文化人放送局に新たな違反“BAN回避” 今週にも処分か
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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著作権侵害で2度の動画削除処分を受けた文化人放送局に新たな違反が発覚、早ければ週明けにもこの件で処分される見通しとなった。問題となっているのは“BAN回避”と呼ばれる重大な規約違反で、同局が各番組で説明しているとおり、YouTubeのチャンネルが閉鎖される可能性が高い。著作権侵害のペナルティのためメインチャンネルの機能が大幅に制限されている中で、BAN回避という重大な違反に関与したとみられる運営側の対応には、非難が集まるのは避けられない情勢となっている。
◾️BAN回避という重大な違反
“BAN回避”とは、circumventing restrictions(制限の回避)と呼ばれるもので、チャンネルが著作権侵害などで制限や停止を受けた際に、その措置を免れるために別のチャンネルやアカウントに動画や配信を移して継続する行為を指す。
YouTubeの利用規約には以下のように定められている。
If your channel has been restricted due to a strike, you must not use another channel to circumvent these restrictions. Violation of this prohibition is a material breach of this Agreement and Google reserves the right to terminate your Google account or your access to all or part of the Service.(YouTube Terms of Service, Community Guidelines Strikes)
(チャンネルがストライクによって制限された場合、他のチャンネルを利用してこれらの制限を回避してはなりません。この禁止に違反することは本契約の重大な違反であり、Googleはお客様のGoogleアカウント、または本サービスの全部または一部へのアクセスを終了させる権利を留保します。)
文化人放送局はメインチャンネル(文化人放送局)が著作権侵害で2度の動画削除を受けて機能が制限された後、メンバー限定のライブを残し、すべてサブチャンネル(文化人放送局2)にライブを移行している。そのことを各番組の冒頭で静止画像で示したり、番組からのお知らせの形で出演者にアナウンスさせたりしている。その行為はYouTube規約上、BAN回避に該当すると解される。
BAN回避に対する違反は「a material breach」とされている。これは「本質的な違反」「重大な違反」という意味で、極めて重い違反行為と規定している。そして、その処罰はアカウント全体もしくは一部のアクセスを禁じる、つまりアカウント全体、あるいは一部が削除対象となるというもの。
このように処罰が重く定められているのは、BAN回避によって本来の制裁を容易にすり抜けられてしまうからである。アカウント所有者(本件では文化人放送局)が著作権侵害などでチャンネル機能を制限され、ライブや新規動画投稿のアップロードを一定期間禁じられても、制限を受けていないサブチャンネルに番組を移せば通常の活動を続けられてしまう。そうなれば、処罰そのものが形骸化し、プラットフォームの管理機能は空洞化、違法な行為は野放しとなる。それを防ぐために極めて重い処罰を科すのは当然のことといえる。
◾️スピード感もって処分決定
著作権侵害の場合は「ストライク制度」が用いられており、90日間で3度の違反があった場合にチャンネル閉鎖となるのが原則である(YouTube Help・Understand copyright strikes)。
著作権侵害はYouTubeのコミュニティガイドラインでの違反であり、BAN回避はYouTubeの利用規約違反と、異なる規約に対する違反。BAN回避はストライク制度とは無縁で、1回の違反で処罰され、その多くはアカウントごと削除されると言われている。
こうした規定と過去の処罰例などを知悉しているのか、文化人放送局では最近は番組冒頭に「YouTubeではチャンネルが消滅する可能性が高いので、ダイヤモンドクラブ無料・有料メンバーに登録してご視聴ください。」(The Q&A・【一般ライブ】9/5 (金) 13:00~13:30 など)との告知をしている。YouTubeで配信している番組が「自分たちのチャンネルが消滅する可能性が高い」と告げるのは極めて異例。それをあえてしているのは、同局が行なっている番組のサブチャンネルへの移行がBAN回避であり、近日中にアカウントごと削除されると予測しているからと思われる。
BAN回避に対する処罰は、事例にもよるが、一般的に著作権侵害の時よりスピード感をもって行われる。今回、当サイトが著作権侵害による2本の動画の削除の申し立てをしたのは8月8日で、実際に削除されたのは8月23日と29日と、2~3週間かかった。このように比較的期間を要するのは著作権者が本当に権利を有しているのか、場合によっては証拠を提出するように求め、侵害した者にも言い分を聞くなど手続きが煩雑であることに加え、法的な評価、解釈が必要となるため、YouTube内の法務関連部署の判断も必要になるからである。
一方で、BAN回避は違反している事実の把握はYouTubeが管理画面からログを確認すれば、チャンネル機能を制限した後に番組が移行しているかどうかは簡単に判別できる。著作権問題の時のように著作権者と著作権侵害者、双方の言い分を聞く必要もない。そのため一般的に数日から1週間程度で結論が出ると言われている。
文化人放送局はチャンネル機能を制限された8月29日(金)からBAN回避の行動を開始しており、その事実を把握し、ログで確認して処分を下すには1週間程度必要と思えば、9月8日(月)からの週に処分が下される可能性はある。YouTubeの本社がある米カリフォルニア州は日本と16時間の時差(9月上旬は米国はサマータイム)があるため、実際に処分が下されるのは日本時間の9月9日(火)以降が有力とみられる。
◾️BAN回避の説明がない不誠実
ここで不思議なのは、なぜ、文化人放送局はこのような重大な違反をして、自らチャンネル閉鎖の危機を招いたのかという点である。著作権侵害が2件あっても90日間、コミュニティガイドラインで定められた違反行為をしなければ、チャンネル閉鎖の危機は回避できたはず。それをわざわざ、一発でチャンネル閉鎖になるような違反をするのは自爆スイッチを押しにいくようなものである。
この点は各種状況に、当サイトがこの問題に当事者として関わったことで得られた独自の情報を加味して考えれば、8月29日の2件目の動画削除がなされた時点では同局幹部はこの規約を知らなかったと推測できる。BAN回避が重大な違反であることを知ったのは9月1日(月)と思われ、知った時には引くに引けない状況となっていたのではないか。あくまでも当サイトの推理であり、そのあたりの詳細な事情は別の機会に譲る。
前述したが、同局では現在、YouTubeのチャンネル閉鎖の可能性が高いとユーザーに厳しい事情を明かしている。それはそれで当然とはいえ、肝心のBAN回避について何の説明もなされていないのは倫理的に問題がある。
なぜなら、2度の著作権侵害でチャンネル機能が大きく制限されていてチャンネル消滅の危機とだけ説明しても、多くのユーザーは(90日間、著作権侵害をしなければ大丈夫じゃないか)と考えても不思議はない。(それなら募っている金銭的な支援をしよう)と考えるかもしれない。
逆に、BAN回避の違反があり、チャンネル消滅はほぼ間違いないという印象を抱いた場合(金銭的な支援は意味がない)と、やめるユーザーも出てくるはず。
公に支援を求めるのであれば関連する事情を全て明らかにして、その上での判断を求めるべきであろう。チャンネル消滅の可能性がそれほどないと言って支援を求めると、あとあと返金の要求なども出てくる可能性があるために「消滅する可能性が高い」と正直に言っているものと思われるが、全ての事情を明らかにしない点は法的にも問題を孕むように思う。
いずれにせよ、9日以降がこの問題の山場となるのは間違いない。当事者として、視聴者や関係する人々に影響が及ばないか注視していく。








