ミャンマー混乱で女子留学生の嘆き

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 ミャンマー国軍が2月1日、アウンサンスーチーさんらを拘束して、実権を掌握した。この事態に日本にいるミャンマーからの留学生にも動揺が走っている。日本に留学中のあるミャンマー人女子学生は2日、悲しそうな表情で母国について話した。

■軍の行動後、電話もネットも通じない

 ミャンマー軍はアウンサンスーチーさんが率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝した2020年11月の総選挙の結果が不正によるものだとして、国家の幹部を拘束し、全土に非常事態を宣言した。

 僕が教える学校の留学生の中にミャンマー人も少なくない。軍の実権掌握から一夜明けた2日、ミャンマーから来た女子留学生Sさんは傍目から見ても分かるぐらい落ち込んだ様子であった。「君のウチは大丈夫だった?」と聞くと、「大丈夫でした」との答え。

 彼女は続けた。「昨日は電話もインターネットも全く通じなくなったんです。軍が全て外部と通信ができないようにしたのです。私の父は、衛星経由のネットを利用したらしく、ようやくつながることができました。『みんな無事だ』と言ってました」。

■「みんなスーチーさんを信頼しています」

国連大学の前に集まったミャンマー人(NHK画面から)

 彼女はかなり日本語がうまく、ミャンマーの問題をよく僕に話しかけてきてくれていた。国際的に問題となっているロヒンギャの難民の問題についても「ロヒンギャの難民といっても、ミャンマー人がどれぐらいいるか分かりません。難民と認めてもらうため、ミャンマー人ではない人が『ロヒンギャだ』と言って日本にたくさん来ています。ミャンマー人はみんな知っています」と、日本では報道されないような話をしてくれたこともあった。

 今回の軍の行動に対しては、1日に国連大学(東京都渋谷区)の前にミャンマー人の団体らが1000人ほど集まり(NHK)、アウンサンスーチーさんの写真を掲げ、抗議の意思を示している。Sさんはそれには参加しなかったようだが、気持ちは同じようである。

 「みんな、スーチーさんを信頼しています。1988年の時(いわゆる8888民主化運動)は、学生は外に出たため、たくさん殺されました。だから今回は、みんな家の中にいます。危ないのは分かっていますから」。

 彼女の話からすると、ミャンマーの国民も1988年のことがあるから、慎重に構えているのかもしれない。

 僕が何ができるわけでもなく、彼女には「日本で政治活動をする、しないは君の自由だけど、くれぐれも気をつけてください」とだけ言っておいた。

■ミャンマーに自由と平和が訪れんことを

 僕はこれまでミャンマー人の留学生を何人か教えてきたが、例外なく授業態度はよく勤勉であった。以前、僕が担当していた留学生のクラスでテストで1番になったのも、別のミャンマー人女子学生だった。

 テストで1番を祝って簡単な表彰式を行い、国歌の「ガバ・マ・チェ」を流したところ、ボロボロと涙を流した話は以前、紹介した(参照:ミャンマー女子留学生の涙 東京で流れたガバ・マ・チェ)。

 日本にとってミャンマーはこれから繋がりを深くしていきたい国の1つ。実際に多くの日本企業が進出しているし、また、日本への留学生も多い。今は、一刻も早くミャンマーに自由と平和が訪れることを願うのみである。

"ミャンマー混乱で女子留学生の嘆き"に2件のコメントがあります

  1. MR.CB より:

    》》ジャーナリスト松田様

    私の知人にもミャンマーの人が何人かいますが、穏やかで笑顔が優しい人たちばかりです。少なくとも、自ら人と争うようなタイプの人は見当たりません。
    最近は日本をはじめとする海外からの企業も多くミャンマーに進出して、順調に民主主義の国へと変わっていくものだと思っていました。もちろん国家の発展には利権がつきものなので、いくらか心配もありました。ですがクーデターで一夜にして混乱するとは…。やはり問題は複雑で根深いんですね。
    バイデン政権ははっきりとクーデターを批判しましたけど、中国やロシアは慎重な構えです。
    特に中国にとっては国益や安全保障の観点から、ミャンマーで急速に民主主義が進むことに懸念を持っているのでしょう。かつての日本もそうでありましたが、いかなる世でも小国は大国の思惑に翻弄されます。国際法が他国の内政に干渉を認めなくても、現実では大国が至るところで他国の平和を犯しています。
    我が国だって、コロナ禍で医療体制が混乱しています。もしどこかの国から大都市がミサイル攻撃を受けた場合には、医療崩壊どころでは済まないでしょう。私たちの暮らす先進国・日本でさえも、一夜にして国家の平和が一変する危険を含んでいるのかも知れませんね。

    1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

      >>MR.CB様

       コメントをありがとうございます。

       ミャンマーは前世紀から国軍の行動で揉めていますね。そういう性格なのでしょう、軍隊は。

       スーチーさんもロヒンギャの問題ではかなり国際的にも批判されていたようですが、学生の話を聞くとスーチーさんへの支持は根強いものがあると感じさせられます。自由という普遍的な価値観から考えれば、今回のクーデターは許されないでしょう。中国、ロシアが慎重に構えているのは、そうした価値観より国益が第一という考えはその通りだと思います。

       大国の思惑の中でミャンマーが必要以上に揺れるのは避けてほしいと思います。もちろん、選挙結果を認めない軍の行動は個人的に全く支持できません。

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