凱旋門賞タルナワ最有力 一発なら武豊

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 欧州競馬の頂点G1凱旋門賞(芝2400m)が10月3日、パリロンシャン競馬場で行われる。日本からクロノジェネシス、ディープボンドの2頭が参戦、武豊騎手はアイルランド調教馬ブルームとコンビを組み、優勝を目指す。またディープインパクト産駒の愛調教馬スノーフォールも出走と、日本色が強い一戦となる。中心は前売り1番人気のタルナワで、武豊ブルームに一発の期待がかかる。発走予定時刻は日本時間23時5分。

■タルナワ欧州チャンピオンへ

BCターフでのタルナワ(ゼッケン3、Breeders’ Cup World Championships チャンネルから)

 今年の凱旋門賞は有力候補の1頭だったラブ(牝4、愛A.オブライエン厩舎)が出走を取り消し、14頭立てで争われる。出てくれば最強と思われたセイントマークスバシリカは後脚の古傷が再発して引退、種牡馬入り。さらにG1ドバイシーマクラシックを制したミシュリフは10月16日のG1英チャンピオンSに回る予定で回避となった。今年は道悪必至で、レースを考える上で、その部分のファクターを考慮する必要がある。

 これだけ条件がそろえばタルナワ(牝5、愛D.ウェルド厩舎)が順当に勝つのではないか。昨年G1ヴェルメイユ賞を勝ち、凱旋門賞当日、不良馬場のG1オペラ賞も制した。さらに米国に渡ってG1BCターフで直線大外一気に末脚でマジカル以下を切り捨てた。

 コース適性も、道悪の適性もあるのは証明済み。今年のローテーションを見ると、完全に凱旋門賞を狙いに来ている。使い出しが8月5日のG3バリーローンSで、9か月の休養をとったのは今秋に照準を合わせればこそ。休み明けの一戦を2着に6馬身半差をつけて勝ち、その後、9月11日のG1愛チャンピオンSでセイントマークスバシリカに4分の3馬身差2着となり連勝は5で止まった。

 セイントマークスバシリカにとってベストと言っていい10ハロン戦という舞台であり、力負けの感は否めない。しかし、距離が延びて、しかもセイントマークスバシリカが引退して凱旋門賞には出ないのだから、馬場状態、ローテーションを含め、死角らしい死角は見当たらない。怖いのは前がゴチャついて、馬群をさばくのに時間がかかった時ぐらいか。

 昨年のBCターフで見せたケタ違いの強さからしても、欧州チャンピオンに相応しい馬と言っていい。

■英ダービー馬アダイヤー27年ぶりの快挙狙う

 前評判では2番手の評価のアダイヤー(牡3、英C.アップルビー厩舎)はどうか。6月5日のG1英ダービーを勝った段階では、最近の英ダービーに多い”一発屋”と思われたが、続く7月24日のG1KジョージⅥ世&QエリザベスSを制して評価は一変。1994年のラムタラ以来27年ぶりの同一年のダービー・キングジョージ・凱旋門賞制覇を狙う。

 ただし、凱旋門賞の前哨戦を使う予定だったものを使わずにぶっつけ挑戦となるところに一抹の不安が残る。勝ったG1は良馬場と稍重馬場で道悪は歓迎とは言えず、不安定要因は少なくない。馬群に沈むシーンもあるかもしれない。

 同厩舎のハリケーンレーン(牡3)が面白い。愛ダービー・パリ大賞・英セントレジャーとG1を3連勝中。主戦のW.ビュイック騎手は、英ダービーではアダイヤーではなくこちらを選んで3着に終わる屈辱の結果となった。今回、凱旋門賞では英ダービーで捨てたアダイヤーを選択したが、そのチョイスはどうなのか。ハリケーンレーン向きの道悪競馬が確実となり、英ダービーで”当たりクジを捨てた”騎手が2度貧乏くじを引いても不思議はない。それも含めて、ハリケーンレーンを相手筆頭に。

■武豊の一発 まさかのブルーム

 一発なら武豊ブルーム(牡5、愛A.オブライエン厩舎)と考える。日本では前哨戦のG2フォワ賞でディープボンドに1馬身半差の2着という結果から、すっかり見限られた印象。しかし、このレースは良馬場で行われ、前半1400mが1分33秒44という超スローの競馬となった。上がり3ハロン33秒85という完全な上がりの競馬、逃げたディープボンドに33秒台で上がられたら後続はお手上げである。よく2番手から流れ込んでおり、内容は悪くない。

 7月4日のG1サンクルー大賞は重馬場で逃げ切りG1初制覇。今回、得意の道悪競馬、ディープボンドに行かせて2番手から抜け出す競馬が予想され、あれこれ考えなくても済むのは鞍上としてはやりやすい。

 武豊騎手は2019年にソフトライトというフランス調教馬で出場したが12頭立てで現地オッズは11番人気タイ。要は最低人気での出場だったが6着と健闘し、日本から参戦したキセキら3頭に先着を果たした。2001年には同じくフランス調教馬のサガシティで6番人気(他の馬と同一の括り)で3着。人気薄の欧州調教馬に乗せたらキッチリと仕事をしてくる。

 今回の凱旋門賞前のインタビューでは「日本の馬を負かしたらゴメンね」(デイリースポーツ電子版9月27日公開)と語っている。これは半分冗談だろうが、内心、日本の2頭に先着する自信があるのかもしれない。少なくとも過去の3、6着馬のサガシティ、ソフトライトよりは遥かに実績は上だから、そう考えることに合理性はある。勝つだけの条件は揃っており、波乱を巻き起こすとすれば武豊ブルームと思う。

■スノーフォールは馬場がカギ

愛オークスで直線抜け出すスノーフォール(Racing TV画面から)

 スノーフォール(牝3、愛A.オブライエン厩舎)は楽勝と思われた9月12日のG1ヴェルメイユ賞で2着と敗れ、金メッキが剥がれた印象は否めない。陣営はペースが合わなかったとするが、G1英オークスで2着に16馬身差つけた馬に(展開どうこうはないだろう)とファンは思ったに違いない。

 結局、前走の結果は、スノーフォールも異次元の馬ではなく「普通に強い馬」に過ぎないことを示したと言えよう。それでも有力候補の1頭に変わりはないのだが、道悪が未知数。ドボドボの馬場に見えた英オークスも発表は稍重。重馬場は2戦して5、8着と実績がなく今回は厳しい。

 日本馬はパリロンシャンの道悪競馬では出番はないと予想する。クロノジェネシス(牝5、斉藤崇史厩舎)は道悪のG2京都記念(重馬場)を勝っていることから苦にはしないと思うが、日本の重馬場と欧州の重馬場はレベルが異なる。京都記念も2200mを2分16秒4でまとめており、欧州ならスピード競馬の範疇。良馬場なら勝ち負けも可能かもしれないが、今回の馬場では難しいと思う。

 思えばG1ドバイシーマクラシックでミシュリフに屈し2着。そのミシュリフが凱旋門賞を回避している事実を軽く見るべきではない。ディープボンド(牡4、大久保龍志厩舎)は前回のように楽に逃げられそうにない。勝ち負けまでは苦しい。日本調教馬2頭よりは、昨年の凱旋門賞5着のラービアー(牝4、仏JC.ルジェ厩舎)の方に魅力を感じる。

"凱旋門賞タルナワ最有力 一発なら武豊"に1件のコメントがあります。

  1. MR.CB より:

    》》ジャーナリスト松田様

    松田さんには頻繁に競馬関連の記事を取り上げて頂き感謝しています。競馬は松田さんの記者としての原点とは言え、令和瓦版では至ってマイナーなカテゴリーですよね。特に海外競馬においては一般的な競馬ファンにとってもまだまだ関心も薄いように感じております。昨今ようやく日本の有力馬が参戦するG1レースであれば、日本でもJRAがネットで馬券を購入できるシステムを構築してからは次第に注目されるようになってきました。やっぱり馬券を買って観た方がレースの緊張感が全然違いますからね。今年は売上も過去最高の53億円超だったとのことでJRAもホクホクでしょうね。今年も日本馬はクロノジェネシスは7着、ディープボンドが14着と分厚い壁に跳ね返されてしまいました。勝ったのはタフな馬場を得意とするドイツのトルカータータッソ。なんと14頭(1頭取消し)中13番人気のダークホースが、節目となる100回目のメモリアルレースを制しました。
    近い将来、日本のホースメンやファンにとって悲願である、日本馬による凱旋門賞制覇をなんとか生きているうちに見届けたいものです。その時はもちろん令和瓦版で、松田記者と共に大喜びしたいものです!

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