WBCでの台湾国旗 東京ドーム内で制約の可能性

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 開催中のワールドベースボールクラシック(WBC)2026では、台湾(中華民国)の国旗である青天白日満地紅旗が場内で掲げられている。五輪やアジア大会などでは観客席を含め国旗の使用が認められていないが、WBCではそのような制限がない。3月6日に行われた日本戦でも多くの台湾のファンが国旗を持って入場した。もっとも東京ドームでは状況によっては場内での掲出を制限する可能性があるとしている。

◾️1981年ローザンヌ合意

青天白日満地紅旗を持つ台湾のファン(撮影・松田隆)

 日本が台湾に13-0でコールド勝ちした試合では、台湾のファンが青天白日満地紅旗の小旗を振るシーンが見られた。試合前から、球場の周囲では多くのファンが同旗を持ち、顔にペイントをした人も数多く見られた。

 五輪などの国際大会では、青天白日満地紅旗は使用することができない。これは1981年のローザンヌ合意と呼ばれるIOCと中華台北五輪委員会が結んだ協定で、旗とエンブレムについては「梅花旗」と呼ばれるものが使用されることになった。

 これに伴い、五輪やアジア大会などはもちろん、五輪競技の国際連盟も追随し、主な国際競技大会では青天白日満地紅旗が使用されなくなった。会場内への持ち込みも禁止されるのが通例である。

 五輪憲章50条2項には「オリンピックの用地、競技会場、その他の区域ではいかなる種類のデモンストレーションも、政治的、宗教的、人種的な宣伝も許可されない。」(参照・オリンピック憲章 2025年1月30日から有効 国際オリンピック委員会)と定められており、IOCの立場では中華民国の国旗は承認されていない旗であり、それを掲げることは政治的な宣伝活動や認められていない政治的主張とみなされると解釈されるのである。

 これが国際社会における台湾の置かれた状況である。ところが、WBCの場合は、主催がWBCインク(MLBとMLB選手会の代表者で構成される民間組織)であり、IOC傘下にはない。そのためローザンヌ合意に拘束されず、青天白日満地紅旗を場内で振ることが認められているということである。

 こうして台湾のファンは堂々と東京ドーム内に国旗を持ち込めることになり、6日の日本戦では多くのファンが青天白日満地紅旗を持ってドーム内へと入っていった。筆者が見た限り、梅花旗を持ったファンは皆無であった。

◾️台湾の国旗を制約の可能性

 もっとも、東京ドームでは青天白日満地紅旗の掲出を制限する可能性はあるとしている。東京ドームの担当者に電話で聞いたところ、青天白日満地紅旗の持ち込みは特に制約はなく、それを広げた場合には「特にこちらではお声がけしません。ただ、主催者の判断で掲出をご遠慮願う場合もあります」とのことであった。一方で梅花旗については「特に問題はございません」とのことで、こちらは掲出を制限することはないとの回答であった。

 この違いは何か。WBCは入場規定を定めて、ホームページで公開している。旗の使用については以下の規定がある。

・大会期間中は、WORLD BASEBALL CLASSIC INC.が認める大会参加国及び地域の旗のみ持ち込みが許可されます。

台湾からのメディアも東京ドームに集結(撮影・松田隆)

 今大会で台湾は「Chinese Taipei(中華台北)」として参加している。そのため、梅花旗が公式の旗となるため、上記の規定では梅花旗が中華台北の地域の旗という位置付けであるのは明らか。青天白日満地紅旗については持ち込みは可能であるとすることから、主催者は青天白日満地紅旗も台湾という地域の旗と解釈している可能性がある。

 もっとも、遠慮してもらう場合があるというのであるから、何らかの不都合が生じた時には掲出を禁じられる。どのような場合なのかは、その場で説明はなされなかった。考えられるのは、同じ予選プールに中国チームが入った場合などであろう。ところが、中国は2025年3月に米アリゾナ州で行われた予選で3戦全敗で本選への出場を果たせなかった。一方、台湾は同年2月の台北予選を勝ち上がり、本選出場を果たした。

 これによって台湾ー中国の戦いは消滅したために、青天白日満地紅旗は制約されることがなくなったものと思われる。

◾️応援小旗と旗の違い

 実は日本戦で多くの台湾のファンが持っていたのは、旗ではなく応援小旗である。この応援小旗と旗では扱いが異なる。応援小旗は入場規定では応援用具の1つとして扱われている。縦横500mmの大きさ制限があるものの、青天白日満地紅旗そのものは禁止されていない。それは以下の規定によるものと思われる。

・主催者は、競技、選手及び各国及び地域の文化遺産を称える応援幕、メッセージボード、応援小旗を歓迎します。

 青天白日満地紅旗の応援小旗は、地域の文化遺産を称えるものという位置付けなのであろう。すなわち個々のアイデンティティやルーツを称えるものという解釈がなされているようである。そのため、ファンは大手を振ってドーム内に持ち込むことが可能となる。ただし、この応援小旗も制約することは可能である。

・応援幕、メッセージボード、応援小旗などの応援用具は、以下の条件を満たす場合に限り許可されます。

 試合の進行や他の観客の観戦妨害とならないこと

 前述の中国との試合があることになった場合には、中国のファンとのトラブルになり、試合の進行を妨げる可能性があるなどの理由をつけて制限をできる体制にはなっている。実際には日本、豪州、韓国、チェコと同じプールで、青天白日満地紅旗の応援小旗が問題となるシーンは想像できず、制約はなされないであろう。

(※以上、WBCホームページ・2026 WORLD BASEBALL CLASSIC™ Tokyo Pool presented by dip(強化試合を含む)観戦時のお願い 入場規定及び行動規範 から)

 当サイトでは、どのような場合に旗の掲出が制約されるのか、東京ドームに文書で回答を求めた。

質問・青天白日満地紅旗について、どのような場合にどのような理由で掲出しないようにお願いするのでしょうか。

 東京ドームの担当者は「文書で質問してもらえば、回答します」と言っていたが、当サイトが定めた時刻までに回答はなかった。

◾️中国に気兼ねせずに

 台湾が多くの国際大会で中華民国という国号と、青天白日満地紅旗を使用できないのは前述のようにローザンヌ合意による。合意から44年、今ではすっかり「Chinese Taipei(中華台北)」の名称と梅花旗が台湾のシンボルのようになっているが、自国の国号と国旗を使用できないのは台湾の国民にとっては屈辱的なことであろう。

青天白日満地紅旗を持つ台湾のファン(撮影・松田隆)

 ただ、五輪など国際大会に出場して海外での知名度向上を図るために台湾自身が選んだ道であるからやむを得ないとしても、IOC傘下にない団体が主催するWBCであれば、ローザンヌ合意を気にする必要はないのではないか。

 もちろん、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)の公認大会でもあるという事情から一定の配慮が必要なのかもしれないが、公認を外されても興行的にも、大会の権威にしてもさほど影響は受けないのは明らかであろう。

 いつまでも中国に気兼ねするようなことはやめて、堂々と中華民国、もしくは台湾の名称で参加し、青天白日満地紅旗を掲げて出場させてもよいのではないか。仮に中国がWBCから脱退しても、さほど影響はないのではないか。

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