トーチュウの次を占うスポーツ紙消滅ラリー
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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東京中日スポーツ(中日新聞社東京本社発行)が2025年1月末をもって紙面印刷を休止し、電子版へ移行することが5日、発表された。紙の新聞発行に関しては休刊・廃刊であり、2022年の道新スポーツから始まった一連のスポーツ新聞の事実上の休刊・廃刊の同一線上にあると見ていい。当サイトでは次に倒れるスポーツ新聞、最後まで残るスポーツ新聞はどこかを予想する。「次」はデイリースポーツ本命は衆目の一致するところで、最も長く生き残るのはスポーツ報知と考えている。
◾️コストアップで経営を圧迫
東京中日スポーツの発行会社である中日新聞は5日に、トーチュウの紙面印刷を2025年1月末を持って休止することを発表した。「取り巻く環境は厳しさを増し、昨今は印刷や配送など読者の皆様にお届けする費用も大きく上昇してしまいました。」と決定に至った理由を説明した(中日新聞電子版・東京中日スポーツは紙印刷を休止します 来年1月末で 電子版は引き続き発行)。
既にデイリー新潮が同紙の休刊を報じ(デイリー新潮・「東京中日スポーツ」事実上の“廃刊”か 「紙媒体をやめるということは“トーチュウ”ブランドが消えることに…」)、当サイトでも実際に同紙を購入し、広告主からほとんど見放されている悲惨な現状を伝えた(トーチュウ休刊へ ”金欠紙面”断末魔の呻き声)。
6日、東京新聞の顧客センターに事情を聞くと「もろもろ事情はありますが、用紙代、燃料代、あるいは各販売店に持って行く配送代など、色々なものが高騰により、紙としてのトーチュウは1月末で終了ということになってしまいました」との説明であった。
コストの上昇が続くも、販売部数は増えず、値上げもできず、さらに広告も思うように入らない状況であることは容易に想像がつく。新聞を刷れば刷るほど赤字が増える状態に陥っているのは間違いなく、これ以上、赤字を垂れ流すと本体も危なくなるという危機感が中日新聞の経営陣にはあったものと思われる。
同センターの説明では紙面の定期購読に関しては2025年1月末までしか契約できない。現在の契約では紙面と電子版がセットになっているために電子版の有料部分も見られるが、2025年2月1日からは新たに電子版の契約(1か月1980円)を結ばないと有料部分は見られなくなるとのことであった。
◾️ブロック紙発行スポーツ紙が消える
ネットの普及とコロナ禍による売り上げ不振、発行コストの上昇が原因と思われるスポーツ新聞の事実上の休刊は、2022年11月末の道新スポーツに始まる。それ以前となると1992年のフクニチスポーツまで30年近く遡らなければならない。フクニチスポーツは発行するフクニチ新聞社の破産により休刊に追い込まれたもので、最近の一連のスポーツ新聞の事実上の休刊とは事情が異なる。
道新スポーツ、西日本スポーツ、東京中日スポーツの共通点は、発行がすべてブロック紙であること。一般的に地方紙は特定の地方を販売対象とする新聞で、ブロック紙は複数の都道府県を販売対象とする新聞とされる。北海道新聞は北海道のみの発行であるがブロック紙に分類され、中日新聞、西日本新聞とブロック紙3社連合という協力体制を構築している。
このブロック紙3社連合発行のスポーツ紙が紙の印刷から撤退しているのは分かりやすいが、実際は中日新聞社発行の中日スポーツ(名古屋地区を中心に販売)の紙面は残り、中日新聞社東京本社発行の東京中日スポーツだけが紙の印刷から撤退となる。このあたりの違いは各社の経営体力や発行・販売事情が微妙に絡み合って違いとなって顕出されている。
読者にとって分かりやすいように関東エリアに限った事情を見れば、1963年から続いてきた6紙体制が62年目で崩れることになる。2025年2月からは5紙体制となるが、それもいつまで続くかわからない。前述のように道新、西日本、トーチュウの共通点はブロック紙が発行していた。一般にブロック紙は全国紙に比べて収益の効率がいいとされるが、経営規模は小さい。赤字を生み出すコンテンツでしかないスポーツ新聞をいつまでも抱えていられる体力があるはずもなく、全国紙の系列のスポーツ新聞がまだ生き残っている事情を考えれば、関東エリアの6紙のうち、トーチュウの次に消える可能性があるのはデイリースポーツで間違いない。
デイリースポーツは神戸新聞という地方紙が発行しており(編集は株式会社デイリースポーツ)、関東地区で販売されているのは関東版で、部数から言えば関西版が圧倒的に多いとされる。関東版をつくる東京には整理部はなく取材部門のみ。阪神タイガースを中心に報道しているのは有名だが、関東エリアでその編集方針では読者層は限られる。
発行部数はトーチュウとの5位争いが定位置で、4万部程度と思われる。トーチュウが紙面印刷から撤退の理由とした「用紙代、燃料代、あるいは各販売店に持って行く配送代」の高騰はデイリースポーツにしても同じで、早くからネットによる報道に力を入れていた事情も考慮すれば、2025年末から2026年初頭に印刷をやめる可能性はあると、当サイトでは予測している。
◾️デイリーの次はサンスポか
デイリースポーツが次に消える筆頭として、その次に考えられるのがサンスポである。こちらは産經新聞という全国紙が発行しているが、もともと産經新聞自体の販売店網は三大紙に比べて脆弱で、サンスポもその点でハンデを負っている。
産經新聞は全国紙でありながら90万部割れを起こしている(RTB SQUARE・産経新聞、ABC部数で90万部下回る)。ブロック紙の中日新聞でも200万部前後とされており、その半分以下の規模の新聞社がスポーツ新聞を抱えていくのは無理がある。既に夕刊フジが2025年1月末で電子版も残さない事実上の廃刊を決めている(さようなら夕刊フジ 来年1月末で休刊)のは、産經新聞が相当、追い込まれている状況にあることを示している。
道新スポーツはもともとサンスポの紙面をほぼそのまま使用していたが、それが紙面発行中止となったのは、産經新聞社にとって大きな痛手であろう。そのような状況からデイリーの次に紙面がなくなるのはサンスポと予想するのが定石。夕刊フジの例からして、それほど遠くない将来に電子版に移行すると思われる。
◾️最後に残るスポーツ報知
残るは日刊、スポニチ、報知の3紙。結論から言えば、最後まで残るのはスポーツ報知と考えている。これはバックに讀賣新聞という比較的健全な経営の大資本がついているからで、ライバル紙が消える中、我慢して市場を独占的に支配できる状況まで頑張ろうという発想の下、生き残るのではないか。
日刊とスポニチはおそらく今の時点の部数はほぼ同じ。スポニチは系列の毎日新聞自体が非常に厳しい状況にあり、ある日バッタリと倒れる可能性はある。日刊スポーツは朝日新聞系列で毎日新聞よりは系列会社の経営はまだましではあるが、朝日新聞社のグループ企業ではなく、スポーツ新聞の中では最も独立性が強い。
日刊スポーツが経営に行き詰まっても朝日新聞から本格的な支援を得られない可能性は考えないといけない。朝日新聞が日刊スポーツ新聞社東京本社の株式の大半を取得して完全に傘下に収める可能性は否定しないが、朝日新聞にそこまでの資金面での余裕と救済の意思があるかは疑ってかかった方がいい。
以上のように考えると、スポーツ新聞消滅ラリーは以下のような順番となる。
①東京中日スポーツ
②デイリースポーツ
③サンケイスポーツ
④、⑤日刊スポーツ/スポーツニッポン
ースポーツ報知
①が2025年1月末に”消滅”するのは確定しており、それ以後はあくまでも漠然としたイメージであるが、②と③は2025年~2027年初頭、④と⑤は遅くても2028年頃と考えている。
新聞社の衰退を競馬界から眺めると、来年の武蔵野ステークスは中日新聞社の社杯ではなくなるという事でしょうか。
JRAが9月23日に公表した開催日割および重賞競走には「東京中日スポーツ杯武蔵野ステークス」となっていました。
デイリースポーツが関東から撤退し、西日本のローカルスポーツ紙に転落すれば、「デイリー杯クイーンカップ」も単なるクイーンカップになるのでしょう。
サンケイスポーツも危ういという事ですが、東京本社の紙面は大阪本社の紙面に比べて、薄っぺらい印象がありますし、プロ野球の結果に於いても締切の関係なのか試合の途中経過のものを多く見かけます。
競馬面についても、大阪本社版は別立ての紙面にしていますし、夕刊フジのように休刊にならなくとも、東京本社版のみが休刊になる可能性はありますね。
デイリースポーツにせよサンケイスポーツにせよ、阪神タイガースファンをメインターゲットにしているところもあるので、大阪版は直ぐにはなくならないと思います。
10年後に生き残ってるスポーツ紙、一般紙はあるのか…
今の形で残っている新聞はないと思います。スポーツ報知を含めて紙のスポーツ新聞はなくなっていると思います。
ネットでどれだけ残っているかでしょう。紙で配るという媒体のあり方も問題ですが、それ以上にスポーツ新聞が伝える情報にお金を払おうという人がいなくなっていると思います。
輪転機メーカーも東京機械だけになってしまいましたし、部数が右肩下がりなのに製紙会社が設備投資を維持してくれるかも疑問です。そのうちに「もう新聞用紙は作らないよ」と言われてしまう日も近いかもしれませんね。