ラグビー日本代表は多様性の時代の先駆け 未来の日本と大日本帝国の共通点

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 ラグビーW杯で日本がアイルランドを19-12で破った。世紀の大金星だが、サッカーのW杯に比べると盛り上がりの点ではいまひとつと言っていいのではないか。それはラグビーとサッカーのスポーツとしての浸透度の差かもしれないが、外国人選手が多いという事実が影響していると思う。だが、この国際性豊かな日本代表が未来の日本の姿を示しているように思える。

■6つの国籍の31選手が集まったラグビー日本代表

ラグビー日本代表を国籍で分類

 まず、今回の日本代表31選手を日本出身・帰化・外国籍の3つのカテゴリーに分けてみた(松田調べ)。松島幸太朗選手は南アフリカ出身で父がジンバブエ人のため二重国籍ではないかと思われ別枠としたが、基本的には日本出身の日本国籍選手と親和性が強い。

 それ以外をみると、ニュージランドが6人、トンガが5人など、5つの国から15選手が集っており、そのうち日本に帰化しているのは7選手である。つまり31人を分類すると以下のようになる。

日本出身 15:外国出身 16(松島選手を含む)

日本国籍 23(松島選手を含む):外国籍   8

 6つの国籍を持つ選手が1つのチームに集まって世界一を目指す。そう考えると「ワンチーム」という合言葉は、本来のチームとしての結束だけではなく、国籍や民族の壁を取り払って一つになろうという意味を含む解釈が可能である。

■台湾映画KANOに通ずる民族の協力

日本の勝利を伝える新聞(産経新聞)

 外国出身者が体格に優れたFWに多い(11選手)のは、その特性を活かすためであろう。もちろん、今大会でのフランカー姫野選手の活躍は外国出身者に負けないものであるが。

 一方、日本人特有の一瞬のスピードであるとか、ボールコントロールの巧みさ、ゲームメイクの能力が必要とされるSHとSO5人はすべて日本人が占めている。

 こうしてみると、各国の人々の特徴をうまく活用するようにチームが構成されている。サッカーの日本代表にも帰化選手は少なくないが、それでもかなり色合いは異なる。

 台湾映画「KANO 1931海の向こうの甲子園」は戦前の夏の甲子園で台湾代表の嘉義農林中の活躍を描いたものである。嘉義農林中は大和民族と中国系、台湾先住民系の3つの民族が力を合わせて甲子園を目指し、決勝まで進出した。野球部の監督役で出演した永瀬正敏が劇中、こう話すシーンがある。

 「いいですか、蕃人(台湾先住民)は足が速い、漢人(中国系)は打撃が強い、日本人は守備に長けている。こんな理想的なチームはどこにもない」

■ラグビー日本代表が日本の未来を示しているのか

 こうしてみると今回の日本代表も戦前の嘉義農林中学と同じ発想である。戦前の日本は色々な見方はあるだろうが、多民族が力を合わせて欧米列強に対抗していこうという発想が根っこにあったと思う。満洲国の民族政策は「五族協和」であったのはご存知の通りである。

 今、日本は少子高齢化が働き手が足りず、外国人労働者の受け入れを進めている。移民を受け入れるべきではないかという意見も少なくない。その是非はともかく、スポーツの世界ではこうした多民族化は既に進行しているのである。サッカーのU-17やU-15をみるとハーフの選手がかなりの数を占めると言われ、別の方面からの多民族化も進んでいる。

 20年後、30年後には外国出身の日本人が珍しくなくなり、100年後には米国に似た多民族国家になっているかもしれない。それを最終的に決めるのは我々主権者であるわけだが、僕はそれでもいいと思う。多くの民族が日本という国家を愛し、日本国民として誇りを持って生きていけば幸せな国づくりはできると思う。日本人の多くが持っていた「国家=民族」という幻想は捨ててもいい時期ではないか。

 ラグビーの日本代表の外国出身選手が大きな声で「君が代」を歌っているのを見ていると、そんな思いが強くなる。大日本帝国の人々も、そんな未来を夢見ていたのかもしれないと思うと、歴史の不思議さを思わずにはいられない。

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