新婚の日本人サポ「Big Beef」に爆笑 悪ノリ米TV局

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 開催中のサッカーW杯で、新婚の日本人サポーターを取材した米テレビ局のスタジオが笑いに包まれるシーンがあった。日本・オランダ戦に沸くテキサス州ダラスのWFAA(ABC系列)は、現地入りしている日本人サポーターのレポートを放送。可憐な若い女性が、聞き方によっては卑猥な意味になる言葉選びをするハプニングから、スタジオで悪ノリ混じりの盛り上がりとなった。もっとも英語が苦手な日本人を『イジる』のではなく、お祭り気分で盛り上がる中、日本人を歓迎する現地のムードを伝えるものになっている。

◾️日本の新婚カップルが発した言葉

WFAA・Foreign fans experience Texas culture at the World Cup 画面から

 思わず笑ってしまうやり取りは、日本時間で15日に公開された動画内にある、新婚旅行でダラスを訪れたという男女のカップルの受け答えから生まれた。そのやり取りを英語で聞き取ると以下のとおりであった。女性は「ココ」さんと呼ばれていたようである。

男性レポーター : さっき話してくれましたよね、これまでに気に入った食べ物や、アメリカで食べてみたい料理は何ですか、と私が尋ねたときのことです。何でしたっけ?(You were telling me, I was asking you what your favorite food was so far, the food you wanted to try in America. What was it? )

日本人の夫 : 大きなハンバーガーのようなものです。(Like a big hamburger. )

男性レポーター:いいですね、それならお役に立てますよ。それで、ココさん、あなたが食べてみたいと言っていたのは……(Okay, We can help you with that. And, Koko, you said you wanted to try… )

日本人の妻ビッグ・ビーフです。(Big beef.)

男性レポーター:ビッグ・ビーフ! それはステーキであり、ハンバーガーであり、ブリスケット(牛の胸肉)でもありますね。お任せください。ビッグ・ビーフがお望みなら、まさに最高の場所に来ましたよ。( Big beef! That is steak, that is hamburger, that is brisket. We can help you out. You’re in the right place if you want big beef.)

 実はこのレポートを振る前から、スタジオではFCダラスのレジェンドでもあるTatu氏は笑いを堪えきれない様子であった。

 そして、スタジオに切り替わる。画面に向かって、左がキャスターのピートさん、中央にTatu氏、右側に女性キャスターのシンシアさんが構えている。

ピート:ビッグ・ビーフ。気に入りました。ここには確かにそれがあります。そういえばブラジルもビッグ・ビーフで知られているけれど、あなたの国(ブラジル)には、テキサスにあるようなブリスケットはありますか?( Big beef. I like that. We, hey, we do have that here. And now Brazil is known for big beef, but do you guys, do you guys, I mean do you guys have brisket down there like we have in Texas? )

Tatu : あります。ブラジルの肉は最高です。(Oh, yes. The meat in Brazil is very good. )

ピート:私はブラジルが大好きです。( Oh, I love, I love Brazil. )

シンシア:男って本当に仕方のない生き物ね。そうでしょ?(Boys will be boys. Right?)

 (以上、YouTube WFAA・Foreign fans experience Texas culture at the World Cup から)

◾️Big Beefの意味は?

 何の変哲もない現地レポートであるが、2人の男性、特にTatu氏の笑いが止まらず、最後は呆れたように、シンシアさんが「男って本当に仕方のない生き物ね(Boys will be boys.)」と言ったのが印象的である。

 一体、このやり取りは何がおかしいのか。

 ヒントは日本人の新婦が口にした「Big beef」にある。レポート映像の紹介の前に、シンシアさんはハネムーンで訪れていることを説明している。そして、男性レポーターがテキサスで何を食べたいかと聞いている。テキサス州は建物も、道路も、食べるものも、とにかく大きいのが有名で、それを意識して、夫は「ビッグハンバーガー」と言ったのであろう。

 それに続いて新婦が「Big beef.」と言っている。これはレポーターがすぐに「Big beef! That is steak,」と言っているように、ビーフステーキであると補足説明をしている。

 ところが、このbeef(牛肉)には性的な俗語義もある。スラングの辞書には、beefの意味の1つとして「the penis」が挙げられている。つまり、普通に聞けば「大きな牛肉」だが、文脈と聞き手の受け取り方によっては、卑猥なダブルミーニングになり得る(Green’s Dictionary of Slang・BEEF)。

 このスラングは上記の辞書によるとシェイクスピアの時代から使われていたそうで、ロック歌手のフランク・ザッパも1971年に発表した「Latex Solar Beef」という曲の中で、Beefを本来の意味とは異なる意味で用いているとの説明がなされている。

 Beefを異なる意味で解釈した場合、このやり取りは以下の意味に取れる。

 レポーターが、「あなたはアメリカで何を食べたい? 何を試してみたいですか?」と新婚夫婦に聞くと、奥さんが夫の前で「大きなアレを試してみたいわ」と答える。そしてレポーターは、大きなアレが試したかったら、あなたは(大きいことが自慢のテキサス州にいるから)正しい場所にいますよ」と応じているわけである。

 スタジオに戻ると、ピート氏がブラジル人のTatu氏に話を振る。「ブラジルもビッグビーフで有名です」と言うが、これはブラジルの名物料理のシュラスコを念頭に置いたものと視聴者は受け取るが、レポートからの流れでは「ブラジル人も『ビッグビーフ』を持っているよね?」とも解釈できる。

 それに答えてTatu氏が「ブラジルの肉は最高です。(The meat in Brazil is very good.)」と「The meat 」、つまり「肉」というダイレクトに想像させる言葉で応じた。

 笑いが止まらない男性2人を見て、シンシアさんが「男って本当に仕方のない生き物ね。そうでしょ?(Boys will be boys. Right?)」と締めている。Boys will be boysは男性がいくつになってもくだらないことで盛り上がったり、馬鹿げた行動をしたりした際に、女性が「男の子って本当にしょうがないわね」「男はいつまで経っても子供のままね」と、呆れ半分、苦笑交じりに言う時の定番の文句である。

 つまり、ビッグ・ビーフという言葉の響きに過剰に反応して、ニヤニヤしながらブラジルの肉にまで話を広げて悪ノリしている男性陣に対して、女性のシンシアが「男って本当にしょうもない生き物ね」と突っ込んでいる構図になっている。

◾️ダブルミーニングの楽しみ方

WFAA・Foreign fans experience Texas culture at the World Cup 画面から

 このやり取りが笑えるのは、新婚旅行中の可憐な女性が、自分が発した言葉がそんな意味を含むとは知らず、しかも、夫の前で言っている点にある。もちろん、夫もその意味が分からず、新婚旅行の幸せなムードを醸し出していることが、視聴者の印象を良いものにしていると言っていい。

 表面上のやり取りからは、下ネタの要素は皆無である。皆、言外にある意味をあくまでも言外に置いたまま、ダブルミーニングを脳内で再生する、ある意味、知的な言葉のやり取りで笑いに昇華させている。

 英語が一般的には苦手とされる日本人をバカにする意図は感じられず、大きさが有名なテキサス州で、新婚の日本人カップルが名物料理を楽しむ、その中で、あまりにギャップのある言い間違いをしたことで現地の人を困惑させ、それを楽しんでいるかのようである。W杯という世界最大級のスポーツイベントを開催する米国の人々の高揚感が伝わってくるかのようである。

 もちろん、これを見た方の中には、不快に感じる方もいるかもしれないが、少なくとも筆者はそうした受け止めはしていない。お祭りの時にはこれぐらいのことに目くじらを立てるのは野暮というものであろう。何より、放送する側に日本人をバカにして笑いを取ってやれという意識が感じられず、どちらかといえば、視聴者が日本人や日本に好感を持つようなものに仕上がっている点が好ましく思える。

 YouTubeには100近いコメントがついている。レポートの性質をよく示すのが、以下のコメントであろう。

★no  understanding of big beef  !!! Sooo cute.!!!!(『ビッグ・ビーフ』の(裏の)意味をまったく分かってない !!!そこがもう、めちゃくちゃ可愛い!!!)

 さらに以下のコメントが並んでいる。

★my new favorite pastime is watching videos of people reacting to America for the first time.  So wholesome.(最近の私の趣味は、アメリカを初めて見た人々の反応を収めた動画を見ることです。とても心温まる光景です。)

★I love japanese people so much(私は日本の人々が大好きです。)

★She said “big beef” with such conviction, and the reporter didn’t miss a beat. He just kept going. “We can definitely help you out with that”. OMG. Fans visiting for the World Cup is such an unexpected, absolutely charming, happening. Love it!(彼女は「大きな牛肉」と確信を込めて言い、記者は間髪入れずに続けた。「それについては間違いなくお手伝いできます」。なんてこと!ワールドカップのためにファンが訪れるなんて、予想外で、本当に魅力的な出来事だ。大好き!)

★What a lovely couple!(何て素敵なカップル!)

 また、スタジオの続きを意識したかのようなコメントもある。

★All us women like big beef. And maybe some guys.(私たち女性はみんな大きな牛肉が好き。もしかしたら男性の中にも好きな人がいるかも。)

★They are holding their laughters. (彼らは笑いを堪えている。)

◾️米国アゲのSNS

画像はイメージ(AIで生成)

 米国ではそうした国際的なスポーツイベントは頻繁に行われているのかもしれないが、ロサンゼルスやニューヨークと、ダラスではその開催頻度も異なるであろうし、現地の受け止めに温度差があることは容易に想像がつく。

 この機会に、テレビだけでなく、YouTubeやX、インスタグラムなどのSNSでも各国のサポーターの様子を面白おかしく取り上げている。目につくのは、各国サポーターが米国の良いところを見つけてSNSに投稿する、いわば『米国アゲ』の流れである。それが一般の国民には心地の良いものになっているように思われる。

 これもW杯の1つの側面であろう。細かいことに目くじらを立てずに、太平洋を挟んで行われている祭りを、こちらも楽しむぐらいの気持ちでいるのがいい。

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