民事で死刑? 太田光氏vs高市早苗氏テキスト

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 お笑い芸人の太田光氏と自民党の高市早苗政調会長とのやりとりの全文を掲載する。10月31日の「選挙の日2021 太田光と問う!私たちのミライ」(TBS系)で放送されたもので、太田氏は「分かります? 言ってること」など、ベテランの政治家に向かって考えられないような言葉を使う。しかも選挙特番なのに、聞くのは森友学園のことばかり。不自然なやりとりな上、太田氏の裁判制度に関する無知ぶりが窺い知れる発言もあり、一際お粗末さが目立った。

■7番目に登場の高市早苗氏

最初は笑顔を見せていた高市氏(TBS画面から)

 高市氏は「忖度なし! 太田光×注目政治家”10番勝負”」の7番目に登場した。事前のVTRを紹介する際に、党総裁選で人気が爆発したが、「その陰にはあの方の影が…」(小川彩佳アナ)というナレーション。「あの方」とは、言うまでもなく安倍晋三元首相のこと。総裁選で支援をした安倍首相との関係を強調しているが、そのナレーションが太田氏とのやりとりの伏線となっているようである。

 太田氏は時間いっぱい、民事訴訟が係属中の森友学園問題を聞いた。公文書改竄で昭恵夫人の名前が消された→安倍元首相が絡んでいるのは間違いない→その安倍氏が推す高市氏に聞く、という連想ゲームか。確かに、高市氏は総裁選の時に、森友学園問題の再調査に否定的な考えを示したが、とはいえ、総選挙の投開票当日にその話を延々とするのは異常としか言いようがない。

 今回の総選挙で高市氏は政調会長として党の公約をつくり、各候補の支援に駆け回る大変、忙しい選挙戦となっている。公約の内容、たとえば国防力や経済安全保障の強化、農林水産業を成長産業に、新しい資本主義で分厚い中間層を再構築するなど、聞くことは山ほどある。高市氏個人についても、総裁選での大旋風を巻き起こしたこと、その影響、選挙を戦ってみての手応え。お笑い芸人でもそれぐらいは質問できるであろうところ、それらには一言も触れないのは不自然と言うしかない。

 事前のVTRが流れた後に、2人のやりとりが始まった。

高市:よろしくお願いいたします。

太田:何か、俺、喋り過ぎだっつうんで、ちょっと短めにいきますけども(笑)。高市さん、絶好調ですね。

高市:はい?

太田:絶好調ですね。

高市:いやいや、結構、調子悪いです。

 最初は高市氏も笑みを浮かべていたが、徐々に表情は険しくなっていく。

■太田氏は三権分立が分かっているのか

太田:あの1個だけ、僕が個人的に聞きたいのは、森友学園についてなんですけども、高市さんはあのう、公文書改竄については遺族の方があのう、今、訴え中だからコメントは控えるって言ってたんですけど、それ、どういう意味ですかね。

高市:あのう、やっぱり民事訴訟になっていることですから、これは、あのう、私が軽々に口にすべきことではないと、そう考えました。

太田:それは司法に任せるってことですか?

高市:それはそういうことです。

太田:でも、日本って三権分立じゃないですか。つまり、司法は司法、行政は行政ということですよね。それ責任逃れじゃないですかね。

高市:いえいえ、あのう、これはやはりですね、役所の中でずっと調査をして、調査結果も出して、そしてまた処分を受けるべき人は処分を受けている、そして、まあ、司法が今、動いているということになりますと、これは自民党としてですね、こうすべきだ、ああすべきだと軽々に言うべきことじゃないと思っています。

太田:行政の、要するに、国民の主権者の代表として、この責任はあるんじゃないかっていうことなんですけども、例えばね、一般の人が司法に任せるっていうのは分かるんだけど、高市さんは主権者の代表じゃないですか。しかも行政の人じゃないですか。

高市:行政じゃないです、立法です。

太田:行政じゃない、立法府の人じゃないですか。だったら三権分立なら、司法は司法、立法は立法じゃないですか。立法で責任を持って調査するっていうことを僕は考えるんですけども、どうですか。

高市:でも立法で調査するということは、これ、難しい話でございます。

太田:なぜですか。

高市:特別の、これはあの政調会長の範疇をちょっと離れますけれども、国会対策で話をしていただいて、何か新しい委員会を設置するとか…

太田:やれば?

高市:もう、そういった手続きが必要でございますね。

 太田氏の主張がよく分からない。三権分立は相互にチェック機能を効かせ、権力の暴走を防ぐ目的であるのは言うまでもない。民事訴訟で争訟中の案件に行政や立法が何らかの介入をすれば、それは司法の独立を犯しかねない。三権分立の制度を否定するものであろう。

 もちろん、国会は国政調査権を有するが、いわゆる浦和事件の判決後に参議院法務委員会が事実認定と量刑が失当という報告書を出したことに対して、最高裁は1949年5月、「司法権の独立を侵害し…国政調査権の範囲を逸脱する措置」として抗議を申し入れている。高市氏はそれを踏まえての発言と考えられ、至極真っ当な意見である。

■高市氏に「分かります? 言ってること」

 やりとりは続く。

太田:やればいいと思いますけども、あのう、要するに、国家公務員っていうのは公僕だと。で、政治家は主権者の…

高市:そうです。

太田:ね、そういうことですよね? で、あの、主権者の代表は公僕の人たちに、うまく働いてもらうことが仕事だと。そういうのが高市さんの政治信条のど真ん中にある、と。

高市:そうです。

太田:今回、僕は森友学園については前半と後半があると思うんですけど、その国有地を、あの、値引きしたことに関しては前半ですよね。問題は後半だと思うんですよ。公文書を改竄したっていうのは、これは一体、行政、ああ、立法府とあの、政府と官僚の中にどういうパワーバランス、力関係が起きたのかっていうのは、もうちょっと自分たちが責任を持って、はっきりさせないと国民は納得しないじゃないですか。それに関してはどう思います? その責任に関しては。

高市:でも、これは、あのう、役所の中で調査をされてですね、それで報告書が出ていると。そして、まあ、司法の調査も入っている。それに対して役所はしっかりと応じている、そして、まあ、なおかつ、あのう、今、訴訟が起きているという中で、ここで関与すべきことではないと思っております。

太田:そんなことないだろ。例えばね、国会で安倍さんが自分が関係していたら、政治家を辞めるって言ったのは前半の部分なんだけど、後半、公文書改竄に関して言えば、昭恵夫人の名前を消したわけだから、安倍さんは完全に関係しているわけじゃないですか。つまり、あのう、要するに政府と、官僚がどういう力関係があったのか、これ、再発防止って言うけど、これを解明しないことには再発防止なんかできるわけないわけで、今時、民間企業だって、パワハラに関しては色々責任を取らされるわけですよね? だから国民、国がまずその手本を見せないと、国民は納得しないんじゃないですかね。

高市:でも、この公文書の改竄っていうのは決して起きてはいけないことでございますね。

太田:で、そこには必ず力、パワーバランスがあったわけですよね。それがどういうパワーバランスだったのか、我々知りたいわけですよ。どんな力学がそこで働いたのか。つまり、それは高市さんの世界信条、ああ、政治信条のど真ん中にある公僕は国民に忠誠を誓う、で、主権者の代表である政治家は、公僕に、あのちゃんと、きちんとした仕事をしてもらうっていうのを踏みにじった行為が起きたわけじゃないですか。分かります? 言ってること。高市さんから聞いた話なんですけど。

高市:ええ、私もそう思っております。

 政治には素人を自称する太田氏は、国会議員に向かって「分かります? 言ってること」と聞くのはネタのつもりなのか。そもそも、なぜ、これを総選挙の投開票日に聞かないといけないのか、誰しもが不思議に思ったのではないか。

 結局、高市氏に選挙の話を聞くと、総裁選からのイメージアップの続きとなり、自民党が惨敗した場合に高市政権誕生の可能性があることから、あえてイメージを悪くするようなことに質問を絞ったと邪推されても仕方がないように思われる。

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    "民事で死刑? 太田光氏vs高市早苗氏テキスト"に1件のコメントがあります

    1. ゴン こたつ より:

      森友問題は、疑惑は疑惑のままの方が何かと都合が良いと考える連中が再燃に心血を注いでいる。その連中は、疑惑を真に解明することなど微塵も望んでいない。
      もし、本当に解明したいなら、他の方法を講じるだろう事はちょっと考えれば判る。
      何が問題だと騒いでいるのか?詳細を説明しないまま、ただ漠然と問題だ!問題だ!と騒いでいるに過ぎないし、その姿は滑稽ですらある。
      裏であの菅野完氏が暗躍したことなどが周知の事実であるにも関わらず、それがネタバレしていなフリを続ける神経は到底理解出来ない。

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