一律給付 朝日新聞の逃亡方法に見えた宿痾

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 朝日新聞が一律10万円を給付する政策について、4月18日付けの社説で一転して肯定的に報じた。その内容を見ると同紙の宿痾を見るかのようである。

■4月9日社説は「一律に給付する必要はない」

堂々と言いたいことを言った方がいいのでは?

 17日公開の「一律給付に反対の朝日新聞がハシゴを外され…」でも明らかにしたが、朝日新聞の社説は一貫して新型コロナウイルス禍に対する政策として一律給付の必要がないことを強調していた。与党内に一律給付の声が強かったこともあり、得意の「政権には何でも反対」の反応を示していたのかもしれない。

 ところが、安倍首相がそれまでの困っている世帯に30万円給付案(以下、限定給付)をひっくり返すと、朝日新聞はハシゴを外される形になった。そして18日付け社説は以下のように論じた。

4月18日:一律1人10万円というシンプルな方式にすることで、素早く行き渡るのであれば、助けとなることは間違いない。

 過去の社説をもう一度、示そう。

3月24日:現金の給付では…貯金に回るとの指摘は根強く、効果には疑問も残る。すべての国民に一律に配るよりも、影響の大きい人へ重点配分できるようにしたい

4月9日:コロナ禍の影響を免れている人や高所得者も含めて、一律に給付する必要はないだろう

■今でも限定30万円給付がベストと信じる?

 注目していただきたいのは、18日付けの社説が「助けとなることは間違いない。」と言っているに過ぎず、(この方法がベストである)とは言っていないことである。以前から分かりきっていた一律給付のいい面だけを強調したに過ぎない。それを分かった上で「影響の大きい人へ重点配分すべき」「(一律給付は)影響を受けていない人、高所得者に給付してしまう」と反対していたのが朝日新聞である。

 18日付けの社説は、これまでの自らの主張を否定していない。これを読む限り、朝日新聞は一律給付よりも限定給付の方がいいと、今でも考えていると判断できる。以前と変わったのは「一律給付は良くない」から、「一律給付もやむなし」と許容範囲を広げた点である。このようにして、以前の自分の主張を否定せず、「変節した」という批判に反論できるようになっている。

 この自己の正当化のための小細工は随所に散りばめられている。予想される批判としては「(一律給付は)影響を受けていない人、高所得者に給付してしまう」という制度の欠陥に対するものがあるが、社説は「不公平感を解消するうえでも、今回の給付を所得税の課税対象とし、年末調整や確定申告で一部を取り戻すことも検討してほしい。」としている。

 さらに「朝日は一律給付に反対していたのに、なぜ、許容範囲を広げたのか」という批判に対しては、安倍首相が限定給付から一律給付にしたことについて「状況に応じた大胆な方針変更はあっていい。」としている点で間接的に反論している。つまり自分たちも「状況に応じたのだ」と言える仕組みにしているのである。

■世論への阿り? 堂々と主張すべきでは?

 朝日新聞はこうやって自分たちの主張の綻びを継ぎ接ぎしながら読者に対して「自分たちは間違っていない」と言い続けてきたのであろう。今回の社説の変遷・変節について問い合わせたら答えは分かりきっている。「過去の主張の中で述べている通り」。それは今、上述した内容であり「よく読んでそれに気付けよ」と答えるのである。

 もし、朝日新聞が今でも限定給付がいいと思っているなら、堂々とそれを主張すればいい。政府に対して「世論に流されるな」と言えばいい。

 それを世論に阿っているのか、言いたいことを言わず、しかし、突っ込まれたら「いいえ、今でも限定給付がいいと思います」と言えるようにしている往生際の悪さ。

 こんなことをしていると読者から見放されるだけと忠告しておこう。

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