24年後もサバイバー 中島瑞果(6)票を戻せ
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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サバイバー日本版に出場した中島(現姓・丸山)瑞果氏の連載第6回をお届けする。2チーム合流後、10人中6人を占めて数的優位に立った旧デレブチームは、若者が多い旧ベケウチームのメンバーを次々と追放していった。残るは1人となった時に、中島氏が動く。
◾️退屈な展開か…
4人で合流した旧ベケウチームで、最初に追放されたのは高波邦行氏(当時23歳=ボクサー志望)であった。同氏は追放免除ゲームの途中で負傷し、これ以上ゲームを続行することは難しいということで、旧デレブチームが票を集中させたためである(24年後もサバイバー 中島瑞果(5)君のための追放)。
その後、渋谷美奈氏(当時19歳=短大生)がドクターストップで島を離れた。続いて、運動能力が最も高く、旧デレブから警戒されていた平井琢氏(当時26歳=リバーガイド)が追放された(参照・”ごきげんよう” 23年後のサバイバー 平井琢(3))。
こうして旧ベケウは若松泰恵氏(当時27歳=自営業手伝い)1人を残すのみとなった。若松氏は、追放免除ゲームに勝たなければ生き残れないと自覚しており、実際、当サイトの取材に対して「小野(郷司、当時32歳=会社経営)さんから『ワカがどうしても残りたいなら、チャレンジを勝つしかないね』と言われていましたし、私が勝てた場合は和尚(吉野大輔氏、当時30歳=僧侶)を落とすという話でした。でも、和尚が勝ってしまい、その場で小野さんから『ワカ、ごめんね』と言われました(笑)」(参照・23年後のサバイバー 若松泰恵(4) 友情の舞台裏)と答えている。
若松氏が言うようにこの大事な追放免除ゲーム(綱渡り)を勝ったのは吉野氏で、旧ベケウの最後の1人である若松氏に旧デレブの6票のほとんどが集まる展開が予想された。テレビ的には先が見えてしまう、やや退屈な展開ではある。
◾️松尾純子氏との微妙な関係
ところが、その”予定調和”的結末の間隙を突いて中島氏が松尾純子氏(当時36歳=レストランプロデューサー)落としを計画する。カメラの前で中島氏は語った。
「私的には、かなり目の上のたんこぶの姐やん(松尾氏)を落としたいというのが、最初っからあったので」。
事実、中島氏はチーム戦の時から松尾氏落としを考えていたという。「私たちはゲームも弱く、いつも最下位付近で争っていましたし、本当に仲良しでした」と良好な関係ではあったとするものの、最初から仲が良かったわけではない。松尾氏は当初から桑野京美氏(当時40歳=主婦)や、岡部泰三氏(当時26歳=ボーイスカウト元日本代表)落としを積極的に仕掛けていた。優勝を目指していたせいか人間関係には非常に神経質になっていると、中島氏には感じられたようである。
「タイゾー(岡部氏)の時もそうでしたし、エリちゃん(蓑島恵利氏、当時26歳=ダイビングインストラクター)と話をしなければ、『あまり話をしてくれない。私のこと嫌いなのかな』とか、1日中、そういう話でした。それがちょっと嫌だなというのはあって、落とそうというのは考えていました。」
しかし、岡部氏を追放してからはチーム戦で2連勝したために結局、追放審議会の機会がないまま合流に至り、合流後は旧デレブで結束して少数派の旧ベケウを追放していったためにチャンスは訪れなかった。そして、”予定調和”的結末、若松氏落としと思われる追放審議会で松尾氏が油断している隙をついて”クーデター”を決行しようと考えたのである。
カメラの前では、こうも語っている。「今だったら姉さんも、もう、だって若松しかいない訳だから、落とすのは。安心してるんじゃないかと。小野っちを説得できれば、お父ちゃん(黒岩敦夫氏、当時56歳=元漁師)も大丈夫と。あとは若松さん。若松さんに『ここはあなたを残す』と。残す代わりに1票くれないか。そういう話をすれば、ワカに関しては、今は残る為だったら、うん、1票ぐらい。『あなたには入れさせないわよ』っていうような話をすれば、いけるんじゃないかと」。
合流する頃にはかなり仲が良くなっていたようであるが、2人はともに優勝を強く望んでおり、優勝のためにはどこかで相手を追放しないといけないという認識を互いに有していたのは間違いない。中島氏は「姐やんは、私が名前を書いて落としたかった」と言う。お互いにそこは勝負・ゲームということで理解し合える自信を持っているようであった。両者の関係はスポーツマン同士のライバル関係に近いと思われる。お互いに相手を認め合い、相手を倒すなら自分の手で、という感覚か。
また、『キャラ被り』という点も見逃せない。「私が当初想定していたサバイバーでのポジションは、姐やんの立ち位置に近いものでした。自分自身、それまで姐やんから毒気を抜いたような立ち居振る舞いで生きてきましたから。サバイバーでは仲は良かったのですが、同時に、自分が目指していたポジションを姐やんに取られていたのも事実です。だから、『目の上のたんこぶ』でもあるわけです」と中島氏は説明する。
このように、2人の関係は複雑な要素が絡み合った関係であったのは間違いない。
◾️予想し得ない展開
中島氏はまず、撮影クルーに、今から松尾氏落としの話をする、と声をかけてカメラを構えさせ、小野氏と作業をするふりをして密談に入った。制作担当者、スタッフが何を欲しているか、芸能人である中島氏にはよくわかっていた。「テレビにはこれが必要なんです」と言う。
「そもそも小野っちと姐やんがお互いを落とそうとしているのは、周囲には『丸見え』の状態でした。そこで小野さんに『順当(に若松氏を落とす)じゃもったいないよね、姐やん落とすチャンスだよね』と話しました。小野さんは最初は難色を示していましたが最終的には『みずっちがやりたいなら、いいんじゃない』と話に乗ってきました。」
密談が終盤にかかった時に事件が起きる。若松氏が「何の話をしているの?」といきなり入ってきたのである。そこで2人は松尾氏追放の話をして、若松氏を引き入れて5票としようと試みたのである。若松氏は「わかった」と言って、その場を離れた。そこまでの一部始終がカメラの前で行われ、放送されている。
「その後、すぐに小野っちがお父ちゃん(黒岩氏)とエリちゃん(蓑島氏)に確認して2票をまとめました」(中島氏)と、描いたシナリオはほぼ現実化すると思われた。
ところが、ここで若松氏が予想もしない行動に出る。海辺で貝を採っていた松尾氏と蓑島氏のもとに行き、聞いたばかりの松尾氏追放の話をしたのである。若松氏はその時のことを、当サイトの取材に以下のように答えている。
「…ベケウが順々に消され、タク(平井琢氏)が消され、最後に私では予想通りで面白くないじゃないですか。それで番組を面白くするように、そんな計画があったよみたいなシナリオで盛り上げようとしているのかなと考えていました。松尾さんを落とす話を嘘だと思っていましたから、松尾さんに、こんな話があるんだけど『これ、ネタでしょ?』『(番組サイドが)撮れ高ほしいんでしょ?』みたいな感じで話した記憶があります。」
また、「もちろん、若松氏の中には『私が本当に落としたいのは松尾さんではありませんでした。小野さんです。松尾さんと組んで小野さんを落とす方がいい』という考えもあった。」という事情もある(以上、参照・23年後のサバイバー 若松泰恵(4) 友情の舞台裏)。
◾️「鬼のような形相で…」
松尾氏追放の準備は整い「審議会までのんびり過ごそう」と、ワクワクして待っていた中島氏のもとへ松尾氏が歩いてきた。
「姐やんが鬼のような形相で『みずっち!』と迫ってきました。私は訳が分からず『どしたー?』と軽く聞いたのですが、『ワカが、今、みずっちと小野から私を落とす話をされたと言ってきたけど、マジ?』と言うわけです。もう、こちらが『マジ?』と言いたい気分でした。『ワカ、何を考えてるんだ!』と。ただ、顔には出せません。その前にこの状況をなんとか抜け出す必要があります。とっさに『ワカ落としの話をしていたら、本人が来たから瞬時に話を変えた』と釈明しました。」
中島氏の話を聞いた松尾氏は「やっぱり小野が言い出したな、あの野郎」と言って去っていったという。作戦が失敗したことを悟った中島氏は、すぐに小野氏のところに向かった。
「走って小野っちのところに行き『バレてる、バレてる、姐やんにバレてるから、(黒岩氏と蓑島氏の)票を戻して。姐やんすぐ来るから』とだけ言って、その場を離れました。全くの偶然ですが小野っちの(松尾氏に対する)説明が、私が姐やんにした説明と同じだったために(松尾氏から)信用されたようでした。」
こうして追放審議会直前のドタバタの結果、若松氏に5票が集まり追放となった。松尾氏も「自分が生き残るために、ごめんなさい、あなた(若松氏)を選びました。あなたの仇は絶対、私がとります」と言って若松氏の名を書いて投票している。
◾️無人島を舞台に交錯する思い
中島氏は「もっとワカと仲良くなっていたら、信頼関係が築けていたら、姐やんを落とせたのかなと思います。当時はワカに対して『1位を取りに来てるのに何を考えているんだ』とイライラしたものです。それと、今にして思えば、ワカはTBSのスタッフに言われて来たのかな、という気もします。本当に忍者のようにスルスルっと、突然来ましたから」と振り返る。
この点を若松氏にメールで問い合わせると、以下のような回答が寄せられた。
「小野さんとミズッチが話しているところになんで行ったのか…全く覚えてないです! スタッフから『あそこで何か話してるっぽくない?』というような事を言われて行ったのか、たまたま歩いてたら2人を見つけて近寄ったのか? 今となっては全然思い出せないのですが、ベケウは本当に若いチームでよく言えば自由、悪く言えばチームとしての統率みたいなものがなく、密談してるっぽいところには行かない、みたいな大人の考えはなかったと思います。少なくとも私にはなかったので、偶然にせよ、スタッフから行ってこいと言われたからにせよ、2人が喋ってるところに無邪気に近づいたのは間違いないですね。」
幻の松尾氏追放劇から24年の月日が流れた。パラオの無人島で若者たちの様々な感情が交錯したが、それはあくまでもゲーム上での出来事に過ぎない。5年後に行われた中島氏の結婚式には若松氏らも出席し、交流を深めた。
「あんなスリリングなゲームはありません。とても愉しかったです。」
ほろ苦い出来事も、24年の星霜を経て中島氏には忘れ得ぬ思い出となっているようである。
24年後もサバイバー 中島瑞果(7)味方だけの島で に続く







