免職教師の叫び(28)優秀賞HBCに真実はあるか

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 北海道放送(HBC)が制作したラジオ番組「隠された性暴力 ~28年前の少女からの訴え~」が9日、日本民間放送連盟賞で優秀賞を受賞した。札幌市で28年前のわいせつ行為を理由に免職された教師・鈴木浩氏(仮名)の一連の事件を描いたもので、被害者と称する写真家の石田郁子氏の苦悩などを明らかにしていく内容が高い評価を受けたという。しかし、当サイトが指摘したきたように、石田氏が虚偽を述べ、証拠を捏造していることは明らか。これが日本のメディアの現在地である。

■鈴木氏は2020年HBCに抗議

幾島奈央記者(HBC画面から)

  日本民間放送連盟賞は「番組、CM、技術の質的向上と放送活動のより一層の向上を図ることを目的に」創設された(一般社団法人日本民間放送連盟HPから)。今回、優秀賞に選ばれたHBC「隠された性暴力 ~28年前の少女からの訴え~」は、制作は幾島奈央記者。

 表彰された理由につき「なぜ性暴力が隠され、被害者の苦しみが続くのか。石田さんの苦悩や、その取り組みを通じて、課題を明らかにしていく内容が高く評価されました」(HBC・日本民間放送連盟賞 HBCラジオドキュメンタリー「隠された性暴力28年前の少女からの訴え」が優秀賞)と、HBCのHP上で紹介されている。

 鈴木氏は2020年3月と5月にHBCに抗議をしている。一審東京地裁で石田氏の訴えが棄却されているにもかかわらず、同局の番組内で加害者扱いされたことに対するもの(連載(21)現在進行形の報道被害)。こうした抗議に対してもHBCは姿勢を改めず、石田氏の言い分をそのまま伝え、鈴木氏は卑劣な教師という位置付けは変わることはなかったようである。

■明らかにされた石田郁子氏の虚偽

オコタンペ湖展望台の写真撮影を3Dで再現(製作:松田隆)

  この連載を初めてご覧になる方も少なくないと思われるため、客観的な証拠、証言により、これまでに石田氏の虚偽が明確になっている点を記す。

・床に横にされた:石田氏の主張は1993年3月、卒業式の前日に鈴木氏のアパートでキスをされ、床に横にされた。

→共通の友人の証言から、当時、部屋はひどく散らかっており床に横になるスペースはない(連載(12)CAN YOU CELEBRATE?

・交際時期:石田氏の主張は1993年3月~1997年夏。

→共通の友人の証言から1997年夏~1998年秋頃(連載(12)CAN YOU CELEBRATE?

・オコタンペ湖展望台:石田氏は高校3年の頃、オコタンペ湖の展望台で撮影したとする写真をメディアや市教委に提出。

→3Dソフトで現場を再現した結果、写っている2人の姿は合成されたものであることが判明(連載(19)影なき闇の不在証明

 上記3点は当サイトが明らかにした。これ以外に石田氏が主張し東京高裁が認定(東京地裁は認定せず)した性的な被害とされるものは5点あるが、どれも鈴木氏は明確に否定しており、明確なアリバイがあるものも少なくない(連載(4)疑わしい元教え子の主張)。

 そもそも東京高裁が認定した部分は判決理由中の判断に過ぎない。法的には既判力の及ばない部分であり、鈴木氏は勝訴したためにその部分を最高裁で争えないという状況であることを思えば、石田氏の主張を盲信することは真実を見極めることを難しくする。

■番組制作の意図はどこに

札幌のランドマーク・テレビ塔(提供・鈴木浩氏=仮名)

 HBCはこの番組で、鈴木氏の言い分については「今月、HBCの取材に初めて応じた元教諭。性暴力についてあらためて、全面否定しました」と放送した。

 さらに「元教諭は、教育委員会が裁判前には厳しく調査した上で処分しなかったのに、判決を理由に判断を変えたことを批判します。『皆さんが思っているような簡単な調査ではありません。ガッチリ調べられました。複数の人から1回3時間、3回も事情聴取され厳しい追及を受け、それでも処分されなかったんです。なのに判決の後、手のひら返しで処分されたことに強い憤りを感じています。身の潔白を証明したい』。元教諭は札幌市人事委員会に処分の取り消しを求めています」と続けた(同番組の録音から再現)。

 大事なのは前半の全面否定している部分。石田氏が中学・高校時代に性暴力を受けたという主張を全面的に否認しているのであるから、もし、鈴木氏の言い分が正しければ、番組は成立しなくなってしまう。メディアは真実を追求し、真実を報じなければならない。

 東京高裁が事実認定をしたから、市教委が免職処分にしたから、真実は石田氏の言う通りになるのではない。真実は1つしかなく、真実は公的機関の決定に左右されない。それを見極めるのがメディアの仕事である。

 鈴木氏は言う。「幾島記者からはzoomで取材を受けました。事前に弁護士から地裁と高裁の判決文、人事委員会に提出した申立書を送付しました。それには非常に詳しく私の主張が書かれています。(この記者はちゃんと読んでいるだろうか)と思って、『先に渡した資料で…』と言ったら、幾島記者はその内容はよく把握していました。それなのに、番組内容は石田氏の話を全て事実という前提の上で作られていました。事実の真偽の検証は全くされていません。」

 取材前、事前に鈴木氏に手渡された質問には以下のような質問があった。

・交際や性的行為について同意はあったのか

 それまでの経緯を知っている、あるいは、事前に送られた資料を目に通したのであれば、「交際や性的行為は本当にあったのか」と聞くべき。それがそのような事実があったことを前提の質問をしてくる時点で、番組制作にあたっての意図が分かる。

■石田氏が責任を追及されたらどうするのか

2021年4月、ネットテレビ出演時の石田郁子氏(ABEMA画面から)

 現在、鈴木氏は復職に向けて動いており、札幌市が免職処分を取り消す可能性はある。仮にそうなった場合、石田氏は刑事・民事ともに責任を問われることもあり得る。

 こうしたことは鈴木氏がメディアの取材に答え、石田氏の主張は虚偽であることを言い続けてきた。しかし、ほとんどの媒体がまともに扱わず、石田氏を被害者に固定してきた。

 鈴木氏はネット上で卑劣なわいせつ教師とされ、数えきれないほどの誹謗中傷を受けてきた。しかも、石田氏は精神的に不安定であることは裁判でも明らかにされており、鈴木氏は石田氏の妄想癖に苦しめられたことを明確にしている(連載(26)聖女の仮面 ほか)。

 こうした事実を当サイトが明らかにしているのであるから、報道機関としては少なくとも調査し、誤った報道があれば訂正すべき。今回の受賞についても「事実を調査中で状況が変わる可能性があるから、ノミネートしないで欲しい」と断るのが常識あるメディアの行動と思われる。もし、当サイトが示したようなことが事実で、石田氏が刑事・民事で責任を問われる事態になったら、HBCはどのように対応するつもりなのか。

■松本サリン事件の教訓は生かされず

 1994年の松本サリン事件で河野義行氏が犯人扱いされ、メディアは後日、総懺悔した。その時に報道は先入観を持って報じてはいけないと学んだはずである。しかし、その経験は、この事件については全く生かされていない。

 当サイトの真実追求も道半ばであり、今も調査、取材を続けている。しかし、ここまでの段階で石田氏の虚偽が複数明らかになっており、石田氏は当サイトの取材を断っている。

 その事実を思えば、この事件に関する報道は、少なくとも従来の報道で間違っていた点はあることは認め、再度、真相に迫る努力をするのがメディアとしての責務であろう。鈴木氏に対する重大な人権侵害が行われ、それを見て見ぬフリをして、その番組に優秀賞を贈る。番組を作る方も作る方なら、それを評価する連盟も信じ難い。

 この優秀賞が、将来、HBCが真実を見抜く目がなかったことを示すモニュメントとなっているのではないかと、他人事ながら心配している。

第29回へ続く)

第27回に戻る)

第1回に戻る)

    "免職教師の叫び(28)優秀賞HBCに真実はあるか"に4件のコメントがあります

    1. 月の桂 より:

      驚きました。
      今回の受賞により、更に多くの人が石田氏を被害者だと思い込むのではないでしょうか。
      これは、報道被害というレベルではありませんね。もはや、報道による犯罪だと言っても過言ではないと思います。

      世の中の人は、どうして物事を一方向からしか見ないのでしょうか。視野狭窄とも思えるような狭い認知をする人が多過ぎる。
      人は自分が信じたいように物事を見る傾向があります。自分が信じたものが覆るようなものは、無意識に五感から遠ざけるのです。
      見ているが見えていない、聞いているが聞こえていない状態ですね。

      メディアが流す情報を疑うこともせず、信じきってしまう。自分が信じたい事実を補強する情報しか受け入れないことにより、全く事実とは違う事が流布されていることに気が付かない。メディアは、善良な市民をそうやって操作していることに、どうして気付かないのでしょうか。

      歪んだ正義感は、相手を叩き潰します。逃げ道も与えず、1人を大勢で攻撃することに何の躊躇いも無いようです。この国の良い文化だった武士の情けなどは、死語になったようですね。

      鈴木氏(仮名)は、大変な人権侵害に遭っています。自分に置き換えて考えて頂きたい。
      被害者ビジネスを許してはなりません。
      人を貶めて私欲を得ることなど、あってはならないことです。

      1. 月の桂 より:

        追伸です。大事なことを書き忘れていました。(-_-;)

        今回の記事で、石田氏の虚偽が明確な部分をまとめて下さったことに「いいね」します。私達のように、このシリーズを初回から読んで来た者と初めて読まれる方では情報量に差があります。特に重要な部分(記事)をピックアップして頂いたことで、事実関係が理解しやすくなったと思います。
        松田さん、(*^ー゚)b グッジョブ!!

    2. MR.CB より:

      》》ジャーナリスト松田様

      「この優秀賞が、将来、HBCが真実を見抜く目がなかったことを示すモニュメントとなっているのではないかと、他人事ながら心配している。」

      【子曰わく、衆(しゅう)これを悪(にく)むも必ず察し、衆これを好むも必ず察す】
      論語の一説が思い浮かびます。
      人は先入観や偏見で物事を判断しがちです。選挙戦や宗教、そして有名人のゴシップに至るまで、メディアの報道だけで最も簡単に信じてしまう。
      自らの思考や検証を放棄して、安易な共感ほど罪深いものはないと思います。

    3. 名無しの子 より:

      伊藤詩織事件と構図が全く同じですね。被害者だと声を上げれば、メディアが真の被害者のように祭り上げてしまう。そして、加害者とされた側に、凄惨な誹謗中傷。

      もうすぐ、はすみとしこさんと伊藤詩織の裁判が結審するようですね。はすみとしこさんは、伊藤氏のことを批判したということで、針のムシロになりました(それが伊藤氏のことだと指摘すらしていませんが)
      でも私には、ある意味、はすみさんは松田さんと同じ志を持った方のように思います。

      裸の王様という童話がありますね。自分が人からおかしく思われないように、王様が裸であることを言えない人々。その中でたった一人「王様は裸だ」と叫んだ子供。それが、松田さんやはすみさんと重なるのです。
      しかしそれこそが、本来のジャーナリストの姿であり、風刺漫画家の姿です。大衆受けすることを計算して書くのは、小説家だけで充分です。
      今回賞を取られた記者は、ご自分を恥じてほしい‼️そして反省して、今度は、真実を追求する側になってほしい‼️
      松田さん、この事件を引き続き追求して、ぜひとも、偏向報道したメディアに突きつけてもらいたいです‼️松田さんこそ、賞を受賞するにふさわしい記者だと、私は思います。
      また、はすみとしこさんの裁判が結審したら、そのことについての松田さんの見解も、ぜひお聞きしたいです。
      また、よろしくお願いいたします。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です