アスクル「不審な点はない」に残る疑問

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 河野太郎内閣府特命担当大臣の実弟の河野二郎氏が代表を務める麻布食品株式会社(本社・東京都港区)が、小西洋之氏(立憲民主党)らにアスクル株式会社(本社・東京都江東区)の文具などを売却する代理店となっていた問題で、アスクルが14日までに当サイトに「不審な点はない」と回答した。もっとも確認できただけで3年間で20人の国会議員の事務所との取引で代理店となっており、任意の割り当てであるはずの代理店を多数務めていたことや、取締役と同姓同名の者から河野太郎事務所に年に20万円の寄付がなされていることなど、疑問はなおも残る。

◾️国会議員20人が3年間で約950万円

麻布食品が入ったビル

 小西氏の政治資金収支報告書によると、2019年からの3年間で合計69万953円が備品・消耗品費の名目で麻布食品に支払われている。当サイトの調べでは小西氏をはじめ、3年間で20人の国会議員が麻布食品が代理店となってアスクルとの取引が行われている。所属政党は自民党だけでなく、公明党、日本維新の会、立憲民主党と与野党にまたがる政党に及び、その金額は合計で944万401円。

 そこで当サイトではアスクルに対して、20人の国会議員の政治資金収支報告書に記載されている支出の通りの売り上げがあるのか、その点の確認を求めた。3月末に質問を送付し、同社から回答があったのは1か月以上経過した5月初旬。

 届けられた回答は「アスクルサービスのご利用実績データと照らして確認をいたしましたが、不審な点はございませんでした。」という簡略なものであった。20人の国会議員の政治資金収支報告書の通りの売り上げがあったというのである。

 この間、当サイトから何度も早期に回答を求める督促をしたが、それでも回答を得るのに1か月以上の時間を要した。

◾️代理店はたまたまなのか

 麻布食品はアスクルの代理店(アスクルエージェント)を務めており、基本的にはアスクルが代理店を指名する形で割り当てられている。実際、小西氏は当サイトの取材に対し、割り当てられたのは偶然であり、河野二郎氏や河野太郎事務所に寄付をしている人物と同姓同名の取締役については全く知らないと答えている。

 全国にアスクルエージェントは1500前後とされるが、小西氏の言うようなパターンで20人の国会議員が麻布食品を代理店として指名されたとすれば、偶然と呼ぶにはあまりに出来過ぎているように思える。

 アスクルは政治資金収支報告書の通りの売り上げがあったとするが、仮にそうであるとしても、そもそも、なぜ、麻布食品が独占的に国会議員の事務所に対してアスクルエージェントの地位を得ていたのかという疑問は残る。

 この点について、アスクルではアスクルエージェントの割り当てについて、同社が割り当てるほか、エージェントが営業をして顧客を獲得する場合や、顧客がエージェントを指名する場合があるとしているが、少なくとも小西氏の場合はアスクルからの割り当てであったとする。

 麻布食品が積極的に国会議員の事務所に営業してアスクル文具を買うように営業した形跡は発見できず、また、河野太郎氏の実弟が代表を務める会社が与野党を問わずに営業をするというのも考えにくい事態ではある。

 また、河野太郎事務所に対して、麻布食品の取締役と同姓同名の人物が毎年20万円の寄付を行っている点については、取締役本人なのか、もし、そうであれば肩書を会社役員とすべきところなのに、会社員としているのはなぜか、そもそもなぜ、20万円の寄付を毎年しているのか。

◾️疑問は残されたまま

 こうした点について、麻布食品に架電して取材を申し込んだが、一切応じないとし、また、同社代表取締役の河野二郎氏に話を聞くため、同氏が代表取締役を務める日本端子株式会社(本社・神奈川県平塚市)に取材を申し込んだが、今は取材には応じていない、しかも、他社に関する取材であれば取り次ぐこともしないという返答であった。

 アスクルがいうように個々の取引については不審な点がないというのが事実であったとしても、麻布食品に関する数々の疑問は残されたままである。

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