”馬”違えられたディープ産駒 英オークス圧勝

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 G1英オークス(芝12ハロン6ヤード)が6月4日、エプソムダウンズ競馬場で行われ、ディープインパクト産駒スノウフォールが2着に16馬身差をつけて圧勝した。スノウフォールは前年のG1レースで他の馬と間違えられて出走するという曰く付きの馬だったが、英3歳牝馬の頂点に立った。

■「これほど楽だったものはない」デットーリ騎手

後続を突き放すスノウフォール(Racing TV画面から)

 稍重馬場で行われたレースにL.デットーリ騎手とのコンビで出走したスノウフォールは、後方から5番手につける。最終コーナーを回ると各馬が外ラチに方向に殺到する混戦の中、残り2ハロンで逃げるミステリーエンジェルに並びかけ、1ハロン標識では完全に抜け出して後続を突き放す。最後は手綱を抑える余裕で、逃げ粘るミステリーエンジェルに16馬身差をつける圧勝だった。

 242年の歴史を誇る英オークスで、2着につけた16馬身差は、1983年のサンプリンセス優勝時に2着のアクリマタイズにつけた12馬身差を大きく更新する新記録となった。ディープインパクト産駒の英クラシック制覇は、2018年のサクソンウォリアーのG1英2000ギニーに次ぐ2頭目。

 デットーリ騎手は「多くのクラシックで優勝してきたが、これほど楽だったものはない。信じ難い」と話した(レーシングポスト電子版:Snowfall adds another posthumous Classic for the irrepressible Deep Impact)。

 母のベストインザワールドは、2016年のG1凱旋門賞などを制したファウンドの全妹で、スノウフォールはチャンピオン牝馬の姪にあたる。しかし、2歳時はパッとせず7戦1勝。その名前が有名になったのは良血ぶりでも、大レースでの活躍でもなく「馬違い」のアクシデントだった。

■英1000ギニー馬と英オークス馬を取り違え

写真はイメージ

 2020年10月9日、G1フィリーズマイルに、同じA.オブライエン厩舎のマザーアースとともに出走。ともに鹿毛ということもあり陣営も間違えたのか、2頭を取り違えたまま出走させてしまった。

 結果、スノウフォールとされたマザーアースが3着、マザーアースとされたスノウフォールが8着となった。レース後に馬を間違えたことが判明、BHA(英国競馬統括機構)が調査し、マザーアースが8着から3着へ、スノウフォールが3着から8着に訂正された。アイルランドのナンバーワン厩舎のお粗末な出来事は日本でもニュースになった。

 この”馬”違い事件の被害馬の1頭であるマザーアースはその後、昨年11月6日のG1BCジェヴェナイルフィリーズターフで2着と好走、さらに今年5月2日のG1英1000ギニー(芝8ハロン)を優勝している。

 つまり、この”馬”違い事件は、後の英1000ギニー馬と英オークス馬を取り違えていたという、豪華な組み合わせであった(日本の桜花賞馬とオークス馬に相当)。しかも、後のG1制覇時はどちらもデットーリ騎手騎乗と、何とも因縁めいている。

■キングジョージ、凱旋門賞と夢は広がる

 スノウフォールは5月12日のG3ムシドラS(芝10ハロン56ヤード)で2着のヌーンスターに3馬身4分の3差をつけ圧勝。本番での期待が一気に高まり、オークスでは単勝3番人気に推されていた。とはいえ、主戦のR.ムーア騎手が1番人気のサンタバーバラを選択したため、デットーリ騎手とのコンビが成立した。

 陣営ではこの後は7月4日のG1愛オークスを検討していたようであるが、今回の勝利で7月24日のG1KジョージⅥ世&QエリザベスSに向かう可能性が出て来た。もちろん、秋はG1凱旋門賞がターゲットになる。

 英国のブックメーカーでは今回の勝利を受けて同馬の凱旋門賞での前売り単勝オッズを5~6倍に設定。ラヴやミシュリフらを抑えて1番人気となっている。

"”馬”違えられたディープ産駒 英オークス圧勝"に1件のコメントがあります。

  1. MR.CB より:

    》》ジャーナリスト松田様

    ディープ産駒が海外のビッグレースで活躍することは、日本の競馬ファンにとっても非常に喜ばしいことですね。今年秋の凱旋門賞でクロノジェネシスなどの日本馬との対戦も楽しみです。世界最高峰のレースの一つである凱旋門賞を勝つことは、日本のホースマンにとって最大の悲願でもあります。その価値を競馬を知らない人に分かりやすく例えれば、日本人が五輪の陸上100メートルの金メダル、サッカーのワールドカップで日本チームが優勝することに匹敵する偉業と言えます。半世紀前には、語ると笑われる夢物語でした。しかし既に、エルコンドルパサーやナカヤマフェスタ、そしてオルフェーブル(2回)が2着になっています。最近では日本馬は毎年複数頭がエントリーします。競馬本来、チーム戦ではなく個々の力ですべての馬達が1着を目指します。ですが、凱旋門賞制覇を真剣に考えるのであれば、競輪のようにラインを組んで戦う戦法が望ましいと、小賢しい私は考えます。もちろんどの馬を勝たせるではなく、日本馬のいずれかが勝つためなのです。単にレースに於いてではなく、輸送や現地での調教(稽古)も含めて、「チーム・ジャパン」こそが夢を叶えられる手段だと思います。

    おそらく私は令和電子瓦版では、少数派の競馬ファンのひとりでしょうね。でも私は近い将来、松田さんが令和電子瓦版で大々的に日本馬の吉報を嬉々として報じていただけると信じてお待ちしております。

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