人気講師 松原一樹氏動画上で脅し「突撃・顔晒す」
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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人気予備校講師で、教育系YouTuberの松原一樹氏が、18日付けで公開した動画でコメント投稿者に対して「(自宅に)突撃」「顔を晒す」などと口にしている。これらは害悪の告知であり、脅迫罪(刑法222条)の成立が考えられる。松原氏は当サイトの取材に対して違法性はないという趣旨の回答をしたが、被害者の動き次第では事件化される可能性がある。
◾️「逃げまくる」悪質な人
松原氏は以前から、「モリテツ」の異名を持つ人気英語講師の森田鉄也氏と「受験生版令和の虎(Tiger Funding)」に出演したX君(短大休学中とされる)の指導を行なっている(参照・教育系YouTuber松原•モリテツ氏 生徒”見せもの”、生徒”見せもの”批判に松原氏「本人が公開希望」)。
このX君に対する誹謗中傷のコメントが見られたために、特に悪質と見られる3人に対してプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求を行うとした(×××が本気でキレたようです。。。)。※×××の部分はX君の氏名(本名ではないとされる)
これが認められ、18日付けで公開された動画では3人の発信者の情報が開示されことを明らかにしている(×××、開示請求の進捗に関して)。
この中で3人のうち2人とは連絡が取れて謝罪を受けたというが、残る1人(A氏とする)は「逃げまくってる」(松原氏)とのこと。このA氏に対して、X君と松原氏のやり取りは以下のようになっている。
松原:まず、非常に悪質な方3名に対して、全部住所も名前も把握できたので、うちの法務が連絡しましてですね、うち、2件は謝罪が来たっていう話は、多分伝えたと思います。電話も来ましたし、謝罪の文面も来ました。…1人に対しては、逃げまくってるので、自宅まで特定しているので、突撃しようかなと思ってます。徹底的にそこはやらないといけない。
…
松原:…あまりにも悪質な人が1人いて、逃げまくってるのでね、もう、突撃ですね。
X君:家まで突撃。
松原:あ、そうですね。はい、もう、Xちゃん顔を晒してるんだからね、そこまで言うんだったら、相手も顔晒してほしいよね。
X君:はい。
松原:とりあえず動画は撮りますので、それぐらいね、こちらもやる覚悟を見せないと、やっぱり減らないと思うんだよね。
…
松原:引き続き誹謗中傷された方は、ご連絡をお待ちいただければ幸いです。…過去にやったことに対しての清算も必要なので、あまりにも酷い方に対しては、引き続き連絡を随時行なっていきますので、首を長~くして待っていただければと思います。
◾️脅迫罪が成立か
この一連のやりとりはA氏に対する脅迫罪(刑法222条)が成立する可能性がある。
【刑法第222条】 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
脅迫罪とは、人を畏怖させるような害悪の告知を行うことである。この犯罪の成否で最も問題になるのは害悪の程度であろう。世間話をしている時に「これ他人に喋ったら、ぶち殺すからな」と冗談めかして言った場合であれば、これは人を畏怖させるようなものとは言えない。
そこで「告知する害悪は、他人を畏怖させるに足りる程度のものでなければならない。不快感、困惑、気味悪さ、威圧感、漠然とした不安感を感じさせる程度のものでは足りない。」とされ、さらに「告知した害悪が他人を畏怖させるに足りる程度のものと認められるかどうかは、告知内容のほか、告知の日時・場所・方法、相手の年齢・体格・経歴・職業等、告知者と相手との関係、告知時のその場の状況、告知に至った経緯、社会的情勢等の具体的事情を総合的に考慮して判断すべき」(条解刑法第4版 前田雅英編集代表 弘文堂p669)とされる。
さらに内容については「ある程度、具体的であることが必要である。」とされ、実現可能性は「加害内容は、告知者の意思によってその害悪の実現を左右することができると相手に思わせ得るものでなければならない。…したがって、神の力で加害する旨告知したとしても、相手は通常その害悪の実現が可能であるとは思わないであろうから、本罪は成立しない…」(同 p670)とされている。
本件において松原氏は、A氏はネットで誹謗中傷を行った人間であるとし、顔を勝手に撮影して、YouTubeで公開する(晒す)と具体的な方法を示して告知しており、実際に行われればA氏の名誉を毀損し、プライバシーを侵害するのは明白。通常、「ネットで晒す」と告知することは脅迫となり得る(弁護士ドットコムニュース・店員に逆ギレする客「ネットで晒してやるから覚えておけ」 これって、脅迫?)。
また、自宅と名前を把握していることから実際に自宅に押しかけることは可能であり、自身の運営するYouTubeチャンネルがあるため、自身が望む動画を公開することも可能と考えられる。そうなると、告知者の松原氏の意思によってその害悪の実現を左右できる。現時点では脅迫罪成立は濃厚と言える。
◾️松原氏に5つの質問
当サイトでは松原氏に連絡を取り、5つの質問を送付し、その回答を得た。
Q01:…(A氏…)の自宅に「突撃」して動画撮影するとし、「相手の顔を晒したいよね」「とりあえず動画は撮ります」と語っていらっしゃいますが、これはYouTube番組上の演出として、その気はないのに本当にやるかのように語っているだけなのでしょうか、それとも本当に行うお考えなのでしょうか
松原:抑止力になればと考え配信しております。動画公開時は誠意ある謝罪をしていただきたいと考えて配信しました。
松原氏は誠意ある謝罪をさせるために、害悪の告知を行ったという説明をする。相手を畏怖させる意思・目的の有無は犯罪の成否においては見解が分かれているが、少なくとも松原氏の場合は相手から謝罪を引き出させる目的があったことは間違いなく、「相手を畏怖させる目的はなかった」という言い訳はできないことになる。
Q02:A氏の自宅に行き、動画を撮影して、その顔を晒すことは、当該人物の名誉を傷つけるものであるという認識はありますでしょうか
松原:あります。あくまで演出であり法令に則して対応する所存です。
脅迫罪の故意は「法益に対する害悪を加える旨を相手に告知することについての認識」(前出の条解刑法、p672)。この点、松原氏はA氏の名誉を傷つけることへの認識を有しており、当然、YouTubeでそれを告知していることの認識はあるため、構成要件的故意に欠けることはない。
また、「法令に則して(筆者註・「則って」の意味と思われる)対応する」という表現は明らかにおかしい。YouTubeを利用しての脅迫罪は既遂に達していると見られ、その時点で法令に則っていない。
Q03:A氏は自宅に突撃され、動画を撮影によって顔を晒されるのは、行った行為からして当然の報いであり、そのようなことをされるのは仕方がないこと、とお考えでしょうか
松原:法令に沿い、対応する所存です。
事実上のノーコメントで、質問の趣旨が理解できないのか、理解した上で答えたくなのいのかは明らかではない。
Q04:略
Q05:動画で予告した行為をすること、また、そのような予告をすることは教育者として適切な行為とお考えでしょうか
松原:教育者としては自らの生徒を守ることが肝要と考えております。
この回答もよく分からないが、A氏に対する害悪の告知は、正当防衛となり得るということを言いたいのかもしれない。松原氏は動画の中で「うちの法務」と語っており、法務部のような組織があるのなら、こうした害悪の告知、脅迫が違法性阻却されることがあるのか、本件では阻却されるのかどうかを確認してはいかがか。
生徒を守るためなら、コメント欄を閉鎖するなり、YouTubeに通報してアカウントを停止させる、あるいは損害賠償請求をするなど、対応は法的なものを含めて、いくつか考えられる。松原氏のやろうとしていることは、相手の名誉やプライバシーを侵害すると脅し、謝罪させるというもので、許されない自力救済というべきである。法治国家では原則として自力救済は禁じられている。
◾️A氏は刑事告訴を
正当防衛が認められるのは、公的機関の保護を求める余裕がなく法益保護のために実力行使が必要となるからと説明されるように、あくまでも例外的に許容されるものである。
本件では誹謗中傷の書き込みに対して、法的措置で対抗することが可能。たとえば問題となった文言の削除や、損害賠償請求をかけて、自らが受けた損害を賠償してもらうことでも救済できる。そうした法に則った解決法が可能であるのに、相手を脅迫するという方法で事案の解決に臨むとは、まともな社会人のやることではない。松原氏は教え子のX君に脅迫の片棒を担がせていることも認識すべき。
A氏は自らが行ったとされる行為(誹謗中傷の書き込み)について責任を取らなければならないと思うが、同時に松原氏、X君を刑事告訴して責任を追及してほしい。ここで白黒はっきりつけないと、松原氏の暴走は止まらないと思う。