中国人留学生に聞く「本当に台湾に侵攻?」

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 中国政府による人権弾圧の犠牲者の追悼集会を妨害したとして、中国籍の男ら7人が20日に書類送検された。中には留学生も含まれていたと21日付けの産経新聞が報じている。仕事柄、留学生と接する機会が多いが、こうした政治的な運動に身を投じる者も存在することは否定しない。様々な機会で留学生と話をするが、彼らの本音を紹介しよう。

■留学生が反共産党集会の妨害行為に参加

10月21日産経新聞紙面から

 冒頭の中国籍の男らが書類送検された事件は、今年7月1日、新宿区のビルで開かれた「中国共産党結党100年全ての犠牲者を追悼する集会」で、会場内にいた中国人らが共謀して「中国共産党がなければ新しい中国はない」などと叫び、集会を中断させて会場を混乱に陥れた、進行を妨害したという。うち10人を摘発し、7人が今回書類送検されたと報じられている。

 僕は2018年初頭から日本語学校で1年と少し日本語教師をしたが、生徒は全員、中国人であった。彼らは出席率が悪いとビザの更新ができなくなるおそれがあり、日本の大学や大学院に進学を考えている者は特に出席率に敏感であった。

 ある時、それまで無欠席だった男子生徒が欠席した。日本語はそれほど上手な学生ではなく、クラスの中でもあまり目立たない方ではあったが、欠席はしたことがなかったので「彼は休みか、どうしたのかな」と呟くと、それを聞いた他の生徒が事情を教えてくれた。

 「あいつは共産党の入党試験があるから、帰国してます。」

 最初は冗談かと思ったが、後から担任の日本人の先生に聞くと「入党のための試験で帰国と連絡が入っています。中国では共産党に入れる人はエリートです。彼は両親もそうらしいですよ」と、本当のことであると知らされた。

 大半の学生は政治色を帯びていないのだが、作文を書かせると「中国は核兵器を保有しており、大国としての責務を果たさないといけない」という内容のものを書いてくる学生はいた。共産党員ではないが、政治的にはその立場に近いような学生もいるのは事実。

 その一方で大陸から香港大学に進んだ学生がおり、その学生は「雨傘運動(2014年)の時は黄色い傘をさして現場に行きました。ただ、遠くから見ているだけでした(笑)」と話してくれた。共産党に対して一定の距離を置いている学生もいるのは間違いない。

■留学中の中国人はグーグルユーザーに変身

世界に衝撃を与えた”タンクマン”(BBC NEWS画面から)

 中国ではgoogleが使用できないことは知られている。彼らに聞くと、その代わりとして百度(バイドゥ)を使用している。では、日本でも彼らは百度を使っているのかと言えば、そうでもない。

 彼らに聞くと、ほぼ100%、Googleを使用している。理由は「使いやすいから」が一番だが、彼らも百度には検索できない単語があることは知っており、その点からもGoogleを使っているようである。

 実は天安門事件そのものを知らないという留学生も増えてきており、生徒に事件の話をすると「え、そうだったんですか?」と驚いたような顔をされる場合もある。

 タンクマンの話を留学生に伝えた話は以前、記事にしたので参考にしていただきたい(参照・中国人留学生に伝えた天安門事件、名もなき「タンクマン」への反応は…)。

 全てとは言わないが、多くの中国人留学生は日本の大学に入って勉強したいと望んでおり、合格した後も連絡をくれて「頑張って勉強しています」と近況を報告してくれる学生もいる。政治運動に関わる学生は少数派であることは、少なくとも4年以上、中国人留学生に接した僕の経験からは言える。

 そのため、大学や大学院の面接の指導をする際も(あまり、政治色は出さない方がいい)というアドバイスはしている。中国共産党の教えに忠実な学生も、反体制を叫ぶ学生も、どちらも過激な思想を持っていたら大学から敬遠される。時にはマクリーン事件(最大判昭和53年10月4日)を説明して、日本における外国人の滞在事情を伝えるようにしている。

 以前、新疆から来た学生の進路指導もしたが、漢民族であろうその学生は、政治のことは話しにくそうにしていた。「私の故郷は今、安全ではないですから…」と言うのが精一杯で、それ以上は語ろうとしなかった。

 その学生を含め、中国人に「君たちの国は民主主義国か?」と聞くと、「違います」という答えが返ってくるのはほぼ同じである。

■あくまでも私の考えですが…

台北の街並み(撮影・葛西健二)

 これまで中国人留学生に聞いた印象的な言葉をいくつか並べてみよう。

 「今の中国の発展を築いた最大の功労者は鄧小平だ。毛沢東ではない。」

 「中国の選挙では必ず1票か2票、反対票が入る。あれは選挙が公正に行われていることを示すためで、最初から反対票を投じる人は決まっている。選挙で役職に就く場合には、本人が反対票を投じる役割を果たすことが多い。」

 「中国の大学で、例えば習近平の経済政策は間違っていると感じても、それを論文にして書くことなどできない。」

 さて、冒頭の台湾侵攻の問題である。最近、ある学生と雑談をしている時に「日本やアメリカの多くの人は、中国が近いうちに台湾に侵攻すると思っている。実際に習近平もそう言っている。君はどう思う?」と聞いてみた。もちろん「答えたくなかったら、答えなくてもいい」としたが、その学生は少し考えてから、こう答えた。

 「あくまでも私の考えですが、ただ、強気に言っているだけだと思います。実際には侵攻することはないと思います。」

 (それは、台湾に侵攻した場合、アメリカや日本と全面的に戦うことになるからか)と重ねて聞くと「そうです。だから、強気に言うだけなのです」とのことであった。

 少なくとも中国政府の思惑をそのように感じている中国人がいることは、確かである。

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