出生数72万人の衝撃 少子化防止へ”カンフル剤”を
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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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2024年に生まれた子供の数(外国人を含む)が過去最少の72万988人であったと、厚生労働省が27日に発表した。統計を取り始めた1899年(明治32)以来、最も少なく、2023年から3万7000人余の減少となった。政府は閣議決定した「こども未来戦略」で2030年までの期間を少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスと位置付けており、ゴールまで残り6年を切っている。止まらない少子化に対しカンフル剤を投与すべき時は来ている。現行50万円の出産育児一時金を倍増するぐらいの大胆な手を打つ必要性があると考える。
◾️少子化解消の切り札が保険適用化?
厚労省の発表はある程度予測されたとはいえ、少子化の流れが急激に進んでいることを示す数値であった。2014年の出生数は100万3609人(e-Stat・人口動態調査 人口動態統計 確定数 出生)と大台を確保していたが、10年後にはその72%となってしまった。前年から5%の減少で2025年は70万人割れの可能性もある。
仮にこの先、年間72万人が生まれ続け、すべて90歳まで生きたと仮定すると、90年後の2114年の人口は6480万人(72万人×90年)になる。2024年1月1日時点の日本の人口は1億2488万人であるから、ほぼ半減。これは72万人の出生が維持されたと仮定した、非現実的で楽観的な試算であり、年々出生数が下がっていることを考えると、さらに減少のペースは早いと思われる。2070年には約8700万人に減少するとの試算もある(国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(令和5年推計) 」結果の概要を公表します)。
「こども未来戦略」では少子化対策として、児童手当の抜本的拡充、出産等の経済的負担の軽減、医療費等の負担軽減、高等教育費の負担軽減、子育て世帯に対する住宅支援の強化、妊娠期からの切れ目ない支援の拡充、幼児教育・保育の質の向上など、多くの項目を挙げている。それらが少子化を解消し、子供を産み育てやすい環境の整備に資するのは明らかであるが、根治療のようなもので、即効性という点では疑問が残る。
出生数72万人という衝撃的な数字が出た今、求められるのは即効性のある政策の実行であろう。そして、それは上述の根治療と併用していくことができる。1つの例であるが、出産育児一時金50万円を一気に100万円へとアップするなどが考えられる。
「(一時的ではあっても)経済的負担が軽減され、安心して産めるようになる」という意識を刷り込み、出産するかどうか迷っている夫婦の背中を押すことである。(2人目は経済的にも厳しい)と考えている夫婦が(とりあえず、産めば30万円程度はプラスになる)(児童手当もあるし、高校も無償化されるなら…)と前向きにとらえるきっかけになれば、1万人でも2万人でも増える可能性はあるかもしれない。特に出産適齢期の上限に近い女性がギリギリの年齢で産む選択をしてくれれば、赤ちゃんの先取りではない、本来、生まれる予定がなかった生命が誕生する期待がもてる。
◾️批判を覚悟の政策も必要
こうしたことを書くと「生命を金で誕生させようとしている」「女性を産む道具と考えている」などの批判が集まることが予想される。確かに、子供をつくるのは女性、夫婦が人生全体を考えて決するものであり、それを国策として産む方向にもっていかせることに反発を感じる人がいても不思議はない。
しかし、子供の数の確保の可否は、国家の未来に直結する。政治家は30年先、50年先の子孫がよりよい社会でいられるようにする責務があり、それは我々国民も同様である。現在の社会体制を維持していく上で一定数の人口が必要なのは明らかで、我々が子孫に遺すべきものの1つは、彼らのより多くの”仲間”である。その意味で子作りは究極のプライベートにかかわるが、同時に将来の国のあり方を決める重要な政策でもある。国の将来が危機に瀕しているというのであるから、決断すべきは今しかない。
実行するには、財源の確保が問題となる。50万円を80万人に上乗せするとすれば、合計で4000億円。これをどこから調達すればいいのか。国家の緊急事態であるから省庁の垣根を越えても調達すべきで、たとえば農水省が管轄の中央競馬の売り上げに課税するなどが考えられる。日本中央競馬会(JRA)の2024年の売り上げは3兆3337億円余で、売上の10%と利益の50%が国庫へ納付される。この売り上げに1%課税すれば、333億円が捻り出せる。1%分、馬券的中した時の配当金が少なくなるが、そこは競馬ファンには赤ちゃんのために我慢してもらうしかない。このような方法が実現可能なのか分からないが、それぐらいの覚悟をもって政治家には取り組んでいただきたいと思う。
◾️岸田内閣で閣議決定された保険適用化
夢物語のような話をするのは、これまでの政府の対策が実を結んでいないと評価せざるを得ないためである。様々な少子化対策が打ち出されてきたが、10年で出生数が72%となった事実を見れば、成功しているとは思えない。その象徴とも言えるのが今、話題になっている分娩費用の保険適用化。
岸田内閣で2023年12月22日に閣議決定された「こども未来戦略」では、「2030年代に入るまでのこれからの6~7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスであり、少子化対策は待ったなしの瀬戸際にある。」と加速する少子化への危機感が明記された。
具体的政策については「『加速化プラン』として、今後3年間の集中取組期間において、できる限り前倒しして実施する。」とし、その中の1つが「2026年度を目途に、出産費用(正常分娩)の保険適用の導入を含め、出産に関する支援等の更なる強化について検討を進める。」という分娩費用の保険適用化であった。
現在、出産は保険適用外であり、出産育児一時金として50万円が支給されている。このような現金支給を保険適用という現物支給に変更し、全国で均一の医療サービスが受けられるようにすれば妊産婦が安心して子供を産めるようになるという理屈であろう。
厚生労働省では、この保険適用化の導入を含む妊産婦への支援のあり方を検討する「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」を2024年6月から開始した(同省・妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会)。
◾️産婦人科医サイドは猛反発
ところが、この保険適用化に産婦人科医サイドは猛反発。もともと産婦人科の提供するサービスは健康保険の対象とはならない部分も多く、また、地域によって産院経営のコストが大きく異なるため、特に都市部においては保険適用によって経営が行き詰まるところが多発する、その結果、妊産婦が安心して産める環境が損なわれるとして、導入に反対している。
こうした中、2024年9月に行われた第4回の検討会で健康保険組合連合会(宮永俊一会長)の佐野雅宏会長代理は、保険適用化による少子化防止への影響について「現時点で直接に出生数に影響するのかどうかはよく分かりません。…現時点で出産費用の保険化が出生数にプラスになるかと言うと、そこについては何とも言えないと思います」と保険化と出生数増加の因果関係の有無は不明であると言ってしまったのである(参照・少子化対策の効果「分からない」分娩費用保険化迷走)。
結局、保険適用化は財務省の発案による一種の財政政策であり、それを少子化対策に無理やり関連づけて閣議決定されたにすぎないと、見る者に不信感を抱かせるものとなってしまった。保険適用化を進めたい勢力としては、少子化対策というよりも安全安心の周産期医療体制作りのために保険適用化をという主張に流れつつあるのが第7回の検討会が終わった段階での状況である。
◾️国民一人ひとりが意識を
こうした中、「保険適用化は少子化対策だったのではないか」と原点にかえるように主張する構成員も出てきている。2024年12月の第6回の検討会では奈良県立医科大学・今村知明教授が「…この議論の本質は日本の少子化をどう止めるかということだと思うのですが、ここ5年ほどの間に少子化のスピードが加速していて、ここまでくると国の存亡に関わる事態になってきていると思います。ですから、この議論、時間をかけてやっていくことは私は危険なことだと思いますし、国の存亡が関わっていることですし、これは多少、お金を入れても解決していかないと日本国が本当に滅びてしまうと感じております。」と話した。
さらに「そのためにこの医療体制と保険の問題を一体として考えるべきだと思いますし、その結論は急いだ方がいいと思っています。ただ、その時にお金がないからという理由で、かえって出生数が減るようなことになってしまうのは逆効果だと思うので、そこがこの議論の難しいところだと理解しております。」と続け、参加者の間から「素晴らしい!」という声が上がった(参照・少子化対策の基本に還れ 保険適用化で医大教授発言)。
こうした検討会の流れを考えれば、冒頭で示した出産育児一時金の大幅増額というのも、全くあり得ない話ではない。少子化対策には即効性のある施策と長期的な施策の両方が必要。出産育児一時金の増額のような直接的なインセンティブが求められており、政府は今こそ決断すべきと考える。
善し悪しは別として、産んだ方が特という状況を作らないと駄目でしょうね。
あとは、幼少期からの教育ですね。大きくなったら子供を産んでね、と。
異次元の対策というのであれば、それくらいしないと効果は出ないでしょうし。
記事中に出てきた策は、産んだ後の話が多くて、そこより前の対策を出さないと駄目だろうという気がします。
イスラエルは確かそれなりの出生数を維持していたかと思いますが、あれは、出産した女性には徴兵が免除されるとか、そういう制度(?)があったかと。
日本で徴兵はないので、いっそ、子供を3人以上産んだ家庭は消費税0%、2人で消費税5%、1人で8%固定みたいな特典が必要でしょう。マイナンバーカードを精算時に提示すれば可能になるようにすればいいでしょう。
こういうことをすると、産みたいのに産めないという人から批判が必ず出るでしょうから、不妊治療とかも保険適用するか、補助金を出すようにするのと、海外で実施されている子宮移植も可能にと。
国民の側がそこまでする? と引くくらいのことをしないと、効果の出る対策にならないでしょうね。
産んだ方が得という状況を作らないと、というのはその通りだと思います。10年で出生数が七掛けになってしまった危機的状況を解消するためには、それぐらいの変化をもたらすドラスティックな政策が必要と思います。
その意味で不妊治療の保険適用は一定の効果があるように見えますが、一方で、それは生まれる予定だった赤ちゃんを先取りしたに過ぎないというパターンも含まれており、効果を見極めるのは早計という考えも日本産婦人科医会では示しています。
不妊治療の保険適用 少子化対策に有効?:https://reiwa-kawaraban.com/politics/20250113/
>>国民の側がそこまでする? と引くくらいのことをしないと、効果の出る対策にならないでしょうね。
おっしゃる通りです。石破さんがそこまで腹を括ってできるかどうかにかかっていると思います。