日本代表の”太極旗騒動” JFAの国家観欠如

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 日本サッカー協会(JFA・宮本恒靖会長)が10日に公表した代表チーム応援のイメージ画像が、韓国の国旗である太極旗に似ているとの指摘が出てネット上で炎上した。JFAは14日に問題の画像(キービジュアル)を他のものに差し替えたと発表。ところが、差し替えたビジュアルも日の丸の画像がなく、再度、批判が集まっている。問題の根っこにはJFAの国家観の欠如、国家よりスポンサー優先の考えがあると思われ、トップの意識の問題と言えそうである。

◾️偶然とは思えない四隅近くの3片の”短冊”

画像はJFAホームページから

 炎上したキービジュアルは、日の丸と思われる赤い丸を背景に、サッカー日本代表の公式アンバサダーとして組織された音楽グループ「JI BLUE」の12人が代表の青いユニフォームを着用してサッカーのプレー中の様子を再現している。その四隅近くに3片の短冊状の写真や図柄が配置されており、色合いやデザインが太極旗によく似たものになっている。

 これに対して、JFAは取材に対して「デザインを作成するにあたり、(太極旗をイメージさせる)意図はありません」「今回の画像はアンバサダーの皆さまをご紹介するにあたり、2025年3月にJFAが作成・発表した日本代表の監督・選手の肖像を用いたものと同一のコンセプトにて作成しました」と答えている(産経新聞電子版・「韓国の国旗にそっくり」サッカー協会の日本代表イメージ画像 デザインに疑念の声相次ぐ)。

 確かにJFAが3月に作成・発表したビジュアルでは森保監督や主力選手が起用され、今回のJI BLUEのキービジュアルと構図は非常に似通っていた。問題は四隅にある3片の短冊状の写真や図柄である。これが太極旗の四卦(易経の八卦のうちの4つ)の意匠に似ているとの指摘もある。

 あくまでも推理に過ぎないが、この3片の短冊状のデザインはadidas の3本線のイメージと思われる。JFAは1999年からadidas Japanと公式サプライヤー契約を締結している(JFA・アディダス ジャパン株式会社と日本サッカー協会オフィシャルサプライヤー契約延長合意)。代表チーム応援のイメージ画像には公式サプライヤーの表記はないが、adidasと似た図柄を利用することで日本代表チームとadidasとの関係性の強さについてサブリミナル効果を狙っているように思える。

 実際に差し替えられたキービジュアルから日の丸は消えたものの、3片の短冊のようなデザインはJFAのマークのすぐ横に残されている。

◾️2012年の対韓”屈辱外交”

 JFAの国家観の欠如は今に始まったことではない。今では日本代表の応援に旭日旗を振ることは許されないが、それは2012年のU-20女子W杯準決勝の日本ー韓国戦で事実上、旭日旗を会場に掲げさせない規制を施したあたりから、その傾向が顕著になっている(参照・笑って旭日旗止める警備員が原点 元凶は親韓派)。

 この時、旭日旗をいったんは持ち込み禁止にして、内外から批判を受けると持ち込み禁止リストから外し、スタジアム内では広げないように警備員がお願いをするという日本国民の感情を逆撫でするような方法を行った。この時に大韓サッカー協会(KFA)は「旭日旗の持ち込みを許すなら、大会をボイコットする意向を示した」と同国の東亜日報が報じている(月刊Voice2017年7月号 p68・奪われた旭日旗 松田隆)。この脅しに屈したのか、当時の大仁邦彌会長と田嶋幸三副会長は、持ち込み可能も場内で広げないようにお願いするという手法を選択しているのである。

 同年のロンドン五輪では男子サッカー三位決定戦直後、朴鍾佑選手が「独島はわれわれの領土」と書かれた政治的メッセージを掲げた問題でも大仁会長は厳しい処分を求めるどころか「あのパフォーマンスについては誠に残念だ。両協会はこれまでも友好関係を築いてきた。それはこれからも変わらないし、発展させていきたい」と、宥恕するかのような発言をしている(ウィキペディア・大仁邦彌)。

 こうしたJFAの卑屈にも見える韓国への姿勢を長年見せられてきたサッカーファンには、今回のキービジュアルの問題も何らかの意図があるように見えてしまうのも仕方がない。JFAではその意図はないとしながらも、多くの人から信用されないのは自らのこれまでの言動によることを理解すべきであろう。

◾️JFAとグローバル化

 JFAではキービジュアルを差し替えた理由を「JI BLUEの皆さんとの取り組みの意図や目的をより正確にお伝えしていくために検討を重ねた結果です。」としている(JFA・「最高の景色を2026」オフィシャルアンバサダー キービジュアルを変更)。

 新しいキービジュアルには日の丸のイメージがないことから、彼らの言う「取り組みの意図や目的」には国の誇りを賭けて戦うという意識は含まれないのであろう。仮にJFAが日本代表チームは我が国の誇りと名誉を賭けて国民の応援を背に戦うチームであるという認識を有していれば、差し替えたキービジュアルから国旗(日章旗)のイメージをなくすことなどあり得ない。結局、JFAにとっては国家よりもスポンサーの方が大事なのであろう。

 JFAがこのような組織になった理由の1つに、2012年に財団法人から公益財団法人に移行したことが挙げられる。これは公益法人制度改革によるもので、文部科学省所管の財団法人だったころには定款認可、役員変更の認可、事業報告の提出、会計報告の審査など細かな認可・報告が必要で、行政の関与が相対的に強かった。公益財団法人になってからは基本的には自主運営となったと言っていい。

 国の常時の監督がなくなった結果、トップの考えも流行りのグローバル化やそれに伴う多文化共生の影響を受けやすくなっているように見える。

 たとえば2009年7月7日、国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト」(以下、国連GC)に参加している。スポーツ統括団体ではJFAが世界初であるという。この国連GCとは「経済のグローバル化に伴い、富の不平等化が深刻化した国際社会の各種問題(貧富の差の縮小・腐敗撲滅・環境保護・社会的差別解消など)に立ち向かうべく創設された『国連機関・民間企業・非営利団体等のプラットフォーム』です。各企業・団体等が責任を持ち、自主的/創造的/協調的なリーダーシップ(事業活動・社会還元活動)を発揮することによって持続可能な成長を世界レベルで実現していくもの」という(JFA・国連グローバル・コンパクトへの参加)。

 そして、JFAが国連GCに署名した理由は「FIFAワールドカップへの出場…などを通じて、より国際的な課題を解決し、地域社会や次世代の人材育成に対して寄与していく」と説明されている(同)。

 「持続可能な成長を世界レベルで実現していく」のも結構であるが、国民の期待を背負い、国家の誇りをかけて戦う日本代表を送り出すことの重要性をもう少し認識していただきたいと思うのは筆者だけではないと思われる。

◾️代表の熱気を奪うもの

日本代表戦(なでしこジャパン)で応援するファン(撮影・松田隆)

 持続可能な社会への取り組みがJFAの本来の役割とは思えず、こうした動きは政治的にはリベラルを志向しているように見える。少なくとも「国のため」「日の丸を背負って」という意識とは対極にあるように思える。

 結局、国や国民の応援よりもスポンサー、そんな意識でいるから、出来上がったキービジュアルを見ても問題があるとは思えないのであろう。

 現在の代表は、ドーハの悲劇(1993年)からW杯初出場(1998年)頃は比べ物にならないぐらいのレベルの高さと思うが、その頃に比べて国民の熱気が足りないのは、もしかするとJFAのこうした姿勢にあるのかもしれない。

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