謝謝安倍先生 台湾の涙「温かさ忘れない」

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葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。

 安倍晋三元首相の訃報は、台湾の人々にも大きな衝撃を与えました。これまで台湾の最も良き理解者の1人でもあった政治家の死に、台湾政界はもちろん、一般庶民の間でも死を悼む声が広がりました。

■一貫して台湾支持の姿勢

台湾の朝刊各紙は1面で安倍元首相の死を伝えた(撮影・葛西健二)

 安倍氏が凶弾に斃れた7月8日、私は撮影現場でそのニュースを知りました。在台邦人として、台湾で最も親しまれた政治家の突然の死には平静ではいられません。撮影現場(ほとんどが台湾人)でも衝撃が走り、皆、ショックを隠せないようでした。

 安倍氏は台湾の政界と友好的な関係を維持し、生前、三回台湾を訪問しています。1997年に自民党青年局長として、2010年、2011年には超党派議員連盟「日華議員懇談会」のメンバーと共に訪台、総統府で馬英九氏と会談しています。

 第2次政権時の参議院特別委員会では「台湾は基本的価値観を共有するパートナーであり、大切な友人」と述べる等、外交政策において「大切な友人」である台湾を重視してきました。

 安倍氏は首相退任後も台湾を支持する姿勢を示し続けています。2021年12月には台湾のシンクタンク主催の講演会で「台湾有事は日本有事。すなわち日米同盟の有事でもある」と発言。また今年3月に蔡英文総統と行ったオンライン会談でも同様の見解を示し、日台関係の強化重視の姿勢を示しました。

 安倍氏の台湾支援は政治面にとどまりません。昨年4月には中国の輸入停止により困難に直面した台湾のパイナップル農家を応援する為、台湾産パイナップルを手にした自身の写真をSNSに投稿、さらに同年6月には台湾に対する日本政府からの新型コロナワクチン緊急提供に際し、安倍氏が重要な役割を果たしました。

 このように安倍氏は価値観を共有する信頼すべき隣人として台湾を最重要視してきました。安倍氏銃撃の報道直後、蔡英文総統がSNSにて回復を願うメッセージを発信したのは当然でしょう(蔡英文 FaceBookページ)。その後安倍氏の死去を受け、総統は「認識十多年的老朋友,也是台灣最堅定的友人  (十年来の友人、そして台湾と最も固い絆で結ばれていた)」とし、安倍氏の訃報に「感到非常痛心遺憾 (大変心を痛め、残念に思っている)」と深い哀悼の意を表しました。

■安倍氏との別れ「皆が悲しい」

 蔡総統は、さらに2018年に台湾東部花蓮で起きた地震では安倍氏が自身のSNSに「台湾加油 (台湾頑張れ)」と励ましの言葉を毛筆で描いたメッセージを投稿したこと、台湾産パイナップルを支援してくれたこと、そして安倍氏の後押しで「友情疫苗 (友情のワクチン)」が届けられたこと、3月のオンライン会談上で「台湾有事は日本有事」と台湾支持を示したことに「非常感動 (非常に感動した)」ことを挙げ、安倍氏が「相對深化台日關係的貢獻 (台日関係の強化に貢献)」したことに感謝の念を示すとともに、「台灣與日本也會繼續相互扶持,向國際社會證明,「善的循環」不畏暴力,「善的循環」不會止息。(台湾と日本はこれからも手を取り合って支え合い、「善の循環」は暴力を恐れずその循環が止まることも無い、ということを国際社会に証明していく)」と述べました(蔡英文 FaceBookページ)。

台湾の政府機関では半旗が掲げられた(台北市文山区役所、撮影・葛西健二)

 7月11日、政府機関や公立学校では安倍氏への弔意を表すため半旗が掲げられました。同日蔡総統、蘇貞昌行政院長(首相)、游錫堃立法院長(国会議長)、陳時中衛生福利部長(保健相)は日本台湾交流協会(日本の対台湾窓口機関)台北事務所を弔問に訪れ、献花を行いました。

 蔡総統は献花後の談話にて、安倍氏が近日中の台湾訪問を承諾したところであったこと、そして多くの民間の人々が、安倍氏と共にイベントやプロジェクトを進めていく計画中であったことを明かし、「這些都代表安倍前首相跟臺灣的互動是多麼密切,我們一直都是並肩前進的好夥伴 (これらは安倍元首相と台湾の交流がどれほど密接だったかを表している、我々は肩を並べて進む良きパートナーだった)」と安倍氏を評価、安倍氏との別れには「大家都非常難過與不捨 (皆がとても悲しく別れ惜しんでいる)」と述べました(中華民國総統府)。

■台湾人からの哀悼の意

 安倍氏死去の突然の訃報には台湾の人々も驚きと悲しみに包まれました。台湾メディアは安倍氏が台湾産パイナップルを手に笑顔を見せる写真や、「台湾加油」の色紙を手にカメラを見つめる画像を掲載、ワクチン提供に際し安倍氏の助力があったことや台湾を友人と表現したこと等を紹介。「最友台 (台湾と最も仲の良い)」「最挺台 (台湾を最も強く支持していた)」日本の首相、そして「台灣好朋友 (台湾の親友)」の突然の別れを大きく報じました(TVBS新聞 三立新聞 中国時報 聯合報)。

 また、安倍氏死去の8日以降、SNSの日本台湾交流協会のページには5000件近い追悼のメッセージが寄せられました(以下コメント抜粋 日本台湾交流協会 FaceBookページ)。

謝謝安倍前首相,我們永遠記得他的溫暖,也希望日本的朋友們平安

(安倍さんありがとう、あなたの温かさを忘れない。そしてどうか日本の人々の心に安らぎが訪れますよう。)

願安倍先生安息,謝謝他為日本、為台灣付出過的一切。

日本有事,就是台灣有事,願日本社會能走過這次的打擊,

作為台灣人,我們會持續為日本祈福,與你們同在。

(安倍さんに安息を、日本そして台湾の為に尽力してくれたことに感謝します。日本の有事は台湾の有事、日本が受けたこの衝撃に、我々は台湾人として祈りを捧げます。我々はあなた達と共にいます。)

您對台灣的幫助與疼惜是台灣最珍貴的友誼,

我們會延續您的精神,繼續守護台灣、守護民主連線。

(あなたの台湾への尽力、それは台湾に与えられた最も大切な友情。我々はあなたの精神を引き継ぎ、台湾と民主主義を護っていきます。)

悼念台灣的摯友 

感謝安倍前首相一生對促進台日關係的貢獻

(台湾の真の友に哀悼の意を表します。安倍元首相が生涯をかけて行った台日関係促進の貢献に感謝。)

我們永遠懷念他的溫暖,

記得他為我們寫下的「台灣加油」,

並繼續為台日關係努力。

(あなたの温かさを決して忘れない、あなたは我々の為に「台湾頑張れ」のメッセージをくれた、台日関係継続に努力を重ねてくださった。)

感謝一路上多次的情義相挺

在最需要的時候總能收到滿滿的溫暖

台日友好這條路

我們會一起延續下去

(情を以ていつも我々を助けてくれた。最も必要な時にとてつもない温かさを与えてくれた。我々はこれからも台日友好の道を歩んで行く。)

■1万2000人超が弔問記帳会場へ

日本台湾交流協会台北事務所前に設置されたメッセージボード(撮影・葛西健二)

 日本台湾交流協会台北事務所前には有志らによってメッセージボードが設置されました。ボードには一面に哀悼と感謝の言葉が書き込まれていました。ボードは書き込まれたメッセージで余白がなくなり、付箋にメッセージを書いて貼り付けられていくほどでした。

 同協会は7月11日から17日まで台北事務所と高雄事務所に弔問記帳の会場を設営。会場には7日間で1万2000人を超える人々が安倍氏を悼み弔問に訪れました。

 日本と台湾の関係強化に貢献し、その人柄から台湾の人々にも愛された安倍晋三氏、突然の別れは台湾でも大きな衝撃と深い悲しみをもたらしました。

 安倍氏が台湾でどれだけ信頼され、愛されているか、銃撃から10日経ち、あらためて実感させられています。在台邦人の1人として、その死を悼みます。

 ご冥福をお祈りします。

合掌

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