3・11から新型コロナ禍へ続く日台友好「一起抗疫、一起加油 」
葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼
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東日本大震災の発生から9年となる3月11日、台北で東日本大震災の犠牲者を追悼し、同時に台湾の支援に感謝を伝える「追悼報恩会」が開催されました。今年は新型コロナウイルスの影響もあり規模を縮小しての開催となりましたが、台湾側からは台湾日本関係協会の邱義仁会長が参列。恒例のセレモニーは、現在の両国の友好関係の原点を見る思いです。
■3・11 台湾社会が一体となって日本支援
東日本大震災では、台湾から250億円を超える義援金と600トン近くの支援物資が送られました。当時台湾のコンビニエンスストアには支援金専用のアクリル容器がレジ横に設けられ、どの店の容器も紙幣で埋められていました。
テレビでは著名タレントによるチャリティーライブ番組が放送され、視聴者から多くの義援金が集められました。台湾社会は一体となって日本への支援へ動いたのです。
3月11日に合わせて日本台湾交流協会(在台日本大使館の位置付け、追悼報恩会を日本人会とともに主催)のSNSサイトに、9年前の台湾からの支援に「那時收到來自台灣各位溫暖的援助,我們畢生難忘 (あの時,台湾の方たちからいただいた温かい支援を,私たちは永遠に忘れません)」、「謝謝台灣」とメッセージが掲げられたのは当然のことでしょう。
■日本人がかけた言葉「皆、台湾の人が好きだから頑張って」
こうした台湾人の思いに、日本人も草の根レベルで感謝の意を示しました。
2011年8月、私は妻を伴い故郷の京都に戻っていました。夕方、中国語で話しながら散歩している途中、傍らを通り過ぎた初老の男性が振り返り「台湾の方ですか」と尋ねてきました。私が日本語で妻は台湾から来たことを答えると、その男性は妻に対して突然、「ありがとうございます」と言うのです。
そして私に「奥さんが台湾の人なんて最高やな、大事にしなさいよ」と笑顔で言いながら去って行きました。日本語が分からない妻に説明すると、嬉しそうな顔で一言「よかった」。台湾人の伴侶が愛しく、かつ、誇りに思えた瞬間でした。
また、私の知人の台湾人が2011年秋から約半年間、仕事のため東京に駐在していた時のことも紹介しましょう。彼はあるワークショップに参加しました。終了後一人の中年男性がやってきて「台湾の支援にとても感謝している」と伝え、さらに「日本での生活は大変かもしれないが、皆、台湾の人が好きだから頑張って」と言ったそうです。
慣れない海外での仕事や生活に悩み疲れを感じていた彼は「この言葉に思わず感激の涙を流した。本当にありがたかった」と、帰国後、みやげの東京バナナを渡しながら私に語ってくれました。
■日台の災害時の助け合いの歴史
台湾の人たちは、もともと慈善活動やボランティア活動に積極的です。それに加え、日本への支援は1999年9月21日に台湾中部で発生した「921大地震」での日本の対応も影響しています。
この時、日本は国際消防救助隊員145名(各国から派遣された救助隊の規模として最大)を最も早く現地に派遣し救助にあたらせました。これは当時台湾でも大きく報道されています。そのため、3・11での支援を921大地震時の日本の支援に対する「報恩」とする台湾メディアは少なくありませんでした。
日台関係の親密さは、その後の日本からの対応にも現れています。2016年2月の台南地震では宮城県南三陸町から義援金が送られ、2018年の花蓮地震では日本政府は唯一国際緊急援助隊を派遣。民間レベルでも16万人を超す人々が義援金を送るなど積極な支援活動を行いました。これに対し台湾メディアは「日本民眾為台南震災募款 感動台灣人 (日本人の台南地震の募金が台湾人を感動させた)」(大紀元2016年2月8日付け)などと評価しています。
■新型コロナウイルス禍の2020年 合言葉は「一起」と「加油」
本年の3月11日に話を戻しますと、上述の日本台湾交流協会のSNSでの台湾への感謝を示すメッセージに対し、多くのコメントが寄せられました。特に今年は新型コロナウイルス関連のものが多かったのが特徴です。
「台日友好、一起加油 (台日友好、共に頑張ろう)」
「台日友好,一起共度難關 (台日友好、共に難関を越えよう)」
「希望彼此都能借助經驗、共度難關。台灣加油,日本也要加油! (お互い助け合いの経験で、難関を越えられますように。 台湾頑張れ、日本も頑張れ!)」
「一起抗疫、一起加油 (共にウイルスに対抗し、共に頑張ろう)」
「日本台湾一起加油 希望疫情可以早日結束 (日本台湾一緒に頑張れ ウイルスの流行が早く収束しますように)」
ご覧のように「一起 (共に)」「加油 (頑張ろう)」というコメントが多く見受けられました。なお、蔡英文総統もツイッターで追悼のコメントを掲載、地震発生の時間に黙祷しました。
■かつて天を同じくし地を共にした両国 中国発の危難に挑む
日本と台湾の両国はその地理的距離と歴史により共に助け合い近年の自然災害を乗り越えてきました。今は力を合わせ、中国発の世界的災難に立ち向かう時であり、3・11同様、今後の日台関係を決定付ける重要なタイミングなのかもしれません。
最後に2017年7月、元行政院長(首相)で現台北駐日本代表処駐日代表である謝長廷氏が京都を訪問した際の談話の一部を紹介します。
「台灣與日本,一衣帶水,曾經同天共地,有過50多年的共同歷史,如今更是唇齒相依的命運共同體」
台湾と日本は一衣帯水(隣接し、関係が密接)。かつて天を同じくし地を共にし、50年以上共通の歴史を過ごした。今はより一層切っても切れない関係、運命共同体である。