CLP佐治洋代表の説明に疑義

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 ネットメディアのCLP(Choose Life Project)が立憲民主党から1000万円以上の資金提供を受けていた問題で、同社の佐治洋代表が6日、声明を発表した。公共メディアを目指すとしながら政党から資金を受けていたことについて謝罪したが、その内容は「怠りました」「認識の甘さ」「甘えと弱さ」など、過失であることを強調するものとなっている。過去のインタビューからは意図的に事実を秘匿していたことがうかがわれ、詐欺の意図はないというエクスキューズに見える。

■佐治洋代表が事情説明

佐治洋氏(たかまつななチャンネル画面から)

 津田大介氏ら5人の連盟で抗議文が公開されたことに対し、佐治代表はCLPのホームページで、「『Choose Life Projectのあり方に対する抗議』へのご説明」というタイトルの記事をアップし、これまでの経緯を説明した。

 それによると、立憲民主党から受け取った番組制作費は約1500万円(1動画あたり平均5万円、1番組あたり平均12万円程度)で、受け取った時期は2020年3月から、クラウドファンディングで運用できるまでの間とされている。クラウドファンディングでのプロジェクトは同年9月に終了しているため、半年ほどの間に1500万円という尋常ではない金額が提供されたことになる。

 提供された資金は佐治氏らの報酬や政策にかかる外注費として使用され、資金提供期間に特定政党を利するための番組作りはしておらず、立憲民主党から番組内容への要求・介入はなかったとする。

 クラウドファンディングを行なって、さらにサポーター制度を確立し、独立した形での運営が可能になっても、過去の資金提供について出演者やサポーターには伝えていない。それは「ただの甘えで、視聴者や出演者の皆さまに対する裏切りであり、モラルを著しく欠いた態度であったと認めざるを得ません。」とする。目指すメディア像を定めたものの、その時点でも「私たちは説明を怠ってしまいました。」とし、今回、一連の行為が表沙汰になり「何てことをしてしまったのだろうと茫然自失の思い」であるという。

 その上で、説明責任を果たした後に、速やかに共同代表を辞任する意向を示した。

■欺く意思の不存在を強調

写真はイメージ

 このように全面的に謝罪する形になっているものの、気になるのは、出演者や出資者、視聴者を欺く意思がなかったのように語っている部分である。

 説明の中にある「われわれはそれを怠りました。」「ただの甘え」であり「私たちは説明を怠ってしまいました。」という表現には意図的に資金提供を受けていた事実を隠したというニュアンスはなく、(怠けて、あるいはうっかりしたまま説明しないままにしてしまった)と、心ならずとも公表できずにいてしまったと解釈するのが通常の思考。

 これは詐欺罪(刑法246条1項)の実行の着手がなかったと言いたいのではないか。詐欺の実行の着手は「行為者が財物を騙し取る意思で欺く行為を開始した時点に認められ、相手方が錯誤に陥ったかどうかを問わない(大判昭和3・9・17集7-578)。」(条解刑法 第2版 p724 編集代表 前田雅英 弘文堂)とされる。

 佐治氏の説明であれば、サポーターやクラウドファンディングの支援者を欺く行為は開始しておらず、うっかりしたまま(過失で)相手に真実を伝えなかった、ということになる。詐欺の実行の着手がない、すなわち詐欺の故意はないと言いたいものと思われる。おそらく、弁護士が入れ知恵したのではないか。

■「寄り添う相手は声なき声」と断言

佐治洋氏(右)とたかまつ氏(たかまつななチャンネル画面から)

 しかし、佐治氏は2020年10月31日公開のYouTubeの番組(たかまつななチャンネル)に出演し、お笑いジャーナリストのたかまつなな氏の質問に、以下のように答えている。少し長いが引用する。

たかまつ:メディアの立ち位置としてどちらかというと反政府的だったりするようなキャスティングのメンバーとかを見ても本当にTBSの番組そのままネットで見ているような感じがしますけど、そういう政治的な立ち位置とか思想とかその辺は私も非常に、私もどちらかというと考えとしてはそちらなので、それをすごくYouTubeで指摘されたりもするのでなかなか難しいなと思うんですけど、そういうところは…

佐治:中立的なものっていうのは僕はないと、幻想だと思っていて、唯一気にしていることとすれば、権力というものが何なのかっていうところを常に気にしなきゃいけないかなと思っていて…(中略)…「中立に伝えましょう」っていうんですけど例えば政権与党と野党で中立に伝えましょうっていってもアドバンテージは間違いなく与党側にあるわけですね。なぜかというと当たり前だけど大臣がいて当たり前のように顔が出て、メディアの露出が多いからですよ。自然とニュースになるわけです。伝えてる報道の人たちって決して反自民とかではなくてそれは例えば自民党だろうが共産党だろうが野党が政権交代したとしてもそこは権力者として見る。対権力ってものに対してメディアがどういう位置付けでどう向き合っていくかっていうところで考えなきゃいけない部分を、じゃあ、自民党ですか、立憲民主党ですかとか共産党ですかみたいな…

たかまつ:本当そうなんですよね。…(以下、略)

佐治:だからそう考えたら自ずと自分がどう動くかどう発信していくかっていうのが決まってくると思うんですけど…(略)…そういうところをあまり深く考えている人が一概にいないのかなと思ったり、だから権力に寄り添っていくと、寄り添う相手違うだろうと。やっぱり寄り添う相手はやっぱり声なき声、声を出せない人たちの声を拾っていかないといけないと…。

(以上、今話題のChoose Life Projectって?代表者の佐治洋さんにインタビュー

 このやりとりを見る限り、佐治氏の基本的なスタンスは「対権力」。反自民党ではなく、野党でも政権についたら権力であり、対権力という立場から、そこに寄り添うことはなく自分達は声なき声を集めていく、庶民の味方をしていくと言っているのである。

 これを聞いた人は、仮に立憲民主党が政権についたら、その権力に対して批判的なスタンスをとり、庶民の声を集め、庶民に寄り添っていくと信じるであろう。

 ところがCLPは、この時期には既に立憲民主党から約1500万円の資金提供を受けていたのである。もし、その事実を明らかにすれば、佐治氏は全て自分自身で否定することになってしまう。(資金提供した立憲民主党が政権をとって権力になったら、批判などしないはず)と思う人がほとんどと思われる。

 そのため「立憲民主党から1500万円もらっていました」などと言えるはずがない。そのように考えると佐治氏の「私たちは説明を怠ってしまいました。」は不正確で、「私たちは故意に説明をしませんでした」というのが正しい表現であり、そうであれば、1項詐欺が成立する可能性が十分にある。

■たかまつなな氏も謝罪

たかまつなな氏(たかまつななチャンネル画面から)

 CLPの事件について、たかまつ氏は6日に謝罪の動画をアップした。その中で、「メディアとして特定のところからお金をもらったら、それを分かるように表記する必要があります。分からないように番組をつくることは、それはステルスマーケティングと呼ばれるものです。…今回、Choose Life Projectはそのステマが疑われます。」と話した。

 さらに「まさかChoose Life Projectがそういうことをしているとは思わず、きちんと(たかまつ自身が)確認してきませんでした。立憲民主党の代表選をですね、公開討論会を主催している報道番組に対して、『立憲民主党からお金もらってませんよね?』 わざわざ確認する必要があるとは、正直思いませんでした。」とも語り、自らの注意不足を謝罪している(以上、【お詫び】立憲民主党から1000万円もらっていた疑念のあるCLPに失望すると共に、出演者として反省しています

 たかまつ氏の言っていることは概ね妥当な内容と言えるが、大事な点を忘れている。単純にステルスマーケティングの問題であれば、報道としての倫理の問題で終わる。しかし、クラウドファンディングで3000万円以上の資金を一般のユーザーから集め、2000人近い人数がマンスリー・サポーターとなって出資している。それは佐治氏の刑事責任に発展しかねない。

 出資者、支援者は佐治氏の説明を聞いてCLPが特定の政党とは距離を置く、反権力のメディアである、市民が出資者の媒体と錯誤に陥って出資したのである。出資した人は、立憲民主党から資金提供があった事実を知ればお金を出さなかった可能性がある。それは財産的な損害であり、CLP、佐治氏に1項詐欺が成立する可能性があることに他ならない(CLPは詐欺罪か 津田大介氏らが抗議した理由)。

■「旧党の時のこと」は通用しない

 この問題について立憲民主党の幹部は国民民主党の一部と合併する前の旧党の時代のこととしているようであるが、仮にそうだとしても、その事実を認め、CLPが政党から資金提供を受けていたことを隠していることを黙認していたのであれば、共犯は成立しうる。

 津田大介氏が突然抗議文を明らかにして、その直後に産経新聞に記事が掲載されたというタイミングも何かと疑問が生ずる部分。佐治氏も立憲民主党も、日頃口にしている説明責任を果たすべきである。

"CLP佐治洋代表の説明に疑義"に4件のコメントがあります

  1. BADチューニング より:

    >CLP
    >TBSの番組そのままネットで見ているような感じ

    “どストレート”過ぎるツッ込みで吹かざるを得ないw

  2. 通りすがり より:

    このCLPと立憲の蜜月が発覚して以来、TV、ラジオ、新聞等のオールドメディアで大きくこの問題を取り扱っているのを見ていない気がすることに大いに違和感が。
    穿った目で見れば、オミクロン株によるコロナ感染の急速拡大の大々的な取り扱いでこの問題を早々に風化させようとしているようにも見える程。

    今朝8時の森本毅郎のラジオ番組で月曜日レギュラーの時事通信記者との対談において、この話題に触れていたが、少しも問題を掘り下げるものではなく問題の表層的なことのみさらっと解説して、自民党とDappiの問題に話題を強引に持って行くという、Dappi問題の方がCLPよりも悪質なんだぞ、と言わんばかりの内容であった。
    「自民党が資金投入していた場合、又はツイートの内容に関わっていた場合」という今の処何の証拠も出てきていない事象にも関わらずそれらを前提にしていること自体噴飯もの。

    CLPに関わった極左活動家の面々が被害者素振りし、CLPや立憲を見捨ててまでとっとと逃亡したがったこの問題、全容を白日の下に必ずや晒すべきですね。

    1. こめすけ より:

      私もこの番組を拝聴しました。TBSラジオで取り上げるだけでもましではないかと思いますよ。Dappi問題への展開は苦しい感じでしたね。どっちもどっちといった方向へもって行こうとしてましたね。

  3. コロナックル より:

    それ以前の問題なんだが、普通に元TBSの人間がどうして、立憲民主党と金銭的なつながりがあったんだ?元々TBSや左派的なメディア団体が、なんらかの金銭的地位的なつながりがあったと考えるのが自然なんじゃないか?
    さらに、出演者はどうやって立憲民主党から資金提供があったのを知ったんだ?さらに、出演料や出演者の忖度があったのか?そして、出演者はネットメディアの専門家や、さらに、ネットユーザーに対して誹謗中傷の訴訟を起こしているが、自身のメディアモラルについては精査しなかったのか?
    そして、最大の問題は、資金の1500万円は立憲に返金したのか?していないなら、何に使ったのか公表すべきだと思うのだが…

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です