高市新総裁誕生 リベラル支配終焉と新秩序到来

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 高市早苗氏(64)が自民党総裁選(4日投開票)で決選投票の末、小泉進次郎氏(44)を下して新総裁の座を射止めた。両者の戦いはネットvsオールドメディア、(旧)派閥間の勢力争いなど様々な側面があるものの、その本質はイデオロギーに関する争いであったように思う。小泉・石破・岸田のリベラル路線に対し、高市・麻生のコンサバティブ路線が巻き返した結果と言い得る。その結果は国民政治はもちろん、国際政治に与える影響は小さくないと思われる。

◾️”泡沫候補”の2021年時の主張

自民党総裁選の結果

 高市氏の勝利の要因として、最有力と目されていた小泉氏の陣営によるステマ騒動や、カンニングペーパー頼みの話、コロンビア大学の大学院修了なのになぜか英語を一言も喋らない(喋れない?)など自滅に近い形となったことが取り沙汰されている。

 また、麻生太郎氏が自陣営の議員に対して、1回目の投票で小林氏・茂木氏陣営に投票させ、決選投票では両陣営の票を合わせて高市氏に集中させる作戦が見事にハマったという点も見逃せない(テレ朝NEWS・高市早苗氏を勝利に導いた麻生太郎氏の“戦術”「1回目の投票で小林氏・茂木氏に恩を売った」ジャーナリストが解説)。

 それらが勝敗の分水嶺になったのは疑いのない事実ではあるが、より本質的にはイデオロギーをめぐる争いで、高市・保守派が小泉・リベラル派を競り落としたと言えるのではないか。

 もともと高市氏はポスト菅を決める2021年の総裁選から、今回までの3回、靖国神社の参拝をめぐる表現を変えた以外、その主張はほとんど変わっていない。自身が”泡沫候補”と自嘲気味に語っていた2021年、産経新聞のインタビューに答えて以下の政策を口にしている。「男系天皇を堅持」「ウイグル問題で中国の人権侵害を非難する国会決議は必要」「慰安婦や徴用工問題などに関し、歴史外交を強化」「女性総合診療科の増設」「台湾有事では自衛権の発動に近い状況が出てくる可能性がある」「台湾の蔡英文総統に会ってみたい」(参照・高市早苗氏はダービー馬ロジャーバローズ)。

 今回、靖国神社の参拝については「どのように慰霊をするか、平和を祈るかは適時適切に判断する」として、「外交問題にされるべきことではない。互いに祖国のために命を落とした方に敬意を払い合える国際環境を作るため一生懸命努力をしたい」と、参拝への環境づくりに努力することを約束したにとどめた(讀賣新聞オンライン・高市新総裁、靖国参拝は「適時適切に判断」…「外交問題にされるべきことではない」とも)。

 来年度の予算が成立した後のタイミングで総選挙に打って出て、そこで勝てば来年8月の参拝は可能性としてはゼロではない。

 いずれにせよ、高市氏が日本の保守派を代表する政治家であることは疑いのない事実である。

◾️古典的保守の価値観 再び政権の中心へ

写真はイメージ(AIで生成)

 安倍政権が幕をおろした2020年9月以後、菅義偉ー岸田文雄ー石破茂と3人の首相が誕生したが、菅氏は安倍政権の官房長官として内閣を支えたこともあり、安倍政権の継承者という立場に見えた。

 しかし、岸田政権になってからはリベラルに大きく舵を切った。同政権では安倍氏との約束の下、憲法改正を目指すとしながらも、あくまでも目指しただけで具体的な進捗はなかった。

 安倍元首相が核シェアリングに言及した際には、「非核三原則を堅持するわが国の立場から考えて認められない」「唯一の戦争被爆国、とりわけ被爆地・広島出身の総理大臣として核による威嚇も使用もあってはならない」と反発した(参照・核共有反対「広島出身の総理として…」に違和感)。留学生を「我が国の宝」と表現する発言など、ダイバーシティ、グローバリズムを重視する政治姿勢を示したのも特徴的である。

 石破政権になってからは、衆議院の議席が大きく減った事情もあり、憲法審査会の会長を立憲民主党の枝野幸男氏に託すなど、自民党内には安倍政権時の保守的な政治姿勢はすっかり消え去ったと言っていい。

 その岸田・石破両氏が推したのが小泉氏。こうして高市vs小泉は保守vsリベラルの構図となり、高市氏の勝利の後には与党の公明党が自公連立の行方に懸念を示したこと、社民党の福島みずほ党首が「初の女性総裁だが全くうれしくない。極めて残念だ。驚愕している。危機感を感じる」と強い言葉で拒否感を示したのは、来るべき高市政権の性質を示すものと言っていい。(産経新聞電子版・「初の女性総裁だが、全くうれしくない」社民・福島瑞穂党首、自民・高市総裁選出を批判

 今回の総裁選の下馬評では小泉氏勝利の予想が多く、オールドメディアは一様に想定し得なかった勝利としている。報道ステーション(テレビ朝日系)では決選投票では小泉氏が200票を超えて圧勝という予測を流した。

 これを覆したのは、最終的には自民党内部で、このまま保守派の支持を失えば自民党は野党に転落しかねないという危機感が働いたと考えられる。7月の参院選では参政党が現有1議席から14議席に躍進。これを保守層の支持が自民党から参政党へ流れたことの証左ととらえたのではないか。このまま小泉政権が誕生した場合、次回の総選挙では現有191の維持すら難しいと考えても不思議はない。

 気候変動、LGBT法制、SDGs推進、移民受け入れなど、グローバリズムの理念を軸にした政策群が、ここ2、3年の日本政治を覆ってきた。高市政権の誕生はその流れに明確な歯止めをかけるのは明らかで、国防・主権・家族・伝統という古典的保守の価値観が、再び政権の中心に戻るのは間違いない。

◾️台湾とパレスチナ

 米国時間3日、ロイター通信は「トランプ米政権が米国で自動車を生産する大手企業に対し、更なる関税負担の軽減措置を近く決定する見通し」と報じた(毎日新聞電子版・トランプ政権、トヨタ・ホンダなどへの関税軽減措置を決定へ 米報道)。

 高市新総裁誕生より前に一報が報じられているが、結果として新政権への贈り物となった。

 トランプ大統領としては、思想的には安倍元首相の後継者と言っていい高市氏とは信頼関係が構築しやすいと考えているのかもしれない。現在の米国にとって最大の政治的課題はいかに中国と向き合うかであり、台湾問題がその核心にある。その点、安倍元首相同様、台湾へのシンパシーを公にしており、今年4月28日には台北で頼清徳総統と会談した高市氏であれば、台湾問題への積極的なコミットが期待できる。総裁選に勝利した後は「心から、最も熱烈に祝福する」というコメントが総統府から発信されたように、両者の信頼関係は強い(フォーカス台湾・自民新総裁に高市氏 頼清徳総統が祝福/台湾)。

 また、喫緊の問題としてパレスチナの国家承認の問題もある。G7の中ではカナダと英国が国家承認を行い、フランスもその意向であることが明らかにされている。歴代政権の中でも親イスラエルぶりが突出しているトランプ政権としては、これ以上G7内部でパレスチナの国家承認が進むことは何としても避けたい。結果、米国がパレスチナ国家未承認である日独伊”三国同盟”に接近するという冗談のような展開となっている。

◾️高市総裁誕生と世界的潮流

高市早苗氏公式サイトから(2021年)

 バイデン米政権の4年間で、国際政治はリベラルな理想主義を前提に再構築されてきた。気候危機、人権、移民、ジェンダーなど。一見、普遍的価値を掲げているが、各国の国内事情や宗教的伝統を軽視してきた面は否めない。

 その結果、欧米でも“リベラル疲れ”とでも呼ぶべき状況が生まれている。第2次トランプ政権の発足、ジョルジャ・メローニ伊首相の誕生、オラフ・シュルツ独政権による自発的兵役導入の決定(ロイター・ドイツ、連邦軍増強へ新兵役制度を閣議決定 目標未達なら強制も)などは、その象徴的な出来事である。

 今回の高市総裁誕生も、そうした世界的潮流とは無縁とは思えない。その大きな流れに、派閥の力学、ネット社会の進展などが加わって高市政権が誕生すると言い得る。そう考えると、今回の総裁選は、日本の政治の大きな転換点となると考えられる。

    "高市新総裁誕生 リベラル支配終焉と新秩序到来"に2件のコメントがあります

    1. 匿名 より:

      ややこしい構図で、小泉さんの言動をファクトチェックするサイトまで出来たらしいですが、この人は取り敢えず叩いておけば閲覧やコメント稼げるタイプの典型すぎるというか。
      人気の小泉というのも彼を上げて下げるバッシングで、逆にネットの「あっち方面」を取り込むために人気重視で高市さんになったというか(事実、某政党の支持率がそのまま自民に流れているとか)。
      高市さんが良ければそれでよし、ダメなら今の扱いが改善した小泉さんというのは、上手いやり方かもしれません。

    2. 野崎 より:

      日本は変わるでしょうね、、
      どう変わるか、、それは故三島由紀夫が予見した通りに、、

      >日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目がない、或る経済大国が極東の一角に残るのであろう。
      (文化防衛論 1969)

      高石総理はNHK日曜討論にて、何よりもまず理念と主張した(日時不明)
      政治における大前提、よって立つ価値観でしょう。
      しかし究極その価値観は無いでしょうね、高市総理のみならず日本人には。

      三島由紀夫の言うニュートラル、中間色とはそれ故の事であり、この状況、その社会を作り出すことがリベラルファシストの目的あり奴ばらは着実にそれを実現している、活発に活動している(その具体割愛)

      ニュートラル、それは多様性という曖昧な言葉が台頭した来たさらに状況の先、この言葉はリベラルファシストの武器であり、この曖昧さ抽象表現をもって他の言葉につなげ拡大する、、

      空気(KYのK)エートス ニューマ
      故小室直樹氏いうところのルール、オブ、ニューマの形成を計る。
      ジョンレノン、イマジンの価値観の世界。(神はいない、反キリスト、何をしても自由だ、国家は不要だ世界は一つだ)を目指す。
      日本共産党、田村書記長が最近明確に述べた、目的は国家の破壊、法律の破壊、これも広義に同じくだ。
      田村書記長が目的とする破壊は共産主義理論とは異なるファシズムである。

      故三島由紀夫が予見し得なかった事。
      それは外国人の流入、そしてイスラムの台頭だ。(ハンチントンの文明の衝突は究極イスラムとの衝突だ)
      故石原慎太郎氏は欧米白人社会はイスラムに復讐される、勝てない、と述べていた。
      欧米のみならず日本もイスラムに浸食される。

      日本は変わる、日本のみならず世界も変わる。
      価値観の闘い
      その戦いが繰り広げらえていたのが先の米国大統領選挙であり、大紀元エポックタイムスはサタンとキリスト教の戦いとの表現で記事にした、正鵠を射ぬいている。

      同じ価値観の闘いとして今死闘が行われているロシア、ウクライナだ。
      EU,NATO、米国民主党は表裏一体のファシズムであり,対しプーチン、トランプの自由連合だ。
      トランプ大統領の対ロシア強硬発言と実際の行動は全く別でありロシア、プーチン支援であることは明確であり(具体例割愛)笑いがこぼれる(私として)

      イスラエルに関しての私見は長文となりこれも割愛。

      御返信は不要です。

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