一律給付に反対の朝日新聞がハシゴを外され…
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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安倍晋三首相は16日、国民に一律10万円を給付する考えを明らかにした。実は朝日新聞は一貫して一律給付に反対していたのである。ところが17日付け紙面は一律給付を批判せず、政府の突然の変更という手続き批判に終始した。
■一律10万円と困っている世帯に30万円の違
国民への現金給付については様々な議論が出ていたが、最終的に一律10万円に落ち着いた。個人的な見解を言えば、所得が減少した人に補償の意味合いを強め手厚く、具体的には困っている世帯に30万円という従来の政府方針が理に適っていると思う。
一律だと高額所得者はもちろん、今回の新型コロナウイルス禍で逆に仕事が増えて所得も増えた人、つまりあまり支援が必要でない層にも給付され、同時に本当に困っている人も10万円という薄い給付になってしまうのはいかがかと思う。
ただ、一律の方が素早くできるし、線引きがないだけに分かりやすいという面があり、早期に給付すべきという事情も考えれば、そちらの方がいいという主張にも一定の合理性はある。
国全体の経済効果も含めて検討していたら給付は先延ばしにされて時機を逸しかねないので、今回の決定はそれはそれで仕方がないのかもしれない。
■朝日新聞は一貫して一律給付に反対
個人の見解は置いておくとして、朝日新聞は実は一律給付に反対していたことをご存知だっただろうか。社説を見ると、困っている人に優先的に届けるべきという主張をしていたのである。
確認できる限り、今回の国民への給付に関して社説が最初に触れたのは3月24日付け。ここで現金の給付について2009年のリーマン・ショック後に定額給付金を配布したものの、貯金に回るとの批判が出て効果に疑問が残るとし、その上で「すべての国民に一律に配るよりも、影響の大きい人へ重点配分できるようにしたい。」と主張した。
朝日新聞にしては珍しく正論であろう。この流れは以後も続く。3月31日付けも同様の趣旨を述べ、4月9日には「もちろん、コロナ禍の影響を免れている人や高所得者も含めて、一律に給付する必要はないだろう。」とした。
この4月9日付けの社説は、政府が決めた緊急経済対策が1世帯あたり30万円の現金給付と破格の金額であることは評価しつつ、対象が全体の2割の1300万世帯となったことに「絞りすぎ」と批判している。もう少し対象を広げろとしているものの、ダメ押しのように一律給付を否定しているのである。
■政府の方針転換に手続き論だけで批判
そんな朝日新聞が安倍首相が一律10万円に方針を変えた時にどのように書いているのか。社説は明日18日以降にこの問題を扱うと思われるが、これまでの社説の流れからして、今回の軌道修正を報じる記事は当然「一律支給などとんでもない」という論調になってしかるべき。
だが、そのような本質的な議論はない。1面記事では「世論の不満が根強く、一律給付への修正に追い込まれた」と他人事のように報じている。
3面の記事の見出しは「世論の不満 折れた首相」「与党に転換迫られ」。給付の変更の内容の是非ではなく、直前で方針転換した手続き上の問題に終始している。官邸幹部の声を借りて「首相と岸田政調会長のメンツは丸つぶれだ」と原稿を締めている。
朝日新聞が自社の主張に自信がある、つまり本当に国民のためにと思っているなら、堂々とこれまでの主張を書けばいい。つまり、「一律給付の必要はない。困った人にこそ手厚くすべき。政府の直前の方針転換は間違っている」と書けばいいのである。
珍しく政府の方針に反対せずに書いていたら、いきなりはしごを外されてしまった朝日新聞。そこへの対応は自分の主張は封印し、はしごを外した政府の姿勢を嘲っているのである。
■朝日新聞の一律給付に反対の主張を時系列で
これまでの朝日新聞の現金給付に関しての主張・報道を並べよう。これを見ると、朝日新聞がどういう新聞かが良く分かる。
【朝日新聞の現金給付に関する主張・報道】
3月24日:現金の給付では…貯金に回るとの指摘は根強く、効果には疑問も残る。すべての国民に一律に配るよりも、影響の大きい人へ重点配分できるようにしたい。(社説)
3月31日:しかし、いま大切なのは総額ではなく、困っている人々に確実に、支援の手を差し伸べることだ。(社説)
4月9日:もちろん、コロナ禍の影響を免れている人や高所得者も含めて、一律に給付する必要はないだろう。しかし今回は対象を絞りすぎたのではないか。(社説)
4月17日:官邸幹部は「30万円給付を推し進めた首相と岸田政調会長のメンツは丸つぶれだ」と話した。(3面記事)
最後に一句。
外された はしごの上で 吠える犬