閣僚の靖国参拝で露呈した朝日社説の無知

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 朝日新聞8月16日付け社説は、安倍内閣の4閣僚による15日の靖国神社参拝を批判した。しかし、その内容は憲法が保障する信教の自由を理解しない不勉強な内容であった。

■閣僚の信教の自由を無視する暴論

靖国神社本殿へと続く参道(撮影・松田隆)

 朝日新聞の16 日付け社説は「閣僚靖国参拝 問われる政権の歴史観」というタイトルで、15日に高市早苗総務相、萩生田光一文部科学相、衛藤晟一沖縄北方相、小泉進次郎環境相が靖国神社に参拝したことを批判している。

 しかし、その批判が憲法20条で保障された信教の自由を無視したもので、言論機関としては著しく妥当性を欠いたものになっている。まずは、以下の部分を見ていただきたい。

高市、衛藤両氏は昨年秋の例大祭時に続く参拝となるが、首相が自重を促した形跡はない」(朝日新聞の16 日付け社説から)

 安倍首相が高市氏らに自重を促した形跡がないことから、閣僚の参拝を黙認し続けるのであれば侵略の被害を受けた国々を中心に、戦前の歴史を正当化しようとしていると受け止められて当然だという主張につなげている。

「靖国神社には、東京裁判で戦争責任を問われたA級戦犯も合祀(ごうし)されている。侵略の被害を受けた国々を中心に、日本が過去の過ちを忘れ、戦前の歴史を正当化しようとしていると受け止められても当然だ。」(同)

 これらを見る限り、朝日新聞が安倍首相は高市氏らに自重を促すべきだったと考えているのは間違いない。首相は国務大臣を任命し、任意に罷免することができる(日本国憲法68条)。圧倒的な権限を有しており、その首相が国務大臣に「8月15日に靖国神社に参拝しないでほしい」と言ったらどうなるか。国務大臣は罷免されることをおそれ、参拝を取りやめるであろう。

■他者の行為に寛容であることを要請する信教の自由

 高市氏は「国家国民を守るために命をささげた方に感謝の思いを伝えるというのは、一人の日本人として続けていきたい」「閣僚であれ、そうでなくとも、毎回お参りをしている」と参拝後に記者団に話している(産経新聞8月15日電子版から)。個人の信条に従って宗教的な行為を行なっているのであり、それに対して首相が強大な権力を背景に「参拝しないで」と自粛を要請したら、それは憲法20条1項に反するのは明らか。

日本国憲法第20条【信教の自由】

一 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

 この信教の自由とはどういうことか。最高裁は以下のように判示している。

信教の自由の保障は、何人も自己の信仰と相容れない信仰をもつ者の信仰に基づく行為に対して、それが強制や不利益の付与を伴うことにより自己の信教の自由を妨害するものでない限り寛容であることを要請しているものというべきである。」(昭和63年6月1日大法廷判決)

 つまり、安倍首相が閣僚に対して参拝自粛を要請したら、明確な憲法違反。それを朝日新聞は「黙認していたら、諸外国から批判されるから自粛を要請しろ」と言っているに等しい。日頃、護憲を叫びながら、憲法の趣旨を守った首相に「違憲が明らかな行為をすべき」とはどういう理屈なのか。

 なお、社説は政教分離については何も語っておらず、4人の閣僚の参拝が政教分離原則に反していないと考えているようである。

■憲法上の権利を考えて社説を書いているのか

 おそらく朝日新聞は書いている時に信教の自由の保障がすっぽりと抜け落ちていたのであろう。戦争被害を受けた国の人の心を考えて、閣僚は参拝を自粛したらどうだという安直な考えだけで書いたものと思われる。それは以下の部分を読めば分かる。

 個人の信教の自由を、憲法が保護の対象としているかどうかも分からない外国政府、外国人のために、政治目的で規制しろというのは、もう暴論と呼んでもいい。社説担当者は、首相の靖国神社参拝に関する判例を読んだことがないのではないか。参考になりそうな最高裁の判例の一部を示しておこう。

人が神社に参拝する行為自体は、他人の信仰生活等に対して圧迫、干渉を加えるような性質のものではないから、他人が特定の神社に参拝することによって、自己の心情ないし宗教上の感情が害されたとし、不快の念を抱いたとしても、これを被侵害利益として、直ちに損害賠償を求めることはできないと解するのが相当である。」(平成18年6月23日第二小法廷判決)

少しは勉強してから社説を書いてほしいと思う。

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