橋下氏机上の空論崩壊 クルクル変わる主張

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 弁護士の橋下徹氏が13日の日曜報道THE PRIME(フジテレビ系)に出演、ウクライナ侵攻に関して持論を語った。しかし、櫻井よしこ氏の反論に遭うなどで主張の根拠を失う形に。持論の「政治的妥結」による決着は現実には無理であることを認めざるを得なくなり、微妙に路線変更を図った。その結果、過去の発言と整合性が取れなくなっている。

■ウクライナに頑張ってもらいたい

日曜報道PRIME出演の橋下徹氏(フジテレビ画面から)

 13日の日曜報道はレギュラーコメンテイターの橋下徹氏以外に評論家の櫻井よしこ氏、佐藤正久氏(自民党、元外務副大臣)、渡辺周氏(立憲民主党、元防衛副大臣)が出演し、専門家として小泉悠氏(東京大学先端化学技術研究センター講師)らもリモートで意見を述べた。

 橋下氏はこれまで、ウクライナ侵攻に関し、「祖国防衛のために命を落とすということが一択になるのは、僕は違うと思うんですね。…ロシアが瓦解するまで、ちょっと国外へ退避してもいいじゃないですか。」(フジテレビ系・めざまし8、3月3日放送、東スポweb・橋下徹氏 ウクライナ人に国外退避のすすめ「祖国防衛のために命を落とす一択は違うと思う」)と、ウクライナの国民が戦わずに国外に逃避することを強調してきた。さらに、ツイッターなどでは政治的な妥結を求めることを主張していた。たとえば、以下のようなツイートがある。

 正義や原理原則論を振り回して妥結は無理と諦めるのは専門家であって、政治家は全てを呑み込んで妥結することが仕事だ。3月9日午前8時50分投稿)

 この日も番組の冒頭で「僕は政治的妥結という方向性もしっかり考えるべきだと思います」とストレートに述べた。

 以下、番組内での橋下氏の発言を簡潔にまとめた。分かりやすくするため、発言の順番は変更してある。

(1)ウクライナ侵攻はロシアの暴挙であり、ウクライナに頑張ってもらいたい。

(2)ウクライナがロシアを追い払えるのなら徹底してやってほしい。

(3)抵抗しきれなかった時の犠牲を考えた時に、軍事的合理性を考えるべき。

(4)ゼレンスキー大統領も国民も自国だけの問題ではないと気づいており、政治的妥結の方向も考えるべき。ただし、政治的妥結とはウクライナの領土割譲ではない。

(5)NATO(北大西洋条約機構)が入るぞという姿勢を見せて、(軍事介入の前に)ロシアと政治的妥結の努力をすべき。

(6)NATOが出ていって、例えばポーランドやルーマニアに置いてある迎撃ミサイルを抑える(撤去するの意味か)代わりに、ベラルーシにロシアが置こうとしている核兵器を抑えるとか、何かしらの政治的な知恵を働かせて、ウクライナが降伏しない形でロシアとの安全保障の枠組みを作るべきというのが持論である。

(7)外交は軍事の裏付けがなければならない。

(8)NATOがいざという時に出ていくぞという姿勢を見せて、プーチン大統領との譲歩の話が始まる。

(9)NATOが今やっていることは中途半端で、肝心なことはやっていない。軍事介入はしないし、戦闘機も供与しない。

■「ちょっと国外へ退避」はどうなった

櫻井よしこ氏(フジテレビ画面から)

 この日の橋下氏の発言からは、3月3日にめざまし8で主張した「ロシアが瓦解するまで、ちょっと国外へ退避してもいいじゃないですか」ということが完全に欠落していた。「国外へ退避しろ」と言った10日後には、追い払えるなら戦え、抵抗しきれなかったら政治的妥結をしろ、と変更しているのである。

 12日までの報道で250万人のウクライナ人が国外に逃げたとされているが、同国の人口はおよそ4400万人。とてもではないが軍関係者以外が全て国外に逃避できるわけがない。橋下氏はウクライナ国民の命を守るための方法として国外退避という机上の空論を振り回していたことにつき、自らの不明を詫びるべきであると思う。

 さらに問題なのは橋下氏の言う「政治的妥結」の問題である。これは番組を見る限り、NATOとロシアによる妥協点を模索し、停戦へと持ち込むことを指していると思える。両者で欧州の安全保障の枠組みを構築し、ロシアが納得できる形にして停戦させるということであろう。

 そもそもロシアが侵攻した表向きの理由は自国民保護であり、欧州の安全保障の構築が政治的妥結となり得るかという点に疑問が残る。それは建前の部分なので目をつぶるとしても、それ以上に問題なのは、欧州の安全保障の構築に失敗したからロシアは侵攻に踏み切ったということである。戦争は外交の延長でもあるが、通常、外交交渉で妥結を図り、うまくいかない場合に武力に訴える。

 軍事力が行使された後で「外交交渉で妥協点を見出しましょう」という主張には「妥協点が見出せなかったから戦争になったんだ」と言われておしまいである。さらに、軍事侵攻に踏み切ったプーチン大統領はルビコン川を渡ったのであり、世界を敵に回して戦いを始めた以上、中途半端な妥協をすれば自らの政治生命が終わってしまう。それを考えれば、侵攻前よりも政治的妥結のハードルは相当高くなっていることは子供でも理解できる。

■いきなり出た軍事力背景の主張

テレビ演説をするプーチン大統領(ロシア国営テレビ・ロシア1画面から)

 このように政治的妥結を主張したものの、それが困難であることが分かってきたせいか、いきなりNATOがいざとなれば戦うぞという姿勢を見せるべきという新しい提案をしてきた。それが(7)と(8)である。

 外交は軍事力を背景にしなければ機能しない。特に国家権力や国威を軍事力に大きく依存するロシアのような国ではそれが顕著である。そこで、軍事介入の前にNATOが出ていくぞ、という脅しをかけて、政治的妥結にもっていけというのである。

 これまで橋下氏はそのようなことは言っておらず、ただ、NATOとロシアで政治的な妥結をと主張していた。代表的なツイートを示そう。

 ロシアと戦えないなら政治的妥結を探れ!ウクライナだけを犠牲にするな!と。3月8日午前1時40分投稿)

 世界大戦を恐れウクライナに強力な武器を提供できないなら、政治的妥結を探るべきだ。3月8日午前1時47分投稿)

 この時点では、NATOとロシアで話し合って妥協点を見出せという主張であった。それは極めて難しいことは、前述の通り。ところが、5日後には軍事介入の前に「いざとなったら行くぞ」という姿勢を見せることで、軍事力を背景にした交渉をしろと変わっているのである。

 ちなみにNATOによる軍事介入、あるいはロシアに脅しをかけるべきという主張は、これまで当サイトが行なってきた。その際には「ブラフ返し」という表現を用いている。

「たとえば、プーチン大統領が核兵器の使用をさらに鮮明にしてきた場合、『核兵器の使用は人類への犯罪。悲劇的な結末を避けるため、悲劇が欧州に及ばないようにするため、いかなる手段をも使って阻止する』とNATO側が宣言したらどうなるか。…互いに疑心暗鬼になった結果、一方が(勝負から降ります)と宣言したのが1962年のキューバ危機でのソ連である。今回も同じような結末にならないとも限らない。」(3月6日公開・プーチン大統領のブラフにかかった橋下氏

「悲劇的結末が迫る今こそ、NATOはせめて期限を切って「飛行禁止空域を設定する準備に入る」ぐらいは言うべき。もし、宣言をして戦う姿勢を見せた場合、ロシアは膠着した戦線から『欧州との全面戦争を避けるために、撤退したのだ』という口実ができることも忘れてはならない。」(3月7日公開・誰も言わないなら僕が言う「飛行禁止空域設定」

■思いつきでウクライナを語るな

 橋下氏が机上の空論を振り回して批判を集めた結果、当サイトの主張に乗ってきたなどと言う気は毛頭ない。多忙な橋下氏が吹けば飛ぶような弱小サイトを目にしていたとも思えず、実際、見ていないと思う。

 しかし、橋下氏の一連の発言を見ると机上の空論を主張し、それが現実味のないものであることを指摘されると主張を引っ込めて別の条件を加え、結果として当サイトの主張に沿うものになってきたのは事実である。

 弁護士で元大阪市長という輝かしい経歴は尊敬に値するが、それらのキャリアは外交や戦争についてはほとんど役に立たないものであるのも事実。正義や国を守る決意を、私人の権利関係の争いと同レベルで考えているから、おかしな主張になっている。

 いい加減、思いつきでウクライナ侵攻について語るのはやめたらどうかと思う。

"橋下氏机上の空論崩壊 クルクル変わる主張"に4件のコメントがあります

  1. 匿名 より:

    このサイト初めて知った。
    松田さんの書く文、めちゃくちゃ的を得てるし面白い。
    読む前は長いなって思ったけどいつの間にか読み切ってた

  2. あかい より:

    いつも拝読させていただいております。
    「ちょっと国外へ退避」「プーチンが死ぬまで~」という発言は、まるで戦争シュミレーションゲームの攻略の様な発言で背筋が凍りました。金美齢氏が橋下徹氏をたびたび「知性がない」とご指摘していますが、こんな稚拙な発言が出るあたり、遠からずということでしょうか?首長や党首までしていた方なのに驚きます。
    しかも、議論で負けた?押し込まれた?と感じたら番組終了直前のテロップが流れている時に弁明?弁解?してツィッターで再度反論するとか、高市さんの時もそうでしたが何回同じことを繰り返すのでしょうかw

    1. BADチューニング より:

      >「プーチンが死ぬまで~」という発言は、まるで戦争シュミレーションゲームの攻略の様な発言

      日本の戦国時代を扱った、シ“ミュ”レーションゲームの古典的名作『天下統一』(システムソフト社)で、
      西日本の中小大名でプレイする場合の「毛利元就が死ぬまで〜」と同じで吹かざるを得ないw

      ※現実の場合、ウラジミール•プーチン氏はまだ死なないだろう、暗殺でもされぬ限りは……

  3. 通りすがり より:

    新しく情報が出るごとにこの男のメッキがぼろぼろ剥がれ落ちてますね。
    戦争と言う有事において持論が全て机上の空論と化してしまっていることに気づかないのか、気付いて焦っているのか知らないが、TV番組で言い負かされた後でTwitterで負け惜しみ&捨て台詞。見苦しいことこの上ない。
    なにもハシゲに限った話ではないが、近年の弁護士の質の低下は見るに堪えませんね。
    石原慎太郎はこの男の何に共感したんだろうか。

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