ホリエモン餃子騒動 飲食店の実状を学べ

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 実業家、タレントの堀江貴文氏が9月に広島県の餃子専門店で騒動を起こしたことに関し、当該餃子店の店主のクラウドファンディングのプロジェクトに1100万円を超える支援が集まっている。中小の飲食店が身を削る思いで営業を続けている事情を理解しようとしない堀江氏に対し、人々の心は既に離れているようである。

■餃子騒動 発端はマスクをしていない堀江氏の同行者

餃子を食べたかったらマスクをすればいいのでは?(写真はイメージ)

 堀江氏の餃子店騒動はネットだけでなくテレビでも扱われて大きな騒動となった。堀江氏がyou tubeにアップした動画をもとに経緯を記すと、同氏が広島県を訪れ、合計3人で餃子店に入ろうとした。その際、同行した1人がマスクをしていなかったため、店側は入店を拒否。これに対して堀江氏が、食べる時以外はマスクをしていなければいけないのか、どの状態までマスクをしなければいけないのか確認したところ、店側は「マスクがないと入れない」の一点張りだったという。押し問答が続いた後に、店主らしき人が出てきて、入店させない旨を伝えられたというもの(参照:「マスクをしていないと入れない店」に異議あり!)。

 堀江氏は9月22日に自身のFacebookでこの顛末を明らかにした上で、you tubeでも事情を語った。その際に、店舗が特定できる書き込みであったため、いたずら電話が殺到、店主の夫人も精神的にまいってしまい、営業が続けられなくなった。

 そこで店主はクラウドファンディングのモーションギャラリーで10月24日に「四一餃子 ネット通販で再起をかけます」というプロジェクトを開始。目標金額を300万円としたところ、翌25日には500万円、5日後の10月29日の時点で1100万円を超える支援が集まった。

 これに対して堀江氏は10月27日に自身のツイッターで「わたしは彼の嘘で相当なダメージを負いました」「私が怒鳴ったことにされて悪者にされて、金儲けのネタにされてさらに居た堪れない思いなんですが。。。」などとツイートしている。

■「押し問答」は業務妨害罪の可能性も

 両者の言い分は細かい点で食い違いがあるようだが、問題は堀江氏が店側に入店した場合のマスクの着用の程度を問い続けたことである。3人のうち1人はマスクをしていなかったのであるから、3人で入店することはできない。そうすると、中でどの程度着用するのか聞く意味はない。もし、聞きたいのならマスクをしていない1人を外で待たせるなどの事情を先に説明しなければいけないだろう。

 入店できない状況であることがはっきりしている、つまり客ではないのに、相手側に入店した場合の状況を問い続け「押し問答」(堀江氏)になるということは、店舗にすれば業務を妨害されていると判断したくなるであろう。昼食時の忙しい時間帯に店員が入店できない人間を相手に延々と話の相手をすることは、店舗の円滑な業務を妨げているのは間違いない。

 その後、SNSを使い、店舗を特定できるような形で情報を発信すれば、堀江氏に肩入れする人間が迷惑電話をかけたり、ネットで罵詈雑言を浴びせるなどの行為は十分に予想できる。これは威力業務妨害罪(同234条)が成立するのではないか。

 ちなみに威力業務妨害罪は「結果の発生を必要とせず、業務を妨害するに足りる行為があることで足りる」(最判昭和28年1月30日)。この場合、実際にそのような状況になって営業が続けられなくなり店舗を閉めているから、妨害行為の要件は満たしていると考えられる。

■売り上げの10%にも満たない純益 身を削って営業する飲食店

中小の飲食店はどこも身を削る思いで経営している(写真はイメージ)

 堀江氏は自身でもステーキを扱う飲食店の経営をしているようであるが、彼自身、中小の飲食店の実状が分かっているとは到底思えない。僕はFoodist Mediaという媒体で飲食店オーナーに数多く取材をしており、彼らの経営状況はある程度分かっている。

 一般的に売り上げに占める純益は10%にも満たない。たとえば1時間で1万円の売り上げがあったとして、利益になるのは1000円もいかない程度である。僕が取材した繁盛店のオーナーはクレジットカードを導入しない理由を「マージンの3~4%が痛い」と説明した。仮に3%だとしたら、1時間1万円の売り上げがあったとしても、最大300円を抜かれてしまい、純益は700円に圧縮される。価格に転嫁したら、つまり値上げをしたらすぐに客足は止まるから、それはできない。

 それぐらいギリギリの状態で中小の店舗は経営をしているのである。件の餃子店のアルバイトが時給1000円で働いているとしよう。堀江氏との押し問答が仮に6分かかったとしたら、店にとって100円分の損失になると言っていい。純益はさらに600円に減る。

 このような計算も「お客さんが来てくれたら」という前提であり、このご時世にマスクをしないで客を入れれば、多くの客が逃げてしまうだろう。そうした事情を堀江氏は全く理解していないように思える。もし、理解していれば、入れないことが分かっている店の店員相手に延々と議論を吹っかけるようなことはできないはず。

■裸の王様になりつつある堀江氏

 堀江氏に対して、タレントの榊原郁恵さんはテレビで厳しいコメントをし、さらに堀江氏と親交があるとされる西村博之(ひろゆき)氏は今回のクラウドファンディングで、支援者に加わったことを明らかにした。

 まだ取り巻きは存在するようであるが、堀江氏はいい加減、裸の王様になりつつあることを認識した方がいい。そして、餃子店の店主には堀江氏を刑事告訴することを勧めたい。

"ホリエモン餃子騒動 飲食店の実状を学べ"に2件のコメントがあります

  1. ケン より:

    会社を経営している感覚だと、店舗側に「ん?」って感じました。マスク着用を義務付けるなら、お店にマスクを用意しとくべきだと思うんだけど…。自分なら、そうする。マスクを忘れる方もいるだろうし…。「マスクありません」「じゃあこれをどうぞ(にっこり)」のやり取りの方が、好感が持てるよね。この好感度って、単価に転嫁出来るんだけどなぁ。頑なに「お店のルール」を守って、感情的なしこりを残すのは、営業的にはマイナスじゃないかな。まぁ、何れにしても堀江さんの行動は論外だと思いますけどね。

    1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

      >>ケン様

       コメントをありがとうございます。

      >>この好感度って、単価に転嫁出来るんだけどなぁ。

       実際の経営の立場からのご意見、なるほどと思わされる部分があります。そういうことでトラブルを回避できた可能性があるのは確かですね。

       堀江氏の件では、マスクをしていなかった女性は指摘されてすぐにマスクを取り出して着用したとも言われているようです。堀江氏の行動を論外という部分、その通りだと思います。彼は矯正施設に入る前後で随分と人間が変わったなと感じさせられます。批判は多いですが、ある種の才能はある方だと思うので残念です。

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