気候変動でも死者減少「正しく怖がろう」

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。
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 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次報告の統合報告書が3月20日に発表された。IPCCは2007年にノーベル平和賞を受賞している。国連の機関であるため、過去は中立性を強調していた。ところが最近は気候変動の危機を強調し、やや政治主張が強くなっている。

◆IPCC第6次報告発表 気候変動がトピックに

IPCC公表の動画画面から

 今回の政策決定者向け要約では「世界の平均気温の産業革命前からの上昇幅を1・5度に抑える には温室効果ガス(GHG)排出量を2035年までに19年比で6割減らす必要がある」と、結論を示している(気象庁・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書統合報告書の公表について)。

 政治的な誘導が強すぎる表現だし、そんなことはできるわけがない。GHGの大半を占める二酸化炭素は、化石燃料の使用と表裏一体だ。その削減は、経済活動を減らすことを意味する。「貧しくなれ」という主張を、どの国の人も受け入れられるわけがない。

 日本ではそれほどでもないが、欧州を中心に気候変動が、政治や社会の重要な問題になっている。どちらかというと、左派政治勢力がこれを騒ぐ。気候変動を名目に、活動家が各国政府と産業界を攻撃している。

 IPCCの後で、また盛り上がっているようだ。私は、気候変動は起きているということは、世界の政策当局者や知識人の間に共有されるようになったので、IPCCも役割を終えたと思っている。政策に過度に介入すべきではない

◆この100年で気候災害による世界の死者数は98%減

 観察すると、気候変動の危機を熱く語る人たちは、日本でも欧州でも、重要なデータを知らない、もしくは意図的に無視することがよくある。IPCCの報告さえ読んでいない。そもそも、気候変動のリスクは、それほど大きなものではないようなのだ。その一つが、気候変動で死者の数は増えているかという問題だ。騒ぐ人たちのは「生態系の危機によって人類が滅びる」という趣旨の発言を繰り返すが、それは誤りだ。

 スウェーデンの環境問題に詳しい政治学者のビョルン・ロンボルグ氏が、自分のサイトやFacebookで、「気候に関連した死者数:1920-2022」の記録を公開している(当該記事)。

(また私の記事はロンボルグ氏の記事を解説した、キャノングローバル戦略研究所研究主幹杉山大志氏のコラム「2022年の気候関連の死亡者数は100年前より98%減少した」を参考にした。)

 「気候に関連した死亡」とは、洪水、日照り、暴風雨、山火事、異常高温などによるものとしている。も最後の3つの点は、2020、21、22年の点だ。ロンボルグ氏は国際災害データベースなどのデータを使った。

 100年前は全世界で、気候に関連して年50万人近くの人が亡くなった。それがずっと減り続け、今は1万人以下だ。98%も減っている。世界の総人口は1920年には約20億人、現在は約78億8000万人であることを考えると、確率的に見れば、その死の危険は総数で見たよりもさらに減っている。

 ちなみに1920年から現在まで、地球温暖化によって全世界の平均気温は1度強上昇している。それはおそらく人為的な影響が強い。

 ロンボルグ氏は上記記事で、このデータの読み方を総括する。「このグラフは、我々の富の増大によって自然災害に対する適応能力が向上しており、それが気候変動による潜在的なマイナスの影響を大きく上回っていることを示している」。

◆「正しく怖がり」現実にあった対策をする

 「気候変動は人類の危機だ」-。こんな話に私たちは振り回されている。確かに危険はあるだろう。ところが上の図で示されたように、実際には経済成長、技術の進歩で、その危険を抑え込んでいる。

 日本の自然災害を考えてみよう。カスリン台風(1947年)の死者・不明者は1077人だった。伊勢湾台風(1957年)の死者・不明者は5098人だった。いずれも満潮時に大河下流の沿岸部に台風が直撃したため、堤防が決壊して水が住宅地を襲って多くの方が亡くなった。

 ところが近年はこのクラスの台風が来ても、死者数は少ない。それは護岸工事、河川管理などの洪水対策が行われ、天気予報も進化したことで、リスクを人の力で減らすことができたからだ。

気候関連の死亡数:1920−2022

 気候変動対策では、全国民に省エネを義務付ける、産業を規制するべきという主張が行われが ちだ。そんな遠回りなことより、原発を動かして二酸化炭素を減らし、気候変動で起こりかねない災害の準備をする方が安上がりで効果が出ると思う。

 「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた」。これは物理学者の寺田寅彦(1878~1935)の、災害についての言葉だ。

 気候変動問題では、それを嘘だ、陰謀論だと攻撃する「こわがらない」意見、地球が破滅する、人類が滅びるかのように騒ぐ「こわがる」意見が世の中にあふれている。

 しかし、冷静に検証すると気候変動は重要な問題ではあるものの、社会が解決を最優先にするべきほどの危険のある問題とは思えない。その証拠の一つが、ロンボルグ氏の作成したこの図だ。気候変動の影響する死者は着実に減っている。

 気候変動対策をするべきではあるが、政府も企業も私たち個人も無駄な手間や金を使わないように注意をして向き合いたい。

"気候変動でも死者減少「正しく怖がろう」"に1件のコメントがあります。

  1. TOM_TOM より:

    地球の気候ってそもそも変動するものだし、気象観測の歴史は高々100年レベル。近年、気温が上昇した、降水量が増えた/減った、降雪量が増えた/減った…悪者は温暖化ガス?ちゃんちゃらおかしい。

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