茶番だ 藤島ジュリー景子氏の謝罪

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長が14日、自社HP上で故ジャニー喜多川氏による性加害問題について動画と文書で謝罪と説明を行なった(ジャニーズ事務所ホームページ・故ジャニー喜多川による性加害問題について当社の見解と対応。その内容は事実関係については曖昧にしたまま、自身は全く知らなかったというスタンス。この説明にどれだけの人が納得できると言うのか。「茶番」と呼ぶに相応しい内容である。

◾️とにかく謝罪する姿勢

藤島ジュリー景子氏(ジャニーズ事務所公開の動画から)

 藤島社長は1分9秒の動画で4度頭を下げ、以下のように謝罪している。

 「何よりもまず被害を訴えられている方々に対して深く、深くお詫び申し上げます。」

 元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏(26)が故ジャニー喜多川氏から性的被害を受けたことを会見で明らかにしており、1988年に出版された「光GENJIへ」では、元フォーリーブスの北公次氏が性的被害を明らかにし、それ以外にも同種の被害を受けたとする暴露本を出した元タレントもいる。

 「被害を訴えられている方々」と複数形で言っていることから、オカモト氏以外の被害者についても謝罪していることが分かる。ところが、肝心の事実関係については、公にされた文書の中で以下のように説明している。

 「当事者であるジャニー喜多川に確認できない中で、私どもの方から個別の告発内容について『事実』と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではなく、さらには憶測による誹謗中傷等の二次被害についても慎重に配慮しなければならないことから、この点につきましてはどうかご理解いただきたく存じます。」

 動画ではオカモト氏らに「深く、深くお詫び」しながら、事実関係については「認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではなく」と、肯定も否定もしない。ただ、「当然のことながら問題がなかったとは一切思っておりません。」とする。つまり、真相は分からないが、自身の主観では「全くの捏造とは思っていませんよ」というもので、事実認定については言及を避けている。

 この逃げの姿勢が批判されると思ったのか、誹謗中傷等の二次被害への配慮から、どうかご理解いただきたく存じますと、他の人に迷惑がかかることを理由にして「ここまでしか言えないのを許してね」と言っているのである。

 悪いことをした、そしてその認識があるから、人は謝罪する。ところが藤島社長はとにかく謝罪する。しかし、悪いことをした、その認識があるかについては(真実性0%なんて思っていない)という個人の感想を述べたにとどまる。

◾️何に対して謝ったのか

 こうした状況で藤島社長に聞きたいのは「事実の認識について留保する中、何に対して謝ったのですか」ということである。記者会見をすれば、当然、その点を聞かれる。そうすると、以下のようなやり取りが予想される。

記者:何に対して深く、深くお詫びをしたのか。

藤島:被害を訴えた方が辛い思いを吐露されており、そのことに対して謝罪した。

記者:それではジャニー喜多川氏の性加害を認めるのか。

藤島:『事実』と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではない。

記者:事実と認めることが容易ではないなら、何の事実に対して謝ったのか

 ここで詰みである。こうなることが容易に想像されるから、会見しなかったと疑われかねない。風当たりがとんでもなく強いということが分かっており、謝罪をしなければ収まりがつかないから謝罪していると思われても仕方がない。バッシングを受けながら謝罪をしないで激しく炎上するのは、元都議の木下富美子氏、ツイッターのお詫びをプリントして秘書に手渡した小西洋之氏らの例を見るまでもなく明らか。とにかく深刻な表情でお詫びしておけば逆風は収まると計算していたのではないか。

◾️責任追及から逃れる目的か

 それなら、なぜ、藤島社長は事実関係をはっきりと認めなかったのか。これは、想像でしかないが、自身への責任追及から逃れる目的であったように思える。事務所の取締役であれば、代表取締役による常習的な少年への準強制わいせつをやめさせなければならない責務がある。この点は文書でも認めたところで、「取締役という立場でありながら、積極的にその責務を果たせなかった点について、大きな落ち度があったと考えております。」と自身の責任を認めている。

 このことは、オカモト氏らが藤島社長に対して損害賠償請求をかけた時、藤島社長としては、積極的に責務を果たせなかったという点においての責任は認めるということであろう。取締役であれば、契約関係にある未成年のタレントを守る立場にあるわけで、それに対して積極的に動けなかった責任は認める。しかし、そこまで。その点は文書の中で「本件については自らも積極的に知ろうとしたり、追求(筆者註:「追及」の誤りか)しなかったことについて責任がある」と、限定された責任のみ認めることを明らかにしている。

 藤島氏はジャニー喜多川氏による少年への準強制わいせつに対して知らなかったとしている。1988年に北公次氏が著書で明らかにして世間が大騒ぎになったのに、知らなかったとはにわかには信じ難い。知っていて黙認していたなら、上記の限定された責任の範囲ではすまない。取締役として、そのような犯罪が常習的に行われている状況に気付いていながら何もしないことが許されるはずがない。

 その場合、可能性は薄いが不作為の共犯として刑事責任を負わされるかもしれないし、損害賠償請求なら共同不法行為とされるかもしれない。そのような、藤島社長にとっては最悪の事態を避けるように、動画と文書で示されているのを見ると、(本当に反省しているのか)と感じるのは筆者だけではないはず。

◾️社会に見殺しにされる二次被害

写真はイメージ

 強制わいせつ(刑法176条)は法定刑6月以上10年以下の懲役という重罪である。これを伝えられるように所属事務所の複数の少年に対して行なっていたのであれば、相当の長期間、刑務所に入らなければならない。

 明日のスターを夢見る少年たちは、自らの生殺与奪の権利を持つジャニー喜多川氏に逆らうことなどできず、卑劣な行為を受け入れるしかなかったと思われる。

 もし、事実なら、そのような性犯罪者が日本の芸能界を牛耳り、それを恐れるメディアは週刊文春を除きおぞましい事件を報道することはなかった。

 藤島社長もメディアも、自らの行為をよく振り返るべき。被害を受けた少年たちは、社会に見殺しにされる二次被害を受けたことを反省してほしい。

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