フジ島田彩夏アナが人権侵害報道 4年以上放置

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 フジテレビ島田彩夏アナ(50)が”冤罪”を訴える元教師を性犯罪をしたと決めつけ、偽造された写真を証拠の1つとする記事を公開している。フジテレビは当サイトからの連絡にも関わらず公開から4年以上放置していた。18日、当サイトの3度目となる質問の送付に対しても、司法と行政の判断を理由に報道及び記事掲載をしている旨を答えた。清水賢治新社長が就任直前に人権の重要性を語ったが、自社ホームページで重大な人権侵害が継続されている現状が改善されない事態となっている。

◾️札幌市の中学教師免職事件

島田彩夏アナ(フジテレビHPから)と同アナ執筆の記事

 問題の記事はFNNプライムオンラインに2020年10月1日公開されたもので、「性暴力を受けた少女は『交際』と信じた  教師のわいせつはなぜ裁かれなかったか」というタイトルが付されている(以下、FNN記事)。執筆者は島田彩夏氏の名が明記され、記事内では実際に取材対象に直接インタビューを行っている写真も掲載されている。記事公開2日前の同年9月29日には同局のイットで同内容の特集記事が放送されている。

 記事やテレビで報じられた内容は、札幌市の中学教師であったXが、1993年に当時中学3年生だった女子生徒(実名で登場、石田郁子氏)にわいせつな行為を行い、中学卒業後も関係が続き、「Xは約5年に渡り石田さんに性暴力をふるい続けた。」とする。石田氏が大学2年の時に関係が終わったものの、被害から20年以上経過してから石田氏は性暴力を受けたものの交際と思わされていたとして、2019年に札幌市とXを相手取り、損害賠償請求を求める訴えを提起。取材の中で、石田氏はフジテレビに写真(以下、当該写真)を提供している。北海道千歳市のオコタンペ湖の展望台で、Xとともに撮影したとするショットで「『教師と交際している』そう思っていた石田さんが教師と撮った写真(高校3年生の頃)」という説明文が付されている(以上、FNN記事から)。

 この事案は当サイトが継続的に公開している札幌市の中学教師が、28年前から教え子に不適切な行為(非違行為)を続けていたとして2021年1月に懲戒免職となり、その後、処分の取消しを求めて審査請求を行い、さらに処分取消しの訴えを起こした事件を扱っている。なお、FNNプライムオンラインで「X」とされた元教師は、当サイトでは鈴木浩という仮名で表記している。(参照・免職教師の叫び(連載全39回)、札幌・元教師の戦い 免職処分取消訴訟)。

 この事案に関しては当サイトでは上記の2つの連載・関連記事群で50本以上の記事を公開し、詳細に事案を伝えている。その中で「X」は石田郁子氏の言う性的な被害はフレームアップであると主張する(参照・復職願う元教員2度目の年越し ワイセツ行為してない”冤罪”元教員の戦い ワイセツ行為してない ほか)。

 さらに、当該写真は、後日、札幌市内の大通公園で撮影された写真と合成されたものであることが、当サイトの調べで判明した(参照・免職教師の叫び(19)影なき闇の不在証明)。

◾️”冤罪”訴える元教師を犯罪者扱い

 一方、島田氏はXには直接取材を行った様子はなく、Xが裁判で「中学時代は顔も名前も覚えていない大勢の生徒の一人」で、「石田さんが大学に入ってから石田さんの方から『ずっと好きだった』と告白され付き合い性交した」と主張したこと、行為を自白したとされる居酒屋でのやりとりについて「石田さんが昔から精神的に不安定であり、性的に逸脱している人間で、この音声データの受け答えも石田さんの作り話に合わせただけ」という教育委員会への説明をしたことを紹介している(FNN記事)。

フジテレビで放送されたフェイク写真、太陽光源が2つ確認できる(フジテレビ画面から)

 ところが、Xの否認にも関わらず、島田彩夏氏は自社の記事内で「中3の少女に起きた性暴力(見出し)」「Xは約5年に渡り石田さんに性暴力をふるい続けた。」「Xは巧妙に石田さんの心理を操っていた。」「大人になって“性暴力”と気づいた(見出し)」「Xの行為が犯罪だと知ったとき、石田さんは37歳になっていた。」「証拠を提出して訴えたにもかかわらず『加害教師が否認しているから処分できない』という教育委員会、教育界に問題はないのか。」など、Xが行為を行ったと断定し、その上でXがやっていないと否認しているわいせつな行為を「Xの行為が犯罪だと知ったとき」と表現し、Xが犯罪者であることを記事内で表現しているのである。

 このようなことから2021年6月、当サイトではフジテレビに対して、オコタンペ湖の写真は合成されたものであるとの見解を示した上で、その点について質問を行った。それに対する回答は「取材の詳細についてはお答えしておりません。」との回答しか得られなかった。さらに同年8月には前述の「免職教師の叫び(19)影なき闇の不在証明」の記事を公開したため、あらためて同局に見解を問うたが、何の返答もなかった。

 Xは2023年8月、処分取消の訴えを提起。翌2024年4月、当サイトはXの弁護団の要請に応じ、当該写真が合成されたものであることを検証した調査報告書を提出している。(参照・札幌教師免職取消し訴訟 当サイトが報告書提出)。

◾️3度目の質問にもゼロ回答

 以上のように、一方当事者が明確に否定している事案に基づく処分は、違法・不当であることであるとして司法の場に救済を求めている案件で、しかも刑事責任は一度も問われたことがないのに「Xの行為が犯罪だと知ったとき、石田さんは37歳になっていた。」などと、犯罪者扱いする表現を用いた記事を掲載し続けている。さらに、合成された写真をXが行った行為を示す証拠の1つとして掲載を続けるのは、ユーザーを欺く行為に等しい。

 こうした状況から、当サイトでは18日に株式会社フジテレビジョンに対して、以下の質問を行った。

Q01:当該記事の内容は今でも真実であるとお考えでしょうか

Q02:ホームページ掲載の「加害教師」等の表現は、冤罪を叫ぶ当該教師に対する人権侵害であるとの認識はおありでしょうか

 これに対する回答は「本件は裁判所の事実認定を受けて、教育委員会が懲戒処分を行っています。こうした事実を踏まえて、報道、記事掲載の判断をしています。」というものであった。

 裁判所の事実認定が間違っており、札幌市教育委員会の懲戒処分は違法・不当であるから取り消しなさいという訴えを提起し、事実は裁判所や市教委が判断したものとは異なると主張しているのである。そうした声には耳を貸さず、司法と行政の判断に基づいて、一方当事者だけに取材をして記事を作成する姿勢が、数々の冤罪被害を生み、取り返しのつかない人権侵害となったことは袴田事件などで明らかになったばかり。公的機関の判断にメディアが拘束される必要はなく、逆にその真実性を疑って検証することが求められるメディアの役割であろう。

 そもそも記事が公開された時点(2020年10月1日)では、フジテレビのいう裁判所の事実認定(東京高裁の判決言い渡しは2020年12月15日)がなされていない。当然、市教委からも処分(懲戒免職は2021年1月28日付)をされていない。司法の判断としては2019年8月23日の東京地裁の判決、石田氏の主張する事実はないとの認定の下で、Xを犯罪者扱いしているのである。フジテレビの言い分からすれば、東京高裁の判決前に公開されていた時はXを犯罪者のように扱う根拠は見出せない。

 この点についてX(当サイトでは仮名の鈴木浩氏)は「島田彩夏アナからは一度も取材を受けたことがありません。地裁判決の後、石田氏を支援する勢力がしきりにメディアに記事として取り上げるように働きかけ、報道陣が雨後の筍のように次々と出てきましたが、その頃の記事です。記事の内容からして、島田アナは地裁判決も読んでいないでしょう。私の言い分も聞かず、ただ、石田氏側のスピーカーのような存在となっている感じです。本当に腹が立ちます」と話した。

◾️フジ新社長発言と矛盾する対応

写真はイメージ

 1月27日、フジテレビで新社長となる清水賢治氏が「人権侵害は許されないという考えで逸脱行為は厳正に対処し、再発防止策を徹底する」と述べている(JIJI.COM・【速報】清水新社長は、会見で「人権侵害は許されないという考えで逸脱行為は厳正に対処し、再発防止策を徹底する」と述べた)。

 ところが実際は、自身の潔白を主張する元教師を犯罪者扱いして3度指摘を受けても修正も記事の取り下げも行わず、現在進行形の人権侵害をさらに継続させることを事実上宣言したのである。X(鈴木浩氏)は「フジの社長の言う人権侵害は許されないという発言、その守るべき対象に私は含まれていないのでしょう。もう笑うしかありません」と言う。

 清水社長の言う「人権侵害は許されない」を信じるのは難しい。

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