江川紹子氏の擁護に疑問 アエラやっぱり犯罪?

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 ジャーナリストの江川紹子氏が20日公開したYahoo!のコラムで、ワクチン接種予約に関するAERAdot.編集部と毎日新聞の取材方法について擁護した。3人の法曹に話を聞き、いずれも犯罪が成立しないとすることを根拠にしているが、その擁護論には致命的な欠陥があるように見える。

■3人の法曹が「犯罪は成立しない」

問題のコラムはヤフー内にある「江川紹子の『あれやこれや』」に掲載された

 AERAdot.編集部が、虚偽のデータを入力して新型コロナウイルスワクチン大規模接種センターで接種の予約を取り、システムの欠陥を指摘した点について、当サイトでは業務妨害罪(刑法233条後段)、もしくは電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2第1項)が成立する可能性があるとした記事を公開した(参照:アエラの犯罪?虚偽情報入力しワクチン接種予約)。

 これに対して江川紹子氏は20日、自身のコラム「あれやこれや」の中で「『ワクチン予約システムに欠陥』~この報道は犯罪?不適切?~メディアへの抗議や批判を検証する」を公開。朝日新聞出版と毎日新聞を全面的に擁護、犯罪にはあたらないと主張した。

 江川氏の根拠は3人の法曹が犯罪には当たらないとしている点を根拠とする。この3人の説明は以下の通り。

★落合洋司弁護士(元東京地検検事):目的の正当性と実質的な違法性を考えれば、最終的には嫌疑不十分(筆者註:電磁的記録不正作出及び供用罪=刑法161条の2)。「ギリギリ許容される取材活動」と判断され、処罰の対象にはならないでしょう

★郷原信郎弁護士(元東京地検検事):(このような取材行為は、なんらかの罪に当たるんでしょうか?との質問に)当たらないでしょうね

★若狭勝弁護士(元東京地検公安部長):(報道目的という)正当な目的がありますから。偽計業務妨害というのも、報道のための調査で行ったことであれば、犯意、つまり妨害の意図はないと考えられます

 落合弁護士は形式的には犯罪に当たるかもしれないとし、若狭弁護士は構成要件的故意に欠ける、もしくは正当行為で違法性が阻却されると言っているようであるから、微妙な判断ではある。それなのに、法律のプロが犯罪不成立と口を揃えて言っているように読める書き方はどうなのかと思うが、それは措くとする。ここには法的な解釈をする上で重大な欠陥が含まれているように思える。

■江川紹子氏の質問に隠された問題点

 落合弁護士のコメントの部分については、江川氏の質問はこのようにされている。「報道するための取材行為が、『人の事務処理を誤らせる目的』になるのか?!」。赤い太文字の部分をよく覚えておいていただきたい。

 続いて郷原弁護士。江川氏の質問は「このような取材行為は、なんらかの罪に当たるんでしょうか?」である。

 最後の若狭弁護士には質問事項は明示されていないが、「報道のための調査で行ったことであれば」という回答から、虚偽のデータを入力した取材方法について聞いているのは明らかである。

 もう、お気づきであろう。江川紹子氏は3人の法曹に「虚偽のデータを入力し、予約を取る取材行為は犯罪か」と聞いているのである。取材方法に限定して書いているのであり、その取材で得られたセキュリティーホールを突き、入力した具体的なデータを明らかにして予約を取る方法を報じたことに関しては何も聞いていない。

■業務妨害罪は危険が生じれば成立

写真はイメージ

 両社が虚偽のデータ入力で予約が可能かどうかを実際に試した記事を掲載したことで、模倣犯が出ることは予想される。AERAdot.編集部は具体的な数字を入れて紹介しており、記事を目にした者は容易に同じ行為ができる。

 それによって接種券番号を持つ、本来予約を取るべき高齢者の予約枠が奪われる可能性がある。「実際にそんな被害は出ていない」と考える人もいるかもしれないが、それは業務妨害罪には関係がない。

 業務妨害罪は「現実に業務遂行が妨害されることは必要でなく、これらに対する妨害の結果を発生させるおそれのある行為があれば足りると解されており、本罪も抽象的危険犯である(大判昭和11・5・7集15-573…)(条解刑法第2版 前田雅英ら p655 弘文堂)。

 そうなると実際に虚偽のデータを入力し、資格がないのに予約を取り、その具体的な方法を新聞やインターネットで公開することは、ワクチン接種の妨害の結果を発生させるおそれのある行為と考えられ、業務妨害罪の成立する可能性はある。江川氏は3人の法曹に話を聞くのであれば、以下の2点を確かめなければならない。

①取材方法は犯罪が成立するか

②その方法を公開することで犯罪が成立するか

 ①だけを聞いて「朝日も毎日も犯罪は成立しない」と吹聴するのは、自らの法の無知を公にする行為に等しい。

■業務妨害罪の未必の故意は認定可能

 加藤勝信官房長官は18日、虚偽のデータを入力して予約を取るような行為について「悪質な行為については法的措置も排除しない。」と断言した。これは朝日新聞出版と毎日新聞の報道は、悪質かつ、法的な措置の対象となる行為を誘発する可能性があると、政府見解を示したことに他ならない。そのような法的措置の対象となる行為を誘発するのは、取材目的で虚偽のデータ入力で予約を取ることではなく、虚偽のデータ入力で予約が取れる手口を公表することであるのは、子供でも分かる理屈である。

 朝・毎両社は具体的な方法については明らかにせず、重大なセキュリティーホールが存在することを指摘するにとどめ、模倣犯が出ないようにする報道も可能であったはず。わざわざ模倣犯が出やすいように具体的なデータを示したということは、「模倣犯が出て、業務が妨害されるかもしれない、そうなっても仕方がない」という未必の故意は認められるであろう。

 自身が虚偽データを入力して予約を取った行為で業務を妨害する故意の認定は難しくても、報道を含めれば故意は認められ得る。江川紹子氏にはそこまで考えて取材をした上で、自らの主張をすべき。結論を言えば、アエラも毎日新聞も”クロ”であると思う。

"江川紹子氏の擁護に疑問 アエラやっぱり犯罪?"に5件のコメントがあります

  1. MR.CB より:

    》》ジャーナリスト松田様

    江川氏は3人の法曹に話を聞くのであれば、以下の2点を確かめなければならない。

    ①取材方法は犯罪が成立するか

    ②その方法を公開することで犯罪が成立するか

     ①だけを聞いて「朝日も毎日も犯罪は成立しない」と吹聴するのは、自らの法の無知を公にする行為に等しい。

    まさに上記の問題提起を無視しての偏った主張は江川氏や朝日、毎日の十八番です。②の「方法の公開」が持つ危険性を、読み手の自己責任とすると言うものでしょう。そこにはメディアのモラルなど微塵もありません。
    株取引についての証券アナリストの意見や評価とは違います。「個々の株取引については自己責任でお願いします」のエクスキューズと同様に今回のワクチン接種を考えているとすれば、それはもう犯罪であると思います。

  2. 通りすがり より:

    そもそも今回見解を求めた法曹が現政権による行政に反抗的なバイアスを持った者に限定されている時点で、江川氏の期待通りの回答を発していることは察するに余りある。
    仲間内の馴れ合いに過ぎない。

  3. ぷんぷん丸 より:

    まぁ目的が、現政権への嫌がらせですので、ね。
    どやぁ!、ってやっちまったのでしょう。
    想像力の欠如。
    あまり難しいことは、処理できないおつむと思われ。

    朝日なり毎日なり、環境相と同じ。影響力のある無能者に属してます。
    厄介ですなぁ。

  4. 月の桂 より:

    いつもながら、清々しい記事です。
    法律の根拠を示した松田さんの記事スタイルを高く評価します。
    江川さんは、ジャーナリストを名乗るのをお止めになった方がよろしいですね。
    まっくろ黒助ですから。
    あ、これは誹謗中傷? 固有名詞書いてませんからセーフかな(笑)

    ***
    松田さん、私への返信は不要です。
    貴重な時間は取材にお使い下さい。

  5. 匿名 より:

    これって、有資格者が実行しても先行して予約した人の予約番号を横取りできるってことですよね?
    その方法を詳らかに公開するのは問題ある行為だと思う。
    分かりやすい記事をありがとうございます。
    全面的に支持します。

月の桂 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です