”被害女性”フェイク写真の証拠 透けて見えた背景

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 当サイトが札幌地裁に提出した調査報告書は、性的被害を受けたとする女性が市教委に提出した写真のトリックを暴くものである。ベースとなったのは過去にサイト内で公開した記事であるが、調査報告書を提出するにあたり、記事にはない試みを行った。写真加工の専門家に分析を依頼し、さらに同様のものを作成してもらったのである。プロフェッショナルの目を通して新たな事実が浮かび上がり、フェイク写真であることの決定的証拠を掴んだ。

◾️写真加工のプロの目

写真①と写真②

 札幌市の元中学教師の鈴木浩氏は、28年前に当時中学3年だった現写真家の石田郁子氏にわいせつな行為をしたとして免職処分とされたが、札幌市にその処分の取消しを求めて提起した裁判は4月18日にウェブ弁論準備手続が行われた。当サイトは原告弁護団の依頼を受けて、調査報告書を提出した。今回はその続きをお伝えする。(参考・札幌教師免職取消し訴訟 当サイトが報告書提出)。

 問題となった写真は、過去に当サイトが本来あるべき影が存在しないことから合成されたものであると結論付けている(免職教師の叫び(18)オコタンペ湖写真を検証(19)影なき闇の不在証明)。これは3DCGソフト(Shade 3D Ver.23 Standard)を用いて写真の状況を再現した検証が決め手となった。今回はその点を再検証したが、さらに写真加工に詳しい専門家に話を聞くことで写真がフェイクであることの決定的証拠を掴んだ。

 協力してくれたのは、都内で映像システムの研究開発を主業とする会社の代表取締役のA氏。同氏は大手電機メーカーで人工知能、3D、映像システムの研究開発に従事し、その後、独立して会社を立ち上げた。写真加工ソフトのフォトショップ(Photoshop)を長年使用し、その扱いには慣れている。

 A氏には石田氏が市教委に提出したモノクロ写真と、2020年にフジテレビ系のニュース番組イットで紹介された同じ写真と思われる2葉の写真を見ていただいた。便宜的に前者を写真①、後者を写真②とする。

◾️太ももを通して見えたビーム

 A氏がまず注目したのは写真①の鈴木氏の太ももの部分である。この部分に後方の柵の横棒(ビーム)が透けているのである。モノクロだとわかりにくいので、モノクロ写真をカラーにするフォトショップのAI機能である「カラー化」を用いて着色すると、はっきりと分かる(写真①-2)。

 この点をA氏は「着色の過程で背景のコントラストを上げ、色をつける際に自然なコントラストにしているためです。目立つようにしてあるわけです。あくまでも色の違いを目に見えやすくしている、濃淡を見えやすくしたために透過している部分が分かりやすくなったということです」と説明する。

写真①−2、背景の透過が確認できる

 つまり、実際に背景が透過していて色の違いがあるため、それを分かりやすく、より目につきやすくしたということである。

 通常の写真において背景が透けて見えることなどあり得ない。このように背景の画像が透ける(ように見える)という現実には起こり得ない現象が発生するのは、フォトショップがレイヤーと呼ばれる透明なフィルムのようなものを使用する機能であるため。

 レイヤーに画像を個別に配置して重ね合わせる方法で編集しており、手前に位置する画像が薄い(透明度が高い)場合、後方に位置する画像が透けて見えることも起こり得る。そして、写真①ではその現象が見て取れるのである。

 A氏は「写真を合成するときに背景との違和感を感じるなどで、透明度をいじることもあります。その場合に背景が透過することがあります。また、スキャナーの関係で、スキャナーの質が良くなくて、ビームが横にずれて人物を透過したように見えるようになったか。いずれかは分かりませんが、加工、合成しなければこのように見えることはありません」と説明する。

◾️フジテレビの写真は透過していない

 ここで問題となるのは写真②では写真①で見えたような背景のビームが見えていないことである。2葉の写真は同じものと思われるが、なぜ、このようなことが起きるのか。この点は、写真①と②が作成された時期に関係していると思われる。

 写真①は2016年10月までに石田氏が弁護士を通じて市教委に提出したものである。一方、写真②はフジテレビ系で紹介されたのが2020年9月29日と、およそ4年のタイムラグがある。写真①を提出後に背景のビームが透けていたことに気付いた石田氏がフジテレビに提供する際に、鈴木氏のズボンの部分の透明度を低くして背景が透過しないようにさらに加工したと考えるのが通常の思考であろう。

 それではなぜ、写真①の時に人物の透明度を高めて合成したのか。これは想像でしかないが、オコタンペ湖展望台の写真が1995年に撮影されたものであるなら、その約20年後の2016年にスキャンした場合には色が薄くなっていたと思われる。その色の薄さに人物2人を自然にマッチさせるためには透明度を高くして色の薄さを合わせたのではないか。前述のA氏のコメントにあるように「写真を合成するときに背景との違和感を感じるなどで、透明度をいじることもあります。」といった状況だった可能性はある。

◾️フェイク写真を再現

 ここでA氏には、実際に風景と人物を組み合わせたフェイク写真を作成してもらった。モデルは筆者(松田隆)で、2022年8月20日に札幌市の大通り公園で撮影した人物写真を、同19日に撮ったオコタンペ湖展望台(現駐車場)の風景と組み合わせるのである。

 ご覧のようにごく自然に、筆者がオコタンペ湖展望台にいるかのような写真が出来上がった(調査報告書の番号の写真17)。確認するが、これはフェイク写真である。

合成して作成された写真17(右)

 さらに筆者の下半身の透明度を高め、背景のビームが透けるようにしたのが写真17-2である。このように写真加工のプロの手にかかれば、背景と人物を合成してフェイク写真を容易につくることができる。

写真17-2

 それでは石田氏にそのような技術が備わっていたのか。石田氏は北海道大学を卒業後、金沢美術工芸大学で写真を学んでいる。

 現在は写真家として活動しており、フォトショップの扱いはプロ級とまではいかないにしても、それなりのレベルには達していることが予想される。

 こうした事実から、写真①、写真②は合成されたフェイク写真であることは間違いないと言っていい。そして、さらにA氏が写真②から合成の証拠を見つけたのである。

偽造の痕跡くっきり フジ放送フェイク写真 へ続く)

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