札幌市教委が情報隠し 教師免職絡みの文書非公開(2)

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

◾️破綻した存否応答拒否の理由

札幌市教委が入るSTV2条ビル(提供写真)

 こうしたことから、当サイトでは高木氏に連絡を取り、開示を求めた文書がどのようなものだったかを取材し、2024年11月9日付けで公文書公開請求を行なった。

 請求から4日後の同13日に札幌市教育委員会教職員課の担当者から直接電話があり、文書の特定に関して問い合わせがあった。その部分は「高木氏が記事を書く際に求めた文書があるはずなので、それと同じものを」と説明した。そのことで公文書は特定できる上、一度、公開している文書だから非公開にする理由はないということでそのように指定し、求めたのである。

 その1週間後の11月20日付けで「公開決定等期間延長通知書」が送付された。公開決定等の期間を11月10日から同25日にまで延長するお知らせであるが、その理由は以下。

 「対象公文書の内容が複雑で、短期間にその内容を整理し公開、非公開等の検討、判断をすることが困難であるため。」

 この時点で対象公文書が存在することを認め、その内容が複雑だから(もう少し待ってね)というのである。当サイトは過去に開示された公文書を公開せよと言っているのであるから、対象公文書が存在するのは当たり前である。

 ところが12月19日付けで「公開決定等期間延長通知書」の差し替えなる通知が送付された。これは上記の理由などに誤記があったので、差し替えられるというもので、新たな理由は以下。

 「請求内容の性質上、短期間にその内容を整理し公開、非公開等の検討、判断をすることが困難であるため。」

 要は対象公文書の存在を明記しない形にしてきたもので、11月20日付けの通知で対象公文書の存在を認めた理由は「誤記」、誤って記述してしまったというのである。そうした経緯をたどっての12月23日付けの通知である。市教委からの「公文書の存否を明らかにしない理由」の一部を示す。

 「本件対象公文書の公開、一部公開又は非公開決定を行うと、本件対象公文書の存在を前提として決定するため、…特定の個人について、わいせつ行為に関する申出の有無を明らかにすることと同様の効果を生じることとなる。特定の個人がわいせつ行為に関する申出を行ったか否かということは、当該個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものであることから…本件請求に対して、条例第10条を適用し、存否応答拒否の決定を行うこととする。」

 石田郁子氏が過去に札幌市教委にわいせつ行為に関する申出をしたかどうかが識別できてしまうから、文書があるともないとも言わずに一切、答えないというのである。そうであれば、4年前に高木氏が請求した時も同じ理由で存否応答拒否をすればいいが、それはせずに開示請求に応じている。今回送付してきた通知の「公文書の存否を明らかにしない理由」そのものが論理的に破綻している。

◾️札幌市教委の不祥事発生は当然

 一読しておかしいと感じる理由で開示をしなかった理由は何か。これは現在、札幌地裁で係属中の裁判に悪影響を及ぼすと考えたからと思われる。市教委は審査請求の時は2021年7月19日付けの再答弁書で「(檜田部長は)『わいせつ行為がなければ懲戒処分は行わない、一度出した決定は変えない。7月には私(同部長)が直接、石田氏に会って、処分はしないことを伝えてきます。』との発言をした事実はない。」と発言の事実を全面的に否定している。

 係属中の裁判でも基本的には同じ立場と思われるが、今回の公文書公開請求で手にした文書が証拠として提出されれば、虚偽の事実を審査請求や裁判で述べていたことが明らかになりかねない。

 公文書公開請求は当然、「松田隆」の名前で行っている。当該裁判では松田隆の名でオコタンペ湖の写真に関する調査報告書2通を提出している(札幌教師免職取消し訴訟 当サイトが報告書提出)。市教委も当然、請求者が調査報告書の提出者であることは認識し、公文書を開示すれば、新たに証拠として提出されかねないと警戒したのではないか。

オコタンペ湖展望台を訪れた筆者

 札幌市教委に申し上げたい。一度は公開した文書を、その存在を認めながら、後から(間違って書いちゃった)と子供のような言い訳をして、「文書が存在するかどうかも答えません」とする対応を恥ずかしいと思わないのか。少しは恥というものを知った方がいい。

 情報公開制度は前述したように「公正で民主的な市政の発展に寄与」することが目的である。行政が裁判で負けそうなので公開しません、文書の存否すら答えません、ということが許されるはずがない。

 何かと世の批判を浴びることが多い札幌市教委であるが(前述の「黒塗り報告書」を謝罪 札幌市教育長の悪評 参照)、今回の対応を見れば、数々の不祥事も起きて当然と思わずにはいられない。

(終わり)

(1)へ戻る

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です