橋下徹さんが靖国神社論争で墓穴? 弁護士なら憲法20条を説明して

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 ツイッターで橋下徹さんと百田尚樹さんが、靖国神社の問題で議論をしている。橋下さんの言い分は靖国神社を国立化して戦争指導者を分祀すれば、中国・韓国からのクレームがなくなるから、天皇陛下と首相が参拝できるというものらしい。

■疑問はたった1点、橋下徹さん「靖国の国立化」

橋下さん、それは無理筋です

 百田尚樹さんは中国・韓国のことは気にせず参拝せよということのようで、それに対して橋下さんは政治家として実現可能なことをすべきということを主張している。ビッグネームのバトルに僕は完全な傍観者であったのだが、どうにも橋下徹さんの主張が理解できず3度ほど橋下さんに返信したが、当然、無視された(笑)。

 僕がおかしいと思うのはたった1点、「靖国の国立化」である。靖国神社はご存知のように現在は宗教法人であるが、橋下さんはそれを「国立化」するという。「神社を国立化?」。これにはびっくりである。まず、憲法20条と89条を示そう。

【日本国憲法】

第20条

①信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

③国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

第89条

公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

 つまり、宗教団体は国から特権を受けてはならず(20条1項)、国は宗教活動を禁止され(同3項)、公の財産は宗教上の組織若しくは団体に対して支出してはならない(89条)とされている。このがんじがらめの政教分離にあって、宗教法人なのか、神社施設なのか知らないが靖国神社を国立化するなど絵に描いた餅でしかない。

 ここで、橋下さんのツイートを示す。

「靖国神社に首相と陛下に参拝いただくことが絶対目標です。そのための手段として靖国の国立化。もともとこのような施設は宗教法人管理ではなく、国立にすべきものです。そして戦争指導者分祀。その方法がダメなら百田さんはどんな案を?百田さんは中韓を無視して参拝しろ!としか言わない。」

■あなたのいう「これ」が絶対に不可能ですよ、橋下徹さん

靖国神社(撮影・松田隆)

 正気ですか? 橋下さん。憲法20条、89条は学部レベルでも嫌という程、教わるはず。現行の憲法下で宗教施設の国立化など絶対に不可能と言っていい。それをあたかも実現可能のように持ち出して「百田さん、これ以外に方法ある?」と言っているが、そもそも橋下さんの言う「これ」が絶対に不可能(笑)。

 さすがに僕も黙っていられず「靖国神社を国立化と言いますが、宗教法人もしくは宗教施設の国立(有)化が現行の憲法で可能ですか? それは無理筋ではないかと思いますが。」と返信したが、当然のように無視された。

 ただ、憲法20条の問題を持ち出されて、まずいと思ったのか分からないが、橋下さんはその後にこんなツイートをした。

「靖國の代わりの施設を作るのではありません。靖國を国立化するだけです。その際、たとえ憲法20条で政教分離の壁を乗り越えても、国民全員に神道を強制するわけにはいきませんので、旧陸軍墓地を無宗教(アーリントン墓地のように全宗教OKとうい意味)の国立追悼施設にすべきという案です。」

 このツイートも謎。「たとえ憲法20条で政教分離の壁を乗り越えても」というが、靖国国立化の段階で政教分離どころか政教合体になっているのに、どうやって壁を乗り越えられるのだろうか。

■橋下徹さん、もしかして憲法20条を忘れていた?

 橋下さんは靖国国立化という案を思いついた時、あるいは知った時に憲法20条、89条の問題がスッポリと頭から抜け落ちていたのではないか。さすがに弁護士が「いや、忘れてました」と言えず、その後、20条にちょっと触れて(それについては意識してますよ)とポーズをとっているのかもしれない。

 もちろん憲法20条、89条を改正すればいいのだが、これらを改正するのは憲法9条改正より遥かに難しい。政教分離に反対する人などいるのか? 創価学会員か、あるいはオウム真理教の元信者ぐらいであろう(笑)。

 大阪市長時代、抜群の行政能力、法的知識で不勉強な記者の根性を叩き直していた橋下さんは、僕の好きな政治家であった。しかし、今回ばかりはうっかりミスが墓穴を掘ったようだ。もし、ミスではないというのなら、僕の質問にズバッと答えてほしいものである。

 待ってますよ、橋下徹さん!

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