太田光氏暴言は台本通り? なぜ公明党避けた

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 10月31日の総選挙の開票速報でお笑い芸人の太田光氏がメインキャスターを務めた「選挙の日2021 太田光と問う!私たちのミライ」(TBS系)に批判が集まっている。ネット上では太田氏の失礼な物言いや不勉強さを指摘する声があがっており、起用したTBSの見識が疑われる事態となっている。厳しい物言いを芸とする太田氏だが、スベり続けた発言は、台本に沿ったものではないかと思われる。そして公明党の政治家には一言も聞かない不自然な番組制作にはどんな意図があったのか。

■台本が噛み合わなくなってきた?

批判が止まない太田光氏(TBS画面から)

 問題の番組で太田氏はスペシャルMCと紹介された。注目の選挙区の政治家と対話する「忖度なし! 太田光×注目政治家”10番勝負”」のコーナーで話をした政治家は15人。自民党甘利明幹事長に「ご愁傷様です」と毒づき、二階俊博前幹事長に「人相が悪い」など、政治とは無縁の暴言を吐き続けたが、15人とのやりとりを見ると、実は台本があって、そこにアドリブを加えているだけなのではないかと思えるフシがある。

 選挙結果が予想したものと違ってきたために、その台本が全く噛み合わなくなり、意味が分からないまま毒づく、おかしな番組になってしまったのではないか。そのあたりは番組を見直してみると感じられる。

 太田氏の出演時間はおよそ3時間。その間に10人以上の政治家と1人5分程度サシで話をするのであるから、政治には素人のお笑い芸人にアドリブでこなせるはずがない。事前にどのような質問をするかは準備をしているはずで、実際、そう思われる質問もあった。それらの質問は当然、選挙結果を反映したものにしなければならない。リアルタイムで選挙結果に即した台本を用意することなどできるはずがない。その場合、ある程度、選挙結果を予測した台本を事前に用意することになると予想される。

 TBSを含む大手メディアは自民党が30~40議席ほど減らし、単独過半数の233議席は微妙で、立憲民主党が109から130程度に増やし、日本維新の会は30以上になるのではないかというのが概ね共通した予想であった。当然、こうした予想に即した台本をつくっていたと思われる。

■岸田首相に惨敗前提で責任を問うTBS

TBSの獲得議席予測(TBS画面から)

 10月31日午後8時。TBSは当該番組内で獲得予想議席を発表した。( )内は実際の獲得議席。

自民:239(261) 公明:30(32)

維新:40(41)

立憲民主:115(96) 国民民主:13(11) 共産:12(10)

 自民は単独過半数233をわずかに6議席上回るものの、公示前276から37議席減らすという予測をしている。実際の獲得議席と比較すると、自民は予測から+22、立民は予測から-19と大きく外した。

 番組は自民が単独過半数ギリギリの状態で、岸田首相の安定した政権運営が困難になり、野党が大きく勢いづいたというシチュエーションで番組をつくろうとしていたのは間違いない。この点は午後10時前、開票から2時間経っていない時に始まった岸田首相とのやり取りの中に現れている。太田氏と岸田首相のやりとりに報道1930の松原耕二氏が割って入った時のことである。

松原:選挙結果についてうかがいたのですけど、今回の選挙結果ですね、まあ、単独過半数(233議席)が行くか行かないかぐらい、これ、かなり厳しいと思うんですね。有権者としては自民党一強は、これは許さないと、いう数字と思っていいと思うのですが、この結果どうですか。岸田さんのご自身の責任はどうお感じになりますか。

 これから激戦区の票が開いてくるのであり、大勢が判明しない時期に「単独過半数行くか行かないかぐらい」と聞く、しかも結果は全く異なっているという、今から聞くと間抜けな質問。しかし、これこそが番組としてはそのような前提で話を進めていたことを窺い知ることができるシーンと言える。

■十番勝負の最初の10人のうち9人が自民党

太田光氏と甘利幹事長

 十番勝負の最初の10人のうち9人が自民党の政治家であることは、最初から自民惨敗の予測のもとにシナリオを描き、自民党攻撃の意図があったと思われても仕方がない。

 自民党惨敗のシナリオに沿えば、まず選挙の責任者である甘利幹事長の責任を問う。そうなると太田氏が甘利氏に「戦犯ですよね、もし、負けたら」と言うのは台本通りではないかと想像できる。少なくともそういうレクチャーは受けていたのではないか。

 本来、現場の記者が聞いても「結果が出てから考える」程度の答えしか期待できないが、太田氏なら無責任に厳しい言葉を投げかけることができる、それを局が利用したように思える。大まかな台本を示した上で、あとはアドリブでやったところ、太田氏が頑張りすぎて一線を超えてしまったというのが真相に近いのではないか。最初に飛ばしすぎた分、後半の政治家に対しては大人しくなっているのが分かるので、次ページの15人の政治家とのやり取り概要をご覧になっていただきたい。

 二階前幹事長も登場したが、既に幹事長職を退き攻撃材料がない。そうなると「あなたのような古いタイプの政治家がいるから負けたのであって、もう辞めたらどうか」と罵詈雑言を浴びせるという選択肢は取りやすい。

 党風一新の会の代表世話人の福田達夫氏、小泉・石破・河野の「小石河」には党を割ることを勧めるのも、自民党惨敗の前提に立って用意していた質問であろう。

 高市早苗政調会長には、森友学園問題について立法府として独自の調査をすべきだとしつこく迫った。高市氏から「民事訴訟になっていることなので、私が軽々に口にすべきではない」と一蹴され、普通の記者ならここで黙ってしまうところ。それを高市氏の過去の発言を取り出して「もっと怒るべきだと俺は思う」と立法府として調査をするように迫っている。

 TBSはこれまで報道特集などで森友学園問題を大きく取り上げている。お笑い芸人の太田氏が森友学園の問題をどこまで詳しく知っているのか分からないが、不自然なまでに森友学園にこだわるのは、局の意向に沿って質問したのではないかと思われる。

 高市氏にすれば「何で選挙の時に政調会長に聞くの?」と思うかもしれない。勝手な想像であるが、ガチガチの保守の高市氏にTBSが好感を持つはずがなく、自民党惨敗で高市政権が誕生するのは避けたいところで、この場でポスト岸田をアピールされるような質問はしたくなかったのではないか。

 登場した15人の政治家の政党を見ると「自民党・日本維新の会、れいわ新選組、日本共産党、立憲民主党」の5つの政党。32人が当選した与党の公明党には話を聞かないのは非常に不自然に感じられる(社民党はもはや聞く価値もない存在と考えられる)。公明党の山口那津男代表に「国民と池田大作さんのどちらの方を向いて政治をしてますか?」ぐらいは聞いてほしいし、そうすれば少しは見直すが、残念ながらその機会はなかった。

 太田氏に関しては創価学会との関係でネット上で噂があるのは多くの方がご存知であろう。政権与党の代表に話を聞かなかった理由は是非とも明らかにしていただきたい。

次ページ:登場した15人の政治家とのやりとり概要】

"太田光氏暴言は台本通り? なぜ公明党避けた"に3件のコメントがあります

  1. 名無しの子 より:

    確かに、松田さんのおっしゃる通り、TBSの台本はあったと思います。でも、この太田光氏という人物、元々の性格がかなり歪んでいると考えられます。

    私がまず最初にそう感じたのは、数年前に起きた、神戸教師いじめ事件の時のことです。あの時太田氏は自身がMCを務める番組で「いじめは楽しい」「いじめもお笑いも同じようなもの」と発言しました。若手の教師が凄まじいいじめに遭っていたという悲惨な事件を紹介する時に、そのような発言をするということが、全く信じられませんでした。相方の田中氏の凍りついた表情が、今でも忘れられません。

    https://www.excite.co.jp/news/article/Sirabee_20162183430/

    また太田氏は、別の番組で(かなり前のようですが)高市早苗さんの顔にモザイクをかけろ(容姿を侮辱)と言ったそうです。最低ですね。

    でも今回の選挙特番は、TBSの社長案件だったようですよ。だから、これほどさんざんな世間の評価でも、局としては、特に気にしていないようですね。実際、この事に対して、局側から、何のコメントもありませんしね。

    1. 名無しの子 より:

      追加です。太田氏は番組の中で「僕は、立憲民主党に投票した」と言ったそうです。
      選挙番組のMCなら、中立的な立場でなくてはいけない筈。言ってはいけない言葉ですよね。
      でも、松田さんの記事を読んで思ったのですが、本当は、公明党に投票したのかも。公明党との関係をかくすため、また、TBSに良く思われたいがために、そう答えたのかもしれませんね。

  2. Noname より:

    今回TBSに限らずTV各局も大新聞も出口調査を大外しする結果となりましたね。

    Twitterでもいくつか見られましたが、マスコミは立民推しなので「出口調査には立民に入れた、と言っておいた」といった人が結構見られました。

    結論ありきの番組作りをするTV局がさらに信頼を失う結果となり、痛快に思います。

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