江川紹子さん不勉強が過ぎますよ!刑法の基礎すらご存知ないとは…
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
最新記事 by 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 (全て見る)
- スポーツ紙消滅で競馬界のカオス 須田鷹雄氏提言 - 2024年11月20日
- 見えてこない導入の必要性 分娩費用の保険適用化 - 2024年11月18日
- 検討会で弁護士暴論「産科医は医療安全に前のめり」 - 2024年11月16日
前日に続いて江川紹子さんネタである。静岡新聞のカメラマン水島重慶容疑者が5月21日に静岡県警に54歳の男性会社員の自動車に対するあおり運転を行い、暴行容疑で再逮捕されたことについて、江川紹子氏がツイート。それが刑法の初歩が分かっていない、素人が感覚だけで話すような内容だったのでびっくりさせられた。
■江川紹子氏のツイートの2つの問題点
まずはそのツイートを下記に示そう。
(江川紹子さんのツイート)この記事によれば、容疑の罪名は「暴行罪」とのこと。え、あおり運転って、暴行なの⁈ しかも、前回の逮捕容疑と一連の行為ではないのかな?それを分割して2回逮捕する、というのはどうなのか…。殺人と死体遺棄とかとは違うように思えるのだけど。(江川紹子さんのツイートは以上)
このツイートには2つ問題点がある。
(1)あおり運転を暴行罪としたことに疑問を呈していること
(2)前回の逮捕容疑と一連の行為ではないかと疑問を呈していること
以下説明していこう。
(1)については、あおり運転は暴行罪(刑法208条)であることは間違いない。暴行とは一般に「有形力の不法な行使」であり、暴行罪における暴行は4種に分類される暴行のうち「狭義の暴行」と呼ばれるものである。これは「人の身体に対する有形力の行使」と説明される。そしてそれは直接的な接触とは限らない。「人の身体に向けられたものであれば足り…相手の五官に直接間接に作用して不快ないし苦痛を与える性質のものであることが必要」(条解刑法第2版、p360)とされる。
実際に幅寄せなどの危険な行為が、暴行罪として処罰を受けた例は少なくない(東京高判昭和50年4月15日、東京高判平成16年12月1日等)。江川紹子氏は暴行罪は「人を殴ったり蹴ったりすること」程度の認識だったのかもしれない。ちょっと調べれば分かる話。その程度の知識もないのにジャーナリストを名乗ることに驚きを禁じ得ない。
■観念的競合と併合罪の違いが分かっていますか?
(2)前回の水島重慶容疑者の逮捕容疑は自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)と報じられている。これは沼津市内の交差点で曲がりきれない速度で左折した結果、乗用車を巻き込む事故を起こして男性2人に怪我を負わせた事案である。それに対して今回の逮捕容疑はその事故の前に別の車に対して約700mにわたってあおり行為をしたもの。
2つの事案を1つの行為ではないかと疑問を投げかける江川紹子氏の考えは、2つの事案が観念的競合(刑法54条)の関係にあると考えているのであろう。観念的競合とは1つの行為が2つの罪名に触れる場合である。
具体例を挙げれば、建物の居住者を殺そうと思って放火して殺害した場合、1つの行為(放火)が殺人罪と放火罪にあたる。このような時には観念的競合として、重い方の刑で処罰するというのが刑法54条の趣旨である。1つの行為であるかどうかは「法的評価をはなれ…自然的観察のもとで、行為者の動態が社会見解上1個のものとの評価をうける場合」(最高裁大法廷判決昭和49年5月29日等)とされている。
水島重慶容疑者の場合、事故の前に54歳の会社員の車にあおり運転を行い、その後、交差点にスピード超過の状態で進入して、別の会社員等の車に衝突して事故を起こしており、これは全く別の行為であるのは明らかである。
そうなると2つの事案は併合罪(刑法45条)の関係にあると考えるべき。具体例を挙げると、Aさんを包丁で刺して殺害した後、帰り際にBさんの家に放火した場合と同じで、これを1つの行為と考える者などいないだろう。
■江川紹子さんがジャーナリストを自称できる日本社会…
江川紹子さんは「ツイッターだから軽い気持ちで書いている」と言い訳するのかもしれないが、最低限の知識を持たずに情報発信するのは自らの名前を落とすだけの行為だと僕は思う。
彼女レベルの情報発信者が「ジャーナリスト」を自称し、それなりの収入が得られているであろうことについて、日本社会の未熟さを嘆くべきなのか、それとも寛容さを称賛すべきなのだろうか。