時代を遡ってみよう。1955年(昭和30)の第27回大会は中部から3校、うち東海地区からは2校が出場している。前年の秋季大会決勝は静岡商(静岡)が津(三重)を2-0で下して優勝した。静岡商は順当に選ばれたが、2校目は準Vの津ではなく、準決勝で静岡商に0-2で敗れた岐阜(岐阜)だった。
こちらの選考過程は以下のように報じられている。
「静岡では静岡商が圧倒的に強く、問題なしに選ばれた。…岐阜と津はむずかしい選考となったが両校のあらゆる成績(各種の率)を検討、わずかの差で岐阜の方が優れていたので岐阜をとり、津は選外優秀校の一位となった。」(朝日新聞1955年2月5日付け朝刊・選抜高校野球出場校決る 昨年より一校多い 初出場は立教など十校)
1952年(昭和27)の第24回大会に向けての、前年の秋季大会決勝は静岡商と静岡城内(現静岡)の静岡勢の対決となった。静岡商が4-0で勝ち優勝、翌春の選抜チケットを手にした。準優勝の静岡城内は選ばれず、静岡城内に準決勝で2-9と大敗した豊橋時習館(現時習館、愛知)が選ばれている。この時、豊橋時習館は秋季愛知県大会で優勝しており、それが効いたのかもしれないが、静岡県から2校は選ばないという地域性も考慮された可能性はある。
1949年(昭和24)の第21回大会も、前年の秋季大会を優勝した岡崎(愛知)が翌春の選抜に出場も、準優勝の静岡一(現市静岡)は選出されず、地区大会に出場すらしていない岐阜商(県大会4強とのこと)が選出されている。このあたりになると戦後の混乱期、甲子園への遠征費用などの問題もあったのかもしれず、詳細は不明。どちらも当時の朝日新聞には、選考過程などについての記事は見当たらなかった。
■3年前の選考も微妙
今回の聖隷クリストファー高のパターンの不透明な選考は戦後、何度か確認でき、今回もその流れの上にあるのかもしれない。
実際、2019年(平成31)の第91回大会では、前年の秋季大会優勝の東邦(愛知)がまず選ばれ、残りは準優勝の津田学園(三重)と準決勝で敗退した中京学院大中京(愛知)の間で比較検討されている。
「東海地区優勝の東邦がまず選ばれた。…2校目は決勝で2ー10で敗れた津田学園と、準決勝で東邦と延長戦を演じた中京学院大中京を比較。津田学園は右腕・前が140キロ台の直球と切れのあるスライダーを武器に安定感があり、前川が3試合連続本塁打と、投打の軸を擁して3勝した実績で選ばれた」(毎日新聞2019年1月26日朝刊・第91回選抜高校野球 各地区の選考経過(その1))
このように3年前の大会でも決勝進出チームと準決勝で敗退したチームを俎上に上げているが、秋季大会を重視する結果に落ち着いている。今回の聖隷クリストファーは同様の選考方法の結果、逆転現象で涙を飲んだと言えるかもしれない。
■大垣日大のナインも被害者
聖隷クリストファーの落選は、地域性は全く考慮されなかったという。それはそれでいいことなのかもしれないが、今回、それによって、より選考過程が分かりにくくなっている。
聖隷クリストファーのナイン、関係者にすれば(どうすれば選ばれるのか)が全く分からない。秋季大会で優勝すれば選ばれるのは間違いなさそうではあるが、選考基準の(5)で「秋の地区大会は一つの参考資料であって本大会の予選ではない」と明示されているだけに、それも確実ではない。
甲子園に出場できるかどうかは、高校球児にとって最大の関心事。夏は予選があるからいいものの、春は明確な出場のための基準がなく、大人の事情で自分達の一生に関わることが決められてしまうのは何ともやりきれない思いのはず。
大垣日大のナインにしてもあまりいい気持ちがするものではない。世間から(何で君たちが選ばれるのか)という声が出ているようであるが、選んだのは大人たちであって、生徒は批判される筋合いは全くない。
そうした両校の事情を考えれば、選考過程をもっとクリアにして、たとえば前年の秋季大会を「予選に準ずる」扱いにするのも一つの解決法ではないか。東海地区が2校なら決勝進出の2チームに、3校なら決勝進出2チーム+準決勝進出チームから1校、4校なら準決勝進出4チーム。
スポーツをめぐってのルールは、誰にでも理解できるものにすることが大事なのは言うまでもない。「甲子園で勝てるチームを選んだ」と言いつつ、21世紀枠という、これまた勝敗を度外視したような選考を行う選考委員会には辟易としているファンも少なくないのではないか。
野球やサッカーは番狂わせが比較的多い競技と言われるが、スポーツは結果が全ての世界でもある。勝負の世界に政治的要素を持ち込むと、大会そのものの興味を失わせる結果となりかねないことを、選抜選考委員は知るべきと思う。
(※執筆にあたり、高校野球百科事典を参考にしました)
コレが“センバツ”なのだから仕方がない。
※聖隷クリストファーの生徒達が今後世に出れば、これからもこの様な“理不尽”は山程ある、
今回は勉強になったな。
選抜って必要なのかなぁ
元々、朝日の人気に対抗して毎日が編み出した大会
半年前の実績で選び、天候の悪い3月末・4月に試合を集中するから泥田のなかのゲームが避けられないし。
東北じゃよくあることなんだけど話題にすらならなかったよ・・・
東北ではよくあること、という声がありますね。
最近の秋季大会(センバツ枠2枠地域)で決勝が同県大会となった実例をいくつか挙げます。
20年 仙台育英18-1柴田(宮城)
19年 星稜19-1日本航空石川(石川)
96年 光星学院6-3青森山田(青森)
この中で1校だけセンバツを落とされた学校があります。答えは唯一の接戦とも言える最後の試合の青森山田です。「地域性」と明言されましたし出場したのは福島の県立高校でした。高野連の公立校びいきは有名なことでしょう。当時はSNS等も無い時代であり、批判の声があってもほぼ握りつぶされたことでしょう。青森山田は地元であまり人気のない学校でもあります。
20年東北地区の場合、準決勝の仙台育英vs花巻東は1-0という好ゲームでした。そのために逆転選出も予想されましたが、結果は順当に宮城2校でした。宮城の県立高校が常連の花巻東より好まれたのもあるかもしれません。花巻東は菊池雄星投手在籍時代には、逆に強引に選出されたこともあります。(個人の力量が上、と説明されて実際に準優勝するのです)
今回の東海大会が特に異常だと声が上がるのは、公立高校がらみでも無いし、準決と決勝を比較しても決勝の方が接戦の好ゲームで、準決はコールド寸前の大差だったのです。大垣日大に菊池雄星クラスの大スターがいるか?そんなこともありません。
落とした理由説明で聖隷の校風や品位やプレーに問題があったかのような報道までされています。ひどい侮辱です。校風や品位に問題があるかどうかで言えば、近年不祥事続きの日大系列は一体どうなんだと言う声が上がってしまうのも当然です(ひどいとばっちりだと個人的には思います)。
真の理由は何か?
結論から言うと高野連と毎日新聞の「大都市重視」の本音が見えるのです。
東北地区で大都市といえば仙台であり、つまり宮城2校は決勝で大差がついても順当に出した。北信越においては、金沢がある石川も同様でしょう。仙台と金沢は大マスコミにとって重要なのです。
名古屋のTV局は東海地区で唯一静岡では放送されません。静岡には県ローカルのメディアしか無いのです。過去に静岡から2校出場したことは数回ありますが、当時は東海枠3校時代。つまり中京圏(愛知・三重・岐阜)の学校が出場無しだった前例は草創期を除いては無いのです。順当なら名古屋のTV局は今回とてもヒマになるはずでしたので、彼らは本音ではとてもホッとしていることでしょう。
東海枠が2に減って以降も、愛知2校の場合は何事もなく順当に選出されています。
ちなみに、今回同様の強引な選考は大阪の場合にもあります。02年秋季近畿大会で大阪代表が全校初戦敗退し、大阪代表が0かという時がありましたが、その時も今回同様の大逆転サプライズ選出がなされています。色々強引な後付け理由が当時も言われましたが、結局は「大都市優先」で説明が付くのです。
大マスコミの大人の事情で高校生が翻弄されているのです。許されないことと思います。
>選手個々の力が上回る
>甲子園で勝てる可能性を重視した
それならば直近十年の初戦対一般枠2勝24敗の「二十一世紀枠」即時廃止&オールジャパン桐蔭の春代表フリーパスも実現しないと整合性がない(苦笑)。それにしても、聖隷クリストファーの上村敏正監督は浜松商第二期黄金時代の監督の時から私は知っているが、前任の掛川西で甲子園出場した2009年春は初戦大敗だけでなく「模範校」の触れ込みで出場した学校のエース「平成王子」にブログで侮辱され、今回は理不尽落選と「二十一世紀枠」に被害を蒙り続けているように思えてならない。