核共有反対「広島出身の総理として…」に違和感
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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岸田文雄首相が3月1日、核共有に関する議論をしないことを明言した。安倍晋三元首相がテレビ番組などで米国との核兵器のシェアについて論じたが、それを即座に否定した形。否定の理由が「広島出身の首相としてできない」と説明したことには疑問が残るとともに、非常時に凡庸な首相を持つ日本国民の不幸を思わされる。
■安倍元首相が提案核シェアリングの議論
核共有の考えは、ロシアのウクライナ侵攻を受けて安倍元首相が考えを示した。2月27日の「日曜報道 THE PRIME」に出演した際にNATO(北大西洋条約機構)が採用している核シェアリングについて「…ドイツやベルギーやオランダ、イタリアもですね、核シェアリングをしてるんですね。自国にアメリカの核を置いていて、それを落としにいくのはそれぞれの国が行うという、デュアルキーシステム(二重管理制)なんですね。こういうことをやっていることは、おそらく多くの日本の国民の皆さんはご存じないんだろうと思います。もちろん(日本は)NPTの加盟国でもありますし、非核三原則もありますが、世界がどのように安全が守られているかという現実についてですね、議論することをこれをタブー視してはならないと」と話した(FNNプライムオンライン・「核共有の議論必要」で安倍氏と橋下氏が一致)。
非核三原則に抵触する議論を持ち出したことに対し、岸田首相の反応は早かった。安倍元首相の発言の翌日の2月28日には参院予算委員会で「非核三原則を堅持するわが国の立場から考えて認められない」と否定した(東京新聞電子版・岸田首相が「核共有」を否定 安倍元首相が議論提起も「非核三原則」から認めず)。
さらに3月1日にはG7首脳らと電話会議をした際に、官邸で記者団に対して「唯一の戦争被爆国、とりわけ被爆地・広島出身の首相大臣として核による威嚇も使用もあってはならない」と話した(ANN news CH・「核による威嚇も使用もあってはならない」岸田総理G7の首脳らと電話会議(2022年3月1日))。
予算委員会で話して、さらに官邸で記者団に対しても核共有について否定するという、懸命の火消しぶりである。
■岸田首相の対応に疑問
岸田首相の対応には疑問が残る。非核三原則はそもそも佐藤栄作首相の1967年12月11日の衆院予算委員会における答弁「核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まないというこの核に対する三原則…」に由来する(外務省ホームページ・非核三原則)。
当時は冷戦のさ中で、しかもベトナム戦争が行われており、それなりに国際関係は緊張していたが、日本は日米安全保障条約の下、米軍の核の傘に守られており、実際に日本を核攻撃しようとする国は想定しえないという状況もあった。
しかし、今回のウクライナ侵攻で、プーチン露大統領は2月24日の演説で「攻撃を直接加えれば、どのような攻撃者であっても敗北は免れず、不幸な結果となるのは明らかだ」と核兵器の使用をほのめかした。バイデン米大統領は、直接、対ロシア軍事行動を起こせば第三次世界大戦になるとして、経済制裁で対抗することにしている。もちろん、米国の同盟国への攻撃であれば異なる対応をしたとは思われるが、大事なことは(大惨事が予想される場合、アメリカは軍事行動を控える)という前例をつくったことである。
運搬手段を含めての核戦力は米国が最強であることは疑いないが、相手が相打ちを覚悟で核兵器使用を決意したら米国は引く可能性があるということを実例として示したことは、ロシアや中国、北朝鮮にとっては日本への核攻撃やそれによる脅しをかけてくることのハードルを著しく下げたことになる。
■安全保障政策に首相の出身地が関係
このようなことが起きるのも米国が世界の警察官としての地位を放棄しつつあること、相対的に国力が低下していることが原因と思われる。世界の情勢は佐藤首相が非核三原則を唱えた55年前とは大きく変化している。その変化に合わせて、国防のあり方、核兵器への対応の仕方も変えなければならない。なぜなら、首相は国家の安全と国民の生命・財産を守ることが最大の責務であるからである。
ところが岸田首相は、その考えは全くないとした。3月2日の参院予算委員会では法令でもない非核三原則を堅持するとし、さらに「原子力の平和利用を規定している原子力基本法をはじめとする法体系から考えても、政府として認めることは難しいと考えている」(朝日新聞電子版・核共有の議論 首相「政府として考えていない」)としたのである。
国家の安全、国民の生命・財産を守ることが最大の責務であるのなら、それを阻害する法体系を変更するのが首相の使命。そして、冒頭で示した広島出身の首相であるから、核による威嚇も使用もあってはならないという発言。日本にとって最善の安全保障策を考える際に、首相の出身地が結果に影響を与えているのであれば、国民はたまったものではない。
核シェアについて議論すらしないことで、中国はどう考えるか。仮に尖閣諸島に侵攻したとしても、岸田首相の間は核シェアについて議論すらしないと分かれば、侵攻へのハードルは下がる。その発言は日本の国防を弱めるだけの効果しかない。
岸田首相がウクライナ侵攻は他人事ではない、日本にも危機はやってくるかもしれないと考えているなら、新たな時代の国防について所見を語るべき。それをせずに、自分が広島県出身だからということを理由の1つにして核シェアという新時代の国防のあり方を即座に否定するのは、国防より自身の次の選挙を重視していると言われても仕方がない。自身の出身地の事情より、国家・国民を優先して考えられない首相なら、今すぐ辞任していただきたい。
そして、広島出身の首相が核シェアを否定したことで、再び広島に核攻撃が行われる可能性も高まったことを意識すべき。
そもそも話を聞く力があると胸を張った人が、どうしてこのような重大な提案に対し、自らの出身地を理由の1つにして耳を貸そうとしないのか。今回の件に関しては維新の会、国民民主党の代表の方がよほど、聞く力を持っていることが明らかになった(産経新聞電子版・核共有議論で野党に濃淡 立共は否定、維国は前向き)。
■ジョンソン英首相の態度
岸田首相の理解し難い言動に対し、ジョンソン英首相の態度は信頼に値するものであった。訪問先のワルシャワでの記者会見でのやりとりは日本でも報じられた。席上、ウクライナのNGOの代表が、NATOがウクライナに飛行禁止区域を設定することを求め、そのことができないのはNATOがウクライナの人々を守る気がなく、第三次世界大戦に発展することをおそれているからだと強く批判したことに対し、ジョンソン首相は以下のように答えた。
「飛行禁止区域の設定は英国がロシアの飛行機を撃墜することを意味する。ロシアとの直接の戦闘は想定しない。そうなれば事態を制御することは極めて難しくなる。」(TBS NEWS・ウクライナ女性が英ジョンソン首相に涙ながらに詰め寄る)。
英国の国家の安全、英国民の生命・財産を守るためにリスクの大きいことはできないという説明は納得のいくものである。戦時の指導者であれば、これぐらい明確に国家観に根ざした現実的な説明をすべき。
言うまでもなく英国は核保有国である。保有国であっても核兵器を使用することはこれほどまでにハードルは高く、核シェアであれば日米の思惑が一致しなければならないから、さらにハードルは高くなる。抑止力を考えれば核保有が平和と安全に直結すると思うが、その手前の核シェアの議論すらしないという岸田首相の発言は、ロシアや中国、北朝鮮などを大いに喜ばせただけである。
■判断力も決断力もない非常時の首相
米ソの対立から、米国一強時代を経て、今、我々は米国の相対的地位の低下に伴う米中が並び立つ時代に生きている。
憲法9条が施行されて75年、非核三原則が唱えられてから55年。全く異なる時代背景の中で形成された価値観に21世紀の我々の生命と財産を委ねていることの異常さを思う。そして、非常時にある日本の首相大臣が判断力も決断力もない、凡庸な人物であることの不幸を思う。
岸田は非核三原則をひっくり返す発言をすることで、地元の原水協他の団体から突き上げ喰らうのが怖いんでしょうね。
何でも先送り、検討するフリだけしてる岸田もこれには速攻反応せざるをえなかった、ということでしょう。
こそこそ隠れて広島県日中友好協会の会長なんてやってるだけのことはある。
同じ広島に所縁のあるものとして情けない。
この大変な時勢のなか、広島出身のポンコツ岸田が総理であることに、広島県民として心から恥じ詫びを申したいと思います。