櫻井翔批判は「頭の中が緩い」大物ジャーナリスト

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 news zero(日本テレビ系)のキャスターの櫻井翔氏(39)の旧日本軍兵士への発言で炎上している件で、ジャーナリストの寺澤有氏(54)が櫻井氏を擁護する発言をした。Smart FLASHが13日に公開したもので、刑法の基本的な考えを理解していないと思われる上、櫻井氏を批判する人々を「頭の中が緩い」と罵倒する内容となっている。

■寺澤氏「人殺しの取材」

写真はイメージ

 問題の記事(櫻井翔 元日本兵インタビュー炎上も、大物ジャーナリストは「キャスターとして普通の質問」と擁護)は、情報番組のnews zeroで櫻井氏が、真珠湾攻撃に参加した吉岡政光氏(103)にインタビューした際の「戦時中というのはもちろんですけど、アメリカ兵を殺してしまったという感覚は?」という質問で炎上した経緯を簡単に紹介。

 その上で「しかし、この質問は、“してはいけない”質問だったのかーー。」と疑問を呈している。そこで”大物ジャーナリスト”として、寺澤氏のコメントを紹介している。

 【コメント①】「私は警察絡みで事件取材をよくやりますが、人殺しの取材もよくやります。殺人を犯して捕まる前の人や、服役して出所した人にも話を聞きますが、人を殺した時にどう思ったのか、どうして殺したのかを聞くのは基本中の基本です。それを聞かないで取材など成り立ちません。たとえそれが戦争だとしても同じですよ。戦争だから仕方がないのではなく、例え怨恨だろうが何だろうが人を殺したということについては同じで、きちんと聞くべきですね。…」

 このように人を殺した際には、殺した時の思い、殺した理由を聞くのは当然のこと、「基本中の基本」としている。つまり、櫻井氏が聞いたのは当然であるという前提。

 その上で炎上した理由を以下のように分析している。

 【コメント②】「櫻井さんの質問に対し批判を投げかける人は、人殺しの話など聞いたこともない人で、裁判の傍聴もしていないし本も読んだことのない人でしょう。こんなことで文句を言う人は頭の中が緩すぎますね。…」

 つまり、寺澤氏は殺人と全く縁がなく、話すら聞いたことがない人が櫻井氏を批判しており、そうした人は頭の中が緩すぎる(意識が低いという意味か)と、批判する人々を攻撃している。その上で、櫻井氏をキャスターとしての務めを果たしたと評価している。

■寺澤氏の言う「人殺し」とは

 コメント①から考察しよう。人殺しの取材では人を殺した時にどう思ったか、殺した理由を聞くのは当然で、それは戦争でも同じとする。自分が人殺しの取材で殺した時の思いや理由を聞くのは当然だから、櫻井氏がそれを聞いても問題ないとする。

 最大の問題は寺澤氏は吉岡氏をいわゆる「人殺し」と同類としていること。確かに吉岡氏は魚雷を発射しており、人が死ぬという認識・認容はあったことは間違いない。寺澤氏はおそらくその点を根拠に同一視しているのであろう。

 法的に解釈すると、寺澤氏の言う「人殺し」は、「怨恨だろうが何だろうが人を殺したということについては同じ」という表現からも、殺人の構成要件に該当する行為を指していると解釈できる。構成要件とは「立法者が犯罪として法律上規定した行為の類型」(刑法総論 p27 山口厚 有斐閣)で、殺人罪の構成要件は「人を」「殺したこと」である。自動車を運転中に過失で人を死に至らしめた場合(過失致死)や、傷害の故意で死に至らしめた場合(傷害致死)など、構成要件的故意がない場合を含めているようにも考えられる。

 その点は措くとして、以下の場合は「人を」「殺したこと」という構成要件に該当するため、寺澤氏からすれば「人殺し」になるのであろう。

(1)死刑執行のボタンを押して死刑囚を死に至らしめた。

(2)相手がナイフで刺し殺そうとしてきたので、そのナイフを奪って相手を刺し、死に至らしめた。

(3)統合失調症による幻覚・妄想に支配され、ナイフで人を刺し、死に至らしめた。

 少なくとも(1)と(2)は人を殺す認識があり、故意は認められる。(3)は状況により、人を刺している認識がある場合も、ない場合もあると思われる。しかし、(1)は無罪(起訴されるはずもないが)、(2)と(3)は無罪になる可能性がある。(1)が無罪になるのはそれが正当行為だからである(刑法35条)。(2)は正当防衛(同36条1項)で違法性が阻却され、(3)は心神喪失(同39条1項)で責任を問えない。

 以下に条文を示しておく。

35条:法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

36条1項:急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

39条1項:心神喪失者の行為は、罰しない。

■刑法の基本をご存知ないか

写真はイメージ

 吉岡氏が魚雷を投下し、敵兵を死に至らしめた行為を現代の刑法で考えれば、(1)の正当行為で無罪になる。まさに死刑執行のボタンを押して死刑囚を死に至らしめる行為と同じ正当行為である。ごく当たり前のことだが、上記(1)と吉岡氏の行為を「人殺し」と呼ぶ人などいない。もし、そう呼べば、この上ない侮辱となる。

 前述したように法学で考えれば寺澤氏のコメント①は、構成要件に該当する行為を全て「人殺し」としており、街のチンピラが喧嘩で相手を殺した殺人事件と、国家のために命を賭けて戦った吉岡氏を、同じ「人殺し」と一括りにしている。

 そのように一括りできる行為であるから、櫻井氏の質問は当然としているのであって、刑法の構成要件、違法性、有責性を全く無視し、おそらく櫻井氏を擁護したいという結論ありきの話を取材に対して答えているに過ぎない。

 寺澤氏がこの程度の刑法のごく基本を知らないのか、知っていて無視しているのか分からないが、いずれにせよ、ジャーナリストを自称するにはお粗末すぎる。ただ単に自分は「人殺しを多数取材し、修羅場を多く経験しているジャーナリスト」と自慢したいだけなのでは、と感じる人も少なくないのではないか。

■国民の頭が緩いわけではない

写真はイメージ

 コメント②も触れておこう。以上の話からすれば自明であるが、櫻井氏が炎上したのは我々一般視聴者の頭の中が緩すぎるのではなく、櫻井氏が刑法35条の正当行為の概念を理解しないまま、正当な業務者を殺人者扱いしたことが理由である。

 ここからは極めて個人的な見解である。櫻井氏はジャーナリストとしての資質を疑われるような質問をしてしまったと思うが、多少、不勉強であったか、あるいはnews zeroのスタッフの指示に疑問を持たずに従ってしまったか、どちらかであるように感じられる。

 キャスターを自称しつつも、もともとジャニーズ事務所所属のタレントであり、本来、多くを求めるのは酷なのかもしれない(参照・櫻井翔氏 論理性欠く質問で炎上)。

 しかし、寺澤氏はジャーナリストで、取材経験も豊富と思われる。それがこの不勉強ぶり。刑法の基本を無視し、命をかけて国のための戦い正当な行為をしたに過ぎない103歳の元日本兵の人生を貶めるのは信じ難い。しかも、多くの国民を「頭の中が緩い」呼ばわり。逆に寺澤氏が「頭が緩いジャーナリスト」と言われないように注意した方がいいのでは、と他人事ながら心配になる。そして当該記事を掲載するSmart FLASHの非常識さも驚くばかりである。

 かつてメディアはわれわれ国民に、正しい道を指し示す存在であった。しかし、今、一部のジャーナリスト、メディアは国民の常識から乖離し、見下される存在となっている。そうしたジャーナリスト、メディアにはもういい加減に退場願いたいと心底思う。

    "櫻井翔批判は「頭の中が緩い」大物ジャーナリスト"に5件のコメントがあります

    1. 野崎 より:

      恐れ入ります。

      他の方々にもお目を通して頂きたく再度、以下に。

      櫻井氏を上回る大物ジャーナリストだとの御仁が現れた。
      櫻井氏の質問をよしとするスタンスを明確にしているので異論を唱えて見たい。

      ★櫻井翔 元日本兵インタビュー炎上も、大物ジャーナリストは「キャスターとして普通の質問」と擁護

      SmartFLASH

      2021/12/13 18:38

      大物ジャーナリストは、“キャスターとしての務め”を果たした櫻井を評価していた。
      上記記事より抜粋引用

      ★>しかし、この質問は、“してはいけない”質問だったのかーー。
      長年警察や権力の腐敗を暴き続け、2014年に「国境なき記者団」から「世界の情報ヒーロー100人」に日本人としてただ一人選出されたジャーナリストの寺澤有氏(54)は「基本中の基本の質問で、問題視する方がおかしい」と話した。
      櫻井の質問について、寺澤氏はこう語る。
      「私は警察絡みで事件取材をよくやりますが、人殺しの取材もよくやります。殺人を犯して捕まる前の人や、服役して出所した人にも話を聞きますが、人を殺した時にどう思ったのか、どうして殺したのかを聞くのは基本中の基本です。それを聞かないで取材など成り立ちません。たとえそれが戦争だとしても同じですよ。

      ●同じではない。
      人を殺すという事においては同じとだ、との発想だろうが違う。
      以下に、自身がその発想であることを認めている。

      ★>戦争だから仕方がないのではなく、例え怨恨だろうが何だろうが人を殺したということについては同じで、きちんと聞くべきですね。

      ●これは基本的価値観と個別的価値観を混同した発想である。
      基本価値感 人は美味しい物を食べることが好き。
      個別的価値観 私は中華が好き、私は和食が好き。

      戦争において。
      基本価値 殺人は否定されるべき普遍的価値感である。
      個別的価値観 ある価値感により殺人が狭義に評価される時代。
             戦国時代、緊急避難、正当防衛による殺人等々

      寺澤氏は、戦争だから仕方ないのではなく、と戦争という個別条件を無視し以下。

      ★>仮に私がインタビューをするとしたら、『当時は鬼畜米英でしたから、一人でも多くの米兵を殺してやれと思われたのでしょう。敵艦を撃沈して、うれしかったのでしょうね』と聞くでしょうね。

      ◆相手を挑発する方法論、技術ということか、
      技術を別にしてこれを聞く意味、目的は何であろうか?
      基本的価値観において解っていることを聴く必要はない。
      答えは解っているのだ。
      個別的価値観において聞く意味は果たして何であろうか?

      ◆私が吉岡氏の立場なら、
      ほう、お前さんは私の心がわかるのかい?
      お前さんは一人でも多くの米兵を殺すことがうれしんんだね。
      何、違う、なら何故私が人を殺して嬉しいと思ったのかい?
      説明しておくれ、質問を要求したのだから答える義務はあるだろう、と
      さらに
      俺は人を殺して嬉しいとは思っていないぜ、オウ! 無礼だろう、おれを殺人狂の人殺しだってか、この野郎!
      と人格が露呈!
      ◆櫻井氏の質問、アメリカ兵を殺してしまったという感覚は? に対しては
      君何を言っているのかね? 戦争とは殺し合いのことだよ。
      命中して安心したという言葉の意味を理解洞察できないのかね。(大前提である基本的価値観を理解していないのか、できないのか)
      さらに
      戦争という不条理の中、命をかけて互いに殺し殺し合う次元に我々は在ったのだ。
      自分は死にたくない。
      国を守るとう大儀において、それは又自分の家族を守るという事でもあるのだ。様々な思いを秘めてのの安心だ。(合理的に説明できることではない)
      すでに闘いは始まっているのだ。戦うということはこの大戦を少しでも早く帰結させることでもあるのだ。

      基本的価値観において答えはわかっているが個別的価値観において
      人は殺人の様々な事象に関しその詳細を知りたがるものだろう、高尚な言い方をすれば、それから人生の意味を、生きる上での糧として、何らかの答えをを得るために、下世話にいえば好奇心である。物見高いは人の常、と
      その欲求への情報提供がジャーナリストであろう。
      だがその取材方法は個々にあろう、相手を挑発し本音を引き出す、これが大物ジャーナリストの方法なのだと。

      寺澤氏の主張は以下に続く。
      ★>そうした方が相手の元日本兵は話しやすかったのかもしれません。逆に、広島や長崎に原爆を投下したり、東京大空襲に参戦した米兵たちに、その時の気持ちを聞きたいじゃないですか。櫻井さんの質問は、取材する側としたら全く普通の質問に過ぎません。むしろ遠慮して聞いたから、炎上したのかもしれませんね」

      ◆先の寺澤氏の質問だとしたらどうなっていたか、自分の質問ならば炎上はなかっと? このコメントの文末にある市場分析能力の問題である。

      ★>さらに、炎上した理由について寺澤氏はこう分析した。
      「櫻井さんの質問に対し批判を投げかける人は、人殺しの話など聞いたこともない人で、裁判の傍聴もしていないし本も読んだことのない人でしょう。こんなことで文句を言う人は頭の中が緩すぎますね。昔だったら戦争体験者が多く、戦争の生々しい話をしてくれる人は多かったのですが、今はほとんどいなくなりました。櫻井さんが質問したことで、そうした生々しさを今ごろ知った人が多かったのかもしれません」

      ◆いやいや知っているから、解っているから櫻井氏のような質問はしないのだよ、知っているから怒ったのだよ、生々しさを知らなければ怒りもわかないだろ、知らなければ怒らない、そんなことも大物ジャーナリストはわからないのか、

      人の心を知る。
      ビジネスでいえばマーケティングだ、マーケティングは究極心理学だ。
      市場を理解、把握できないビジネスマンはビジネスマン失格だ。
      企業の存亡にかかわる。
      ジャーナリストも同じだ。

      ★>さらに、炎上した理由について寺澤氏はこう分析した。
      櫻井さんの質問に対し批判を投げかける人は、人殺しの話など聞いたこともない人で、裁判の傍聴もしていないし本も読んだことのない人でしょ

      ◆何を根拠に? 市場分析能力ゼロである。

      ▲いやゼロではないだろう。
      寺島氏は何もかも解っている。
      櫻井氏も同じく解っている。
      よって、それだからこの記事は以下の主張で締めくくられている。

      ★>櫻井のインタビューは録画で、編集されたもの。台本に書かれた質問だったのか、櫻井自身が質問したものだったのかは定かではないが、番組公式ツイッターで事前に公開されたVTRでも、この場面だけがピックアップされていた。

      櫻井氏も吉岡氏と同じく何事かを強いられる不本意な環境にいるのだろう。
      全てを解っていながら炎上商法で自らの利益誘導を図る
      寺澤なるジャーナリストを許せん。

      1. BADチューニング より:

        寺澤有さんのtwitterを見て来ました、辻元清美さんや米山隆一さんもいました、楽しそうですw

        あ、当方も「お前は頭がおかしいから病院へ行け」と言われるのかナ?ww

    2. 名無しの子 より:

      「キャスターを自称しつつも、もともとジャニーズ事務所所属のタレントであり、本来、多くを求めるのは酷なのかもしれない」という櫻井くんへの松田さんのお言葉、実はホッとしました。元ファンとして、炎上しているのを見るのは大変辛かったです。
      まだ若いし(と言ってもかなりの年齢ですが)、もし悪気がなかった、ただの無神経な発言ならば、きちんと公の場で謝罪した方がいい、これでもう芸能活動が終わりなんて事になったら、かわいそうだと思っていました。吉岡さんも非常に嫌な思いをされたかとは思いますが、櫻井くんが真摯に謝れば、わかってくださるかと。
      なんとか収まってほしいと思っていたのに、なぜ、火に油を注ぐ?本当に馬鹿じゃないのと思いました。しかし、、
      先日も書きましたが、生放送でもないのに、局はカットもしませんでしたね。そして野党の応援。私には、櫻井君を利用してのプロパガンダのように思えてなりません。
      寺澤氏の政治思想はわかりません。でももし、紅い思想ならば、確信犯の可能性もあるかもしれないと思います。
      やはり、タレントは、政治的な発言をしない方がいいですね。坂上氏も北野たけし氏も、番組を降りるとのことで、正解だと思います。タレントが政治利用されることは、タレント自身はもちろんのこと、そのファンたちが、「○君の言うことだから、支持する」のようになり、恐ろしいことになりますから。政治は、軽はずみに関われるほど、簡単なものではないという事に気づいてほしい。タレントの皆さんも、そして、寺澤氏のような自称ジャーナリストの方々も。

    3. 月の桂 より:

      寺澤氏の方がずっと悪質ですね。どうにもならんな…この人。

      〉櫻井氏はーーー多少、不勉強であったか、あるいはnews zeroのスタッフの指示に疑問を持たずに従ってしまったか、どちらかであるように感じられる。

      私も同じように感じました。櫻井さんは深く考えもせず、ストレートに質問してしまったのでしょう。こちらには、櫻井さんの対応を肯定的に捉えるコメントもありました。頭の中が緩い私ですが、そういう評価も有り得るかも~と受容出来ました。

      ただ、自説が絶対とばかりに相手を論破しようとする空気は怖いな…と感じます。人の価値観は様々ですし、相手の意見も尊重しつつ、自分の考えも伝えられたらいいですね。
      次から、「匿名」で投稿しようかな…(-_-;)

    4. MR.CB より:

      》》ジャーナリスト松田様

      〉寺澤氏が「頭が緩いジャーナリスト」と言われないように注意した方がいいのでは、と他人事ながら心配になる。そして当該記事を掲載するSmart FLASHの非常識さも驚くばかりである〈

      松田さんがおっしゃる通りです。

      〉かつてメディアはわれわれ国民に、正しい道を指し示す存在であった。しかし、今、一部のジャーナリスト、メディアは国民の常識から乖離し、見下される存在となっている。そうしたジャーナリスト、メディアにはもういい加減に退場願いたいと心底思う〈

      松田さんのおっしゃる通りですが、「頭が緩いジャーナリスト」たちに良識を求めても無駄だと思います。また、能力的にも他に行く場所もないはずです。よって「頭が緩いジャーナリスト」を利用する不埒な輩と共に、命尽きるまで居座り続けるに違いありません。
      よって松田さんには申し訳ありませんが、この終わりなき鬼退治を陰ながら応援させて頂きます。

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