“卒業証書”やっぱり例のサイトで15万円? 前市長起訴

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 伊東市の田久保眞紀・前市長(56)が30日に有印私文書偽造・同行使と地方自治法違反の罪で在宅のまま起訴された。起訴状では、学長と法学部長の名前が刻まれた印鑑をインターネットを通じて業者に作成させ、入手したと報じられている。当サイトでは昨年7月に偽造を請け負うとする業者との接触に成功したが、本件起訴と明らかにされた状況から、この業者による作成の可能性が高まった。

◾️田久保被告自ら押印し偽造

画像はイメージ(AIで生成)

 起訴状によると、田久保眞紀被告は以下のようにして、卒業証書と題する書面を作成したとされる。

 「学長と法学部長の名前が刻まれた印鑑をインターネットを通じて印鑑製造販売業者に作成させて入手。2025年5月29日ごろから6月4日にかけて、これらの印鑑を押印するなどして自分の卒業証書を偽造し、6月4日に市役所で複数人に示したとされる。」(朝日新聞DIGITAL・田久保・前伊東市長を在宅起訴 自ら押印して大学の卒業証書を偽造か)。

 「昨年5月の当選(筆者註5月25日)後の手続きで市職員から卒業証書などの提出を求められた直後に、偽造に使った学長らの印鑑を業者に発注していたことが30日、捜査関係者への取材でわかった。」(讀賣新聞オンライン・田久保真紀前市長、当選後に卒業証書求められ業者に「学長印」発注か…本来の印鑑と肩書など異なる

 被告は当選直後の29日以後に業者へ印鑑を発注し、自ら押印して卒業証書を偽造したとみられる。2025年6月初旬に市議全員に同被告の学歴が詐称である旨の文書が届けられ、同10日の議会運営委員会で議題に上がっている。起訴状で5月29日という日付が特定されている以上、何らかの裏付け証拠があるとみられる。業者とのやり取りのメールが残っていたか、あるいはデジタルフォレンジックで復元された可能性がある。6月4日という日付は、その日に市役所で複数人に見せていることから、その日までには完成させていたということであろう。

 報道された起訴状の内容からうかがえるのは、田久保被告が偽造した印章を用いて卒業証書と題する書面を完成させた点である。

◾️深まる疑念 業者とは…

 当サイトでは過去に、証書の偽造を請け負う業者A社と接触して、そのような闇の取引の実態について聞いた。現在もそのサイトは残っており、戸籍謄本20万円、卒業証書15万円、医師の診断書10万円などの価格が掲示されている。

 A社とのやり取りの中で、当時の伊東市長(田久保被告)の証書も作成したのではないかと聞くと、「その質問に関してはお答えできません。慎重にならなければならないので、ご理解ください」(※一部表現を変更してある)とのことであった。明確に否定しないことから、A社の関与が疑われた(以上、参照・卒業証書15万円で偽造の業者 田久保市長まさか…)。

 今回、起訴されたことで、さらに関与の可能性は高まったと言っていい。昨年7月の当サイトとA社とのメールのやり取りをする中で、A社は「制作期間は2~3日」と極めて早期に完成できることを伝えてきた。それが事実であれば5月29日に依頼すれば、遅くとも6月1日には完成することになる。

 また、現在も存在するA社HPの卒業証書偽造のページには「印影ではなく実印」と明記されている。印刷された印影ではなく、実際に印鑑も偽造して押印すると謳っているのである。

 起訴状では田久保被告は業者に全てを作成させたのではなく、最後の押印は自分で行ったことになり、実際に印鑑を押して仕上げるという点で、A社の説明内容と一致している。A社は当サイトへの返答だけでなく、仕上がりに要する日数や実際の印鑑を使用していることなどから、田久保被告の事件への関与が、さらに強く疑われる状況になったと言っていい。

◾️なぜ田久保被告が押印

写真はイメージ

 ここで問題になるのは、なぜ、田久保被告が自ら押印したのか、という点である。仕上げの工程を自ら行ったことで、有印私文書偽造の実行行為を自ら担ったとみることができる。

 その点はいずれ公判で明らかになってくると思われるが、現時点では業者サイドのリスク管理という観点から説明するのが比較的合理的であるように思われる。

 田久保被告が起訴された有印私文書偽造罪は以下のように規定されている。

【刑法159条】

1 行使の目的で、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は、三月以上五年以下の拘禁刑に処する。

一 他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造し、又は偽造した他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造する行為

 印章等を利用して文書等を偽造する行為であり、送付された印章を卒業証書と似た書類に押印することで、偽造卒業証書が完成することになる。そうなると、私文書偽造の実行行為を担ったのは、押印した田久保被告という構図になる。

 一方で業者は、卒業証書のような書面と印鑑を作成したにとどまり、少なくとも同条3項の成否が問題となる。

【刑法159条】

3 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書等又は電磁的記録文書等を偽造し、又は変造した者は、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。

 この場合、無印の私文書偽造にとどまる可能性があり、そうであれば有印私文書偽造より法定刑はかなり軽い。業者は違法な行為をしている認識があるため、最後の押印は依頼者に任せ、「われわれは無印の私文書偽造の故意にとどまる」と罪責を軽くしたいのではないか。

◾️業者は逃げ切れるのか

田久保眞紀前市長(伊東市公式サイトから)

 以上の事実を考えると、業者もなかなか狡猾であると感じさせられる。

 今回、仮に業者も田久保被告の共犯として処罰を受けることになるとした場合、有印私文書偽造・同行使の共犯とされる可能性がある。その場合、前述のように『無印私文書偽造』の故意の範囲で共犯が成立すると主張するのであろうが、問題はそれほど単純ではない。

 印鑑を送付するということは、依頼者が押印して偽造卒業証書を完成させるのを認識しており、有印私文書偽造の共犯と評価される可能性もある。

 そもそも違法な文書等の偽造をビジネスにしており、警察が今後も放置する保証などない。事件をきっかけに、摘発される可能性は十分にある。

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