吉本興業・岡本社長の会見は株主総会対策? 故意がないと主張
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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吉本興業の所属タレントによる闇営業問題に関して、岡本昭彦社長の記者会見が2019年7月22日行われた。僕はyou tubeで主要な部分は見たが、岡本社長と大崎洋会長が50%の減俸1年ということで、宮迫博之さんと田村亮さんへの処分を撤回することが発表された(この点法的には問題がありそうだが今回は触れない)。ダラダラと長い会見ではあるが、社長が退任を免れるための戦略のようなものが垣間見られたのは、特筆に値する。
■最大のポイントは真実を隠蔽した吉本興業の不作為の責任
今回の会見で、個人的に考える最大の問題は6月8日に宮迫博之さんらが闇営業のギャラをもらっていたことを伝え、田村亮さんを中心に「会見で話をさせてくれ」というのを止めていたことをどう考えるかである。
特に田村亮さんに「会見がしたかったら、してもいい。そうすれば連帯責任で全員クビだ」と真実を明らかにさせようとしなかったというのであるから、宮迫さん、田村さんらが6月8日に真実を明らかにしてから、同社が処分を発表した同24日までの間は、吉本興業が社会を欺いていたのである。それは前回のコラムで指摘した。
この点について岡本社長は「会見したら連帯責任でクビ」という発言を言ったかについて問われると、その事実を認めながらも「会見を止めようとして言ったわけではない」という趣旨であったことを説明。外形の事実は認めつつ(会見を止める意思はなかった)という論法のようである。刑法学的に考えると、犯罪の構成要件に該当する外観はあるが、構成要件的故意に欠けるという類の主張なのだろうか。
同社長はさらに「『個人がバラバラで言うのだったら、勝手にせえ』と。『会見するんやったら、全員クビや』と言った。僕としては身内の感覚だった。圧力をかけたというつもりは全くない」とエクスキューズを述べている。これもイライラして身内の感覚で威勢のいい言葉を言ってしまったもので、本当に会見を止める意思がないという主張と思われる。
■「しばらく静観」でもエクスキューズ連発
また宮迫さんが「しばらく静観です」と社員に言われた点については藤原寛副社長は「静観」という言葉を使ったかどうかは定かではないが「今までと全く違う答えだったので、正直、びっくりした。しっかり確認作業をしないといけない、ということを言った」と説明した。
つまり、吉本興業が社会を欺いたという点については、「会見を止める気は無かった」(故意がない)、「しっかり確認作業をするのが先」(いずれ発表する)という理由で、自らの正当性を主張しているのである。自らの行為の外形は構成要件に該当するが、構成要件的故意がないから犯罪は成立しないと主張しているようなものである。
この点は弁護士からの入れ知恵があったように思う。会社として違法な行為を隠蔽した、社会を欺いたということであれば代表取締役の退任は免れない。その行為は宮迫さんの会見で明らかにされている以上否定できないため、そこに故意がないことを主張するしかなかったのだと思う。
■このままでは株主総会を乗り切れない?
本来なら退任が当然の事案を減給で留めたと思われたら、厳格なコンプライアンスが求められるテレビ局が大株主である株主総会を乗り切れない。そう考えて故意がないことの主張を吹き込まれたのではないかと僕は思う。
ダラダラとした長い会見は全部は聞いていないが、ここがポイントだろう。保身に精一杯のように見える岡本社長の下で、本当に吉本興業は再生できるのであろうか。そもそもタレントの管理もできなければ、危機対応もできていない、さらに言えばモラルも欠如しているのが吉本興業の現状である。
吉本興業の闇の深さを改めて思わせるような、何とも後味が悪い会見だった。