札幌教師免職取消し訴訟 当サイトが報告書提出
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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札幌市の元教師が免職処分取消しを求めて提起した訴訟で18日、原告側弁護団から当サイト作成の調査報告書2通が裁判所に提出された。元教師の免職を求めた写真家の石田郁子氏が札幌市教委に提出した写真は真正ではなく合成されたものであることを証明したもので、裁判の行方に影響を与えることが予想される。当サイトではこの調査報告書の内容をお届けする。
◾️原告弁護団からの要請
当該訴訟は2021年に免職された元中学教師の鈴木浩氏(仮名)が処分の取り消しを求めて昨年8月30日に札幌地裁に提起。同氏は28年前に当時中学3年だった石田郁子氏にわいせつな行為をしたとして免職処分になったが、全くの”冤罪”であるとして札幌市への審査請求(棄却)を経て司法の場で争っている。
当サイトでは過去に合計39回の連載(免職教師の叫び)で事件の詳細を伝え、その後は機会を見て事件の経過を紹介している(札幌・元教師の戦い 免職処分取消訴訟)。
この訴訟で4月18日にウェブ弁論準備手続が行われ、調査報告書、調査報告書②の2通が裁判所に提出された。作成人は当サイト運営者の松田隆である。
昨夏に鈴木氏の弁護団から当サイトに調査報告書の作成ができないかという打診を受けた。過去に連載で扱った石田氏が高校3年の時に鈴木氏とオコタンペ湖(北海道千歳市)の展望台で撮影した写真が真正なものではないという内容を報告書としてまとめてほしいというものであった(免職教師の叫び(18)オコタンペ湖写真を検証、(19)影なき闇の不在証明)。
連載で扱った内容はフジテレビ系で放送されたオコタンペ湖展望台でのカラー写真をスクリーンショットし、3DCGソフト(Shade 3D Ver.23 Standard)を用いて写真の状況を再現して影のつき方を検証した。その結果、本来あるべき場所に影がなく、太陽光源が2箇所確認できることから写真は合成されたものであるという結論を導き出している。
弁護団では今回、当サイトの連載をプリントアウトして証拠として提出、その上でオコタンペ湖の写真についてはあらためて調査報告書の形でまとめることを依頼してきたのである。
当サイトでは本件事案については取材者として関わってきており、鈴木氏と石田氏との関係においては中立的立場を守ってきた。中立的立場で取材、検証を重ねて導き出された結果を裁判資料とすることが、裁判所が合理的な結論を導き出すことに資するのであれば社会に対する一種の貢献である。そのことで一方が有利な判決を得ることになるとしても、それは公正な裁判が行われた結果であり、当サイトがメディアとしての中立性を失うことにはならない。
そのような考えから弁護団からの要請を受諾し、昨年末から調査報告書の作成に取り掛かり、年明けに完成させた。ここまで公表を控えたのは、事前にその事実を公にすることで裁判の進行や結果に影響を与えること等を考慮したためである。当サイトのユーザーには報告が遅れたことは申し訳ないが、そうした事情があったことをご理解いただきたい。
◾️気象データからあり得ない撮影日
メインの論点の影のつき方の検証に入る前に、冒頭に掲げた写真について説明する。連載で用いた写真はフジテレビの放送画面からのスクリーンショットであったが、実はこの写真はテレビで放送される前に、石田氏から札幌市教委に提供されていた。市教委は鈴木氏が審査請求をした際に証拠として2021年11月8日に裁決を行う人事委員会に提出。それが冒頭に掲げたモノクロ写真である。
乙21号証とされたこの写真には、市教委側から以下のような説明が付されていた。
【作成年月日】(撮影日)平成7年8月18日
【作成者】(撮影者)審査請求人(筆者註・鈴木浩氏)(セルフタイマーを使用)
【立証趣旨】被害者(筆者註・石田郁子氏)が高校第3学年の時に、審査請求人と被害者が二人でオコタンペ湖に出かけたこと。
平成7年は1995年であり、写真の右下に年号を示す「95」という文字が入っている。実はこの説明だけで、明らかに合理性を欠く情報が2点含まれている。
1点目は1995年8月18日という撮影日である。写真では影がはっきりと地面に投影されていることから晴天であることは間違いなく、しかも、鈴木氏がノースリーブ、石田氏が半袖のシャツで写っていることから、北海道にしては相当な高温であることが窺われる。
ところが気象庁のデータを見ると、オコタンペ湖の最寄りの支笏湖畔では午前8時台から午後5時台まで降水が記録され、日照時間はゼロ。この日は全道的に雨の1日であった。支笏湖畔の観測所の標高は海抜290mで、オコタンペ湖展望台は同650m。一般に気温は標高が100m上がるごとに0.6度下がるとされ、その計算によればオコタンペ湖展望台は観測所より2.16度低いことになる。
後述するが、影の長さから計算すると写真は午後5時から午後5時10分にかけて撮影されたことになる。その時の支笏湖畔観測所の気温から考えるとオコタンペ湖展望台の気温は午後5時で13.44度、午後5時10分で13.54度である(気象庁過去の気象データ検索 支笏湖畔(石狩地方)1995年8月18日(1時間ごとの値))。13.5度といえば、東京では真冬の日の高めの最高気温程度で、最低でもジャンパーやセーターが必要な温度と言っていい。
もうお分かりであろう。気象庁のデータからは雨の日、13.5度の気温の中、撮影されたはずの写真が、はっきりと影が地面に投影される晴天の下、ノースリーブと半袖のシャツ1枚で大丈夫なほどの高い気温の中で撮影されたものになっているのである。
この事実からは、当該写真は少なくとも石田氏が申し出た平成7年8月18日に撮影されたものではないことは明らかである。
◾️会うはずのない2人
2点目は立証趣旨の中の「被害者(筆者註・石田郁子氏)が高校第3学年の時に…」という記述である。
これもあり得ない話である。石田氏は高校3年時には受験勉強があるため、鈴木氏に対して会うことはできないと申し出ている(免職教師の叫び(6)疑惑の交際写真)。
もちろん、鈴木氏の証言のみで全面的に信頼するわけにはいかないが、このことは、石田氏が鈴木氏と札幌市に対して提起した損害賠償請求訴訟で提出された診療医療記録(石田氏のカルテ)にも明記されており、間違いのない事実と言っていい。
こうして問題の写真は、写真そのものを分析する以前に、その真正に大きな疑問符がつく。これらの点は2021年11月の時点で明らかになっていたが、当時の弁護士の弁護方針からか、その事実のメディアへの事実の公開は見合わせられていた。
このように状況証拠からは”真っ黒”な写真を、当サイトでは合成されたものであることを証明するために検証を続けた。
(「”被害女性”フェイク写真の証拠 透けて見えた背景」へつづく)