窪田順生氏4度目の”絶望的無知” 亀田製菓記事

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 ノンフィクションライターの窪田順生氏が亀田製菓CEOの「さらなる移民受け入れ」発言に関する記事で、基本的な知識の欠如等に基づくミスを犯した。最も大きな誤謬は「移民(immigration)」というキーワードに関して無理解のまま、AFP配信の元記事を攻撃した点。過去に3度も演じた”絶望的無知”の類の記事を再び世に出した形になった。

◾️窪田氏記事の要約

写真はイメージ

 元朝日新聞記者でもある窪田氏は26日にダイヤモンドオンラインで「『日本に移民を』亀田製菓CEOの発言が炎上して株価は下落…不買運動に加担する“ピュアな人”に背筋が凍るワケ」という記事(以下、窪田記事、リンクは会員限定記事)を公開した(全文を読む場合はYahoo!JAPAN・同タイトル記事 参照)。

 亀田製菓会長CEO(最高経営責任者)インド生まれのジュネジャ・レカ・ラジュ氏(72)が、日本はより多くの移民を受け入れる必要があるとの考えを示した記事(AFP通信・インド出身の亀田製菓会長「日本はさらなる移民受け入れを」)がSNS等で炎上し、同社の株価も下がるなど、日本国内の反応の異常さに背筋が寒くなったとする内容であった。窪田氏の記事の内容を要約すると、以下のようになる。

(1)亀田製菓に関する記事により、日本人が「雑な情報操作」に簡単に操られ、激しい敵意をムキ出しにしている事実が恐ろしい。

(2)今回のケースはオールドメディアの典型的な「スピンコントロール」に乗せられている。

(3)16日配信の記事と同時配信されたインタビュー動画では会長CEOは「日本はさらなる移民受け入れを」とは一言も言っていない。

(4)会長CEOの「海外から人材を受け入れることが極めて重要」という表現を含む発言は「移民受け入れ」とは異なる。

(5)会長CEOは移民(immigration)という言葉を使用せず、政府が推進する「海外から人材を受け入れる」という政策を加速すべきと言っているに過ぎない。

(6)AFPはニュースの切り取り方に「欧州の価値観」の押し付けがある。

(7)欧州の価値観からすれば、政府や会長CEOがいう「海外から人材を受け入れる」は「移民政策」そのもので、日本の価値観からすれば別物である。

(8)日本人はメディアの中立公正を真に受けるので、メディアに簡単に操られてしまう。

(9)亀田製菓の不買運動をした者は、雑な情報操作に乗せられている。

(10)ネットやSNSによって、太平洋戦争の時代以上に我々日本人は扇動されやすくなっているのかもしれない。

◾️それは移民のことでしょ?

 まず、細かい点から指摘しておく。(3)で亀田製菓の記事が16日に配信されたとするのは誤り。正確には12月15日に同タイトルの記事の日本語版(以下、AFP和文記事)と英語版(以下、AFP英文記事)が公開されている。窪田氏が16日公開としたのは、AFP和文記事がYahoo! JAPANに転載されたのが16日であったから、転載日を元記事の公開日と誤信したのであろう。そのため、窪田氏はYahooに転載された記事のみを見て、英語版は読んでいないと思われる。その時点で、ノンフィクションライター失格である。

 問題となるのは(4)(5)の部分である。ここは、会長CEOは移民という言葉を使っていないのに、AFPの記者が勝手に意味が異なる「移民」という表現に置き換えていることを問題としている。

 動画を確かめると、会長CEOは以下のように発言している。

「I think flexibility and having people from overseas would be very critical for Japan.(私は、日本にとって柔軟性と海外からの人材を受け入れることが非常に重要と考えている。)」(AFPBB News・インド出身の亀田製菓会長「日本はさらなる移民受け入れを」(2024年12月))

 この発言を受けたAFPの記事は以下のようになっている。

・AFP英文記事:「The country “has no choice” but to allow in more immigrants, said Juneja,…」(和訳:「その国はより多くの移民を受け入れる以外に『選択肢がない』と、ジュネジャ氏は語った…」)

・AFP和文記事:「ジュネジャ氏は、日本には、さらに多くの移民を受け入れる以外に『選択肢はない』と言い切る。」

 確かに会長CEOはimmigrationやimmigrantsという移民を意味する直接的な表現はしていない。問題は窪田氏が「海外からの人材を受け入れる」を「移民」と別物としている点。「この発言(筆者註・海外からの人材受け入れ発言)と『移民受け入れ』がまったく異なることは言うまでもない。」(窪田記事)と断言している。

 一方、AFPの記者は両者を同一と考えて書いているのは明らか。窪田氏にすれば、そうした言葉の使い方が「欧州の価値観」の押し付けであり、それに日本人は騙されたと主張しているのである。

◾️そもそも移民とは何か

 ここで「移民」とは何か、ということを考えてみる。実は国際法の基本書などでも「移民」という言葉はあまり使用されず、巻末の索引でも「移民」の事項はない場合が多い。一般的に「移民」の定義は、国連が定めたものが使用されることが多い。

「国際移民の正式な法的定義はありませんが、多くの専門家は、移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々を国際移民とみなすことに同意しています。3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と呼んで区別するのが一般的です。ー国連経済社会局」(国連広報センター・難民と移民の定義

 「移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々」は、まさに会長CEOの言う「海外からの人材を受け入れ(having people from overseas)」た結果に他ならない。

 そして、immigrationの定義は「Immigration – From the perspective of the country of arrival, the act of moving into a country other than one’s country of nationality or usual residence, so that the country of destination effectively becomes his or her new country of usual residence.」(国連移住機関IOM・Key Migration Termsから)とされている。和訳すれば「移民ー到着国の視点から見た場合、自国の国籍や通常の居住地とは異なる国に移動し、その目的地の国が事実上新たな通常の居住地となる行為を指す。」

 当然、国連広報センターと同様のものが示されている。こうしてみると、会長CEOの言う「海外からの人材を受け入れる(having people from overseas)」は「移民(immigration)」と同義と言い得る。海外から受け入れられない人材は、不法移民(密入国、観光ビザでの入国等して滞在する人々)や偽装難民等で、新たな通常の居住地として受け入れられない人々であるから、彼らは移民とは異なる。そして会長CEOはそうした不法移民や偽装難民等を受け入れろなどとは一言も言っていない。

◾️考えるまでもなく同一

 このように「海外からの人材を受け入れる」は「移民」と同義であると考えた結果、AFPの記者は「The country “has no choice” but to allow in more immigrants, said Juneja,…」(和訳:「その国はより多くの移民を受け入れる以外に『選択肢がない』と、ジュネジャ氏は語った…」)と書き、「移民」を見出しにしたのであろう。

 以上の点を考えればAFPの英文、和文の記事は何の問題もなく、日本でもよく行われる記事の趣旨の明確化を目的とした言い換えに過ぎない。正しい記事を間違っていると断じ、さらにその誤謬の原因は「欧州の価値観」の押し付けという根拠のない決め付けを行っている。

 そのあたりを、窪田氏は「『欧州の価値観』に照らし合わせれば、日本政府やラジュ会長CEOがいう『海外から人材を受け入れる』ということは『移民政策』以外の何ものでもない。日本の価値観では両者は違いがあるので、日本のメディアはさすがにこういうダイナミックな『意訳』はしないが、欧州のメディアからすれば『だって同じことでしょ?』の一言で片付けられてしまうのだ。」(窪田記事)としている。

窪田氏は元朝日新聞記者

 この一文は「この発言(筆者註・海外からの人材受け入れ発言)と『移民受け入れ』がまったく異なることは言うまでもない。」(同)と矛盾しているように読める。

 「海外から人材を受け入れる」と「移民(政策)」が同一であるか、そうでないかは国際的に定まっている移民の定義に当てはまるか否かで判断すべきなのは言うまでもない。単純な言語の問題であり、具体的表現の当該言語の定義への当てはめに過ぎず、客観的に判断できるものであり、そうすべきもの。その判断に地域独自の価値観という主観が入り込む余地などない。

 この問題に関して言えば、国連が定めたimmigrationの定義を世界各国の共通認識とすれば、「海外から人材を受け入れる」がそれに当てはまるかどうかは、欧州と日本で判断が異なるはずがない。窪田氏の言葉を一部借りれば、「欧州のメディアでなくても『だって同じことでしょ?』の一言で片付けられる」。

 問題とする事態の客観的評価を定めてから、筆者の主観に基づく主張を展開するのがわれわれ表現活動に従事する者の最低限の務め。前提を恣意的に解釈した上で自らの主張を展開することで納得してくれる読者がどれだけいるのか想像がつかないとしたら、窪田氏は真剣にライターからの転職を考えた方がいい。

◾️スシローでも問題発生

窪田順生氏(一般社団法人グローバルチャレンジの番組画面から)

 窪田氏に関しては、過去にもその記事を「絶望的無知」と批判した(”スシロー訴訟” 元朝日•窪田順生氏の絶望的無知)。この類の批判は窪田氏に関しては4度目となる。

 SNSやネットには虚偽を含む情報が多いとオールドメディアからの批判が強くなっているが、窪田氏はまさにそうした情報の発信者であると思われていることを認識すべきと考える。

 窪田氏こそが事実に基づかない記事を書くことで、国民を誤った理解へと誘導し、社会の分断を生じさせるように扇動している事実にいい加減、気付いたらどうか。

    "窪田順生氏4度目の”絶望的無知” 亀田製菓記事"に1件のコメントがあります

    1. 野崎 より:

      難民イコール移民  大衆蔑視

      NPO難民支援協会はファシストの組織である。

      難民支援協会は偽装難民の存在を認めるも、それは外国人労働者を受け入れない日本が悪いとする。

      以下サイトより一部引用。

      ●日本に「偽装難民」がいることは問題?
      「偽装難民」の定義は不明瞭ですが~~~
      就労資格を得たいという理由だけで難民申請をしている人がいることも事実です。そ
      の背景には、人手不足にあえぐ企業の存在がありながら、移民労働者の受け入れを認めてこなかったという日本政府の立場があります

      上記は現況に対してではなく、労働力不足は指摘されていたが現在の様にさほど顕在化しておらず、貨幣価値の差を目的に日本への密入国が多かった頃の記載である。
      コンテナに十数人の中国人が隠れ潜み、それが露呈した時点で全員死亡していた(窒息?)
      事件があり、それをきっかけに難民支援協会のサイトを閲覧し上記の記載を確認した。

      つまり、はるか以前から(6~70年代から)ファシスト共は日本に外国人を入れろ、定住させろ!と活動して来たのだ。(コスモポリタニズム、→ファシズム、地球市民 異文化共生)
      よって奴バラは難民に永住権を!と主張し活動する。

      コスモポリタニズムは70年代には斬新な価値観だとのイメージがあったがその実態はファシズムである。

      ウィキより
      コスモポリタニズム(英: cosmopolitanism)とは、全ての人間は、国家や民族といった枠組みの価値観に囚われることなく、ただ一つのコミュニティに所属すべきだとする考え方である 。

      ジョンレノンのイマジンはコスモポリタニズムの価値観の歌である。
      ジョンレノンはイマジンの意味を共産主義の様なものと答えている。

      欧米、米国で起こっている移民問題、何が起こるかに若い衆達は気が付いたのだ、リテラシーの高い者達はその実態にも気が付いた。

      よって亀田問題が発生した。

      窪田なる者はファシストの構成員でありこの男なりのプロパガンダなのだろう。
      その展開方法が何に則るかは先にコメントした(ロシアの情報戦)

      大衆蔑視
      ファシストの資質の一つとして大衆蔑視がある。(大衆は馬鹿だ、大衆は洗脳し操るものだ。)
      これも70年代左翼の常套句であり自らのおごりを戒め大衆を馬鹿だとなめるなよ!
      油断するな!との意味だ。

      自分達の正体が看破されてはじめている現況に対するくやしさが満ち溢れ、お前たちは馬鹿だ!を出し過ぎるとプロパガンダとしての有効性は低下するぜ!

      その悔しさはトランプ氏の当然にもあるか、

      御返信は不要です。

      ●日本に「偽装難民」がいることは問題?
      「偽装難民」の定義は不明瞭ですが、難民申請の結果が出るまでの平均 2.7 年間は、そもそも
      働かないと生きていけないという現実があります。また、妻子を残して逃れてきた人の場合は、
      残した家族のために日本から送金したいと思うことは当然の気持ちと言えるでしょう。難民が
      逃れた先で働きたいと思うことや働いていること自体は批判されるべきではありません。
      一方で、就労資格を得たいという理由だけで難民申請をしている人がいることも事実です。そ
      の背景には、人手不足にあえぐ企業の存在がありながら、移民労働者の受け入れを認めてこな
      かったという日本政府の立場があります。現在は、外国人受け入れのための政策が施行され、
      難民申請においてもどのような影響があるかを見ていく必要があります。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です