蓮舫氏の矛盾演説に聴衆戸惑い 熱気欠く街頭

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 東京都知事選(7月7日投開票)の蓮舫候補(56)が3日夕、京王線調布駅中央口駅前広場で街頭演説を行なった。演説の冒頭で矛盾した話をしたことで多くの聴衆が戸惑い、蓮舫氏自身のテンションばかりが上がるチグハグな内容に終わった印象。マスメディアで伝えられる蓮舫氏支持の熱気と現場の実際の空気には乖離があるように感じられた。

◾️少子化の後に多様性尊重のおかしさ

演説する蓮舫氏(撮影・松田隆)

 有力候補の蓮舫氏の登場に調布駅前には多くの人が詰めかけたが、蓮舫氏は”つかみ”で失敗した。少子化の問題を取り上げ、東京都の2023年の合計特殊出生率が過去最低の0.99になったことを指摘し、それに対する小池都政を批判。

 「小池百合子さんもやっぱり自民党の発想の人なんです。今年度の予算、東京都の出生率が下がっているから何をやるか。東京都が婚活アプリをつくる。合コンパーティーをやる。出会いのイベントをつくる。…これに3億の予算。私は発想があまりにも違うと思ってるんです。」

 このあたりはまだいい。確かに合計特殊出生率が1.0を割る緊急事態に、民間がやるような婚活アプリの製作にどれほど効果があるのかは疑問。やらないよりやった方がいいのは確かであるが、費用対効果を考えればやらない方がいいという結論に至っても不思議はない。

 そこまでは多くの聴衆も納得していたと思う。ところが、蓮舫氏はこの話の後に、多様性の尊重の問題を出してきたのである。

 「私ね、この東京はもっと多様性があっていいと思ってるんです。結婚するという選択をする人、結婚をしないという判断をする人、大好きなパートナーと暮らすという選択、選択的夫婦別姓が認められるまで婚姻届を出さない男女カップル、1人で子供を育てるという決断、あるいはお一人様になるという選択、どんな人生を選んでも、どんな選択をしても、私はこのすべての生き方をしっかり尊重して支えることが行政のトップの基本として持たなければ東京は豊かにならないと思ってるんです。」

 ここで拍手待ちをしたのか2、3秒ほど沈黙して会場を見回した蓮舫氏であるが、拍手は全く起きなかった。現場で聞いていた筆者(松田隆)は思わず「え?」となり、それは周囲にいた人も同じであったように思う。

 少子化の話を振っておいて、その結論が多様性の尊重である。問いと答えが食い違っている話を聞かされれば聴衆の頭の中は(何を言ってるの?)となる。さらに結婚しない人や、おそらく同性愛者を指す「大好きなパートナーと暮らすという選択」を尊重しようということは、少子化をさらに進展させることになると考えるのが通常の思考であろう。

◾️一般の聴衆はがっかり?

 少子化について蓮舫氏は現役世代の手取りを増やす、非正規雇用の人を正規化するなどで経済的な恩恵を与えることで子供の数が増えるという趣旨を公約の中に入れている。その議論は、非正規雇用者数と婚姻数の間に有意な因果関係は認められず根拠がないということは、以前に指摘した(参照・蓮舫氏 根拠なき”本物の少子化対策”)。

 今はその点は措くとして、少子化の話題をふったのなら、自身の公約である現役世代の手取りを増やして東京都の合計特殊出生率を増やすという説明をすべき。そうすれば聴衆も少子化の問題点と蓮舫氏が考える解決法が示され、拍手待ちをしなくても自然と支援者からは拍手は起きたであろう。支援者は何を言っても蓮舫氏の言うことを鵜呑みにして褒め称える。

 一方、一般の聴衆は蓮舫氏の話で本当に問題の解決になるのか、実現性のある話なのかを自分なりに吟味して投票の際の参考にするであろう。その意味では直接、話を聞いたことの価値はあるのかもしれない。

 ところが、少子化の話をふって、その答えを何も言ってくれないのなら、一般の聴衆は(何のために聞きにきたのか)とがっかりし、人によっては(この人は筋道だった話が出来ないのではないか)と都知事としての資質を疑うかもしれない。

 こうした演説も、筆者が書く文章も似たところがあり、前提条件が間違っていると、その後の話は聞いてもらえない、読んでもらえないと思った方がいい。

◾️噛み合わない問いと答え

 こうした細かい点をことさら論(あげつら)う、揚げ足取りのように思われるかもしれない。ただ、蓮舫氏に関しては根本が間違っているために論理的な話ができないのではないかと感じられる。

合計特殊出生率0.99は異常な事態

小池都知事の婚活アプリを製作するなどの策は無意味

少子化の解消のために女性にいかに子供を産んでもらえるかを考える

現役世代の手取りを増やす、正規雇用を進めることで少子化を解消する

 実現性や因果関係に誤りがあると思うが、蓮舫氏の主張からすれば、これが論理的な話であろう。ところがの後に多様性の話をするわけで、そこでは前述のように「結婚をしないという判断をする人、大好きなパートナーと暮らすという選択」を尊重すると言えば、少子化対策とは逆の方向に進んでしまう。

 それらを考えて、問いと答えが噛み合わない話をしたのではないかと思われる。その結果、一般の聴衆は頭の中が「?」となり、最後まで会場は盛り上がらないまま終わってしまったように思う。

◾️蓮舫氏は張子の虎か

 蓮舫氏は小池氏の背中が見えてきたと言い、会場では周辺の人に蓮舫氏に投票するように説得してほしいというお願いが繰り返されていた。各種調査でも小池氏がリードし、蓮舫氏と石丸伸二氏が追う展開になっていると報じられている。

支援者と話す蓮舫氏(撮影・松田隆)

 この日は多くの聴衆が詰めかけたがプラカードを持ち、蓮舫氏のカラーとも言えるピンクの色を身につけた高齢者が多く目についた。6月28日に同じ調布駅前にやってきた石丸伸二候補の時はそうした組織だった応援の人は全くと言っていいほど目にしなかった。

 そのような状況を考えると、蓮舫氏が小池氏を激しく追っているという報道は疑ってかかった方がいいように思える(TBS NEWS DIG・小池氏ややリード 蓮舫氏激しく追い上げ 石丸氏が追う 田母神氏ら他候補は伸び悩み【都知事選 中盤情勢】)。

 これはあくまでも筆者の勝手な感想であるが、蓮舫氏が声を枯らして叫ぶ姿は張子の虎のように見えた。都民は報道に惑わされず、候補者の弁をよく吟味して次代の東京を担う人物を決するべきであろう。

 なお、今回の都知事選には蓮舫氏以外に三選を目指す小池百合子氏、前安芸高田市長の石丸伸二氏、元航空幕僚長の田母神俊雄氏、政治団体職員の桜井誠氏、タレントの清水国明氏らを含め、計56人が立候補している。

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