自衛官に私的戦闘訓練 ”から騒ぎ”のメディア

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

最新記事 by 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 (全て見る)

 陸上自衛隊特殊部隊のトップだったOBが現役自衛官、予備自衛官を募って戦闘訓練を指導していたことが23日、共同通信発のニュースとして流れた。荒谷氏が故三島由紀夫氏を信奉していること、自衛隊法に触れるとの指摘があることが報じられ、あたかも問題があるような書きぶり。防衛省に法に抵触するのではとされた部分に関して取材すると、狼狽えるメディアと対照的に冷静なコメントが返ってきた。

■共同通信が挙げた2つの問題点

 共同通信などが報じた「自衛官に私的戦闘訓練」などの記事内容をまとめると、陸上自衛隊特殊部隊のトップだった荒谷卓(あらや・たかし)氏は2018年に三重県熊野市の山中に戦闘訓練や武道のための施設を開設し、同年から3度にわたり「自衛官合宿」と称する戦闘訓練を実施してきた。

 昨年12月26~30日の日程で行われた合宿には十数人が参加。迷彩服に着替えて施設と山林を往復していたという。

 そもそも自衛隊OBが自らの経験から、現役、予備の自衛官に戦闘訓練をすること自体、何も責められることではない。自衛官が休日に、万が一の場合に備えて戦闘力を高める訓練を行うのであれば、それは模範的な自衛官であろうし、国民にもありがたいことである。素直に「自衛隊員の皆さん、お休みの日にまで、ご苦労様です」という記事を書いておけばいいと思うが、隊員を褒めるのは嫌だったようで、共同通信は記事の最後に2つの点を指摘した。

①防衛省内には自衛隊法に触れるとの指摘がある。

②OB(筆者註:荒谷卓氏のこと)は作家の故三島由紀夫の考え方に同調するなど保守的主張を繰り返している。

 この2点を挙げることで、荒谷氏と一部の自衛隊員に問題があるかのようにしたかったのであろう。しかし、どう見ても無理筋に思える。

■自衛隊員の服務規定 どこに抵触するのか

東京都新宿区にある防衛省(撮影・松田隆)

 まず、①を見てみよう。共同通信は記事内で「現地取材で実際の訓練は確認できなかった」としている。訓練内容が分からなければ、自衛隊法に触れるかどうか判断はつかないはず。

 そのためか自分では語らず、防衛省内に法に抵触するという声があることを指摘している。しかし、どこの誰がそのように言っているのかは明らかではない。ニュースソースを明かさず、専門性の高いことは何も語らず、共同通信に都合のいいセリフだけを言ってくれる職員もいないと思うのだが、いかがであろう。

 共同通信の記者も記事を書く前に自衛隊法ぐらいは読んだと思うが、隊員の服務については52条から委任規定の65条まであり、休日における行動についても規定されていると判断できるのは以下である。

54条:勤務態勢及び勤務時間等

55条:指定場所に居住する義務

58条:品位を保つ義務

59条:秘密を守る義務

61条:政治的行為の制限

62条:私企業からの隔離

63条:他の職又は事業の関与制限

64条:団体の結成等の禁止

 この中で、戦闘訓練によって服務規定違反になる可能性のある行為はどれか。直接はないが、可能性で言えば59条の秘密を守る義務が考えられなくもない。しかし、秘密の漏洩は戦闘訓練の機会に限ったものではない。特にこの戦闘訓練が秘密漏洩のためにやっていると考える者などいないだろうし、十数人も集めて秘密の漏洩があれば、漏洩したことが漏洩しやすくなってしまう。

 もし、防衛省の職員が「自衛隊法に触れる」というのであれば、共同通信の記者は自衛隊法の何条に触れるかを聞かなければ意味がないし、相手がそれに答えられないのであれば、証言としての信用性には著しく疑問符がつく。そう考えると、そもそも共同通信の記者は本当に防衛省の職員に聞いているのか疑わしい。

 これらの点について防衛省に聞くと、広報を通じ、以下のようなコメントが返ってきた。

報道については承知しておりますが、勤務外における私的な活動であり、防衛省としてコメントすることは差し控えます。その上で、一般論で申し上げれば、自衛隊員が勤務時間外に各種活動を行うことが、ただちに自衛隊法の服務規定に抵触するものではありません。

■憲法19条を読んでから記事を書きましょう

 ②を見てみよう。こちらはさらに無理筋。まず、荒谷氏が実際に故三島由紀夫氏を信奉していたとしても、何も問題にならない。三島氏を信奉している者は戦闘訓練の指導をしてはいけないのか、あるいはそのような者の指導を受けてはいけないのか。そのようなことができる法的権限を持つ者など存在しない。

 仮に防衛省が戦闘訓練に参加しようとする隊員に、荒谷氏の思想を理由に参加をさせない措置をとったとしたら、そちらの方が大問題。憲法19条で保障された思想・良心の自由を侵害する、憲法を蔑ろにするとして、大臣の進退問題に発展しかねない。

 思想・良心の自由の保障内容は「各人がいかなる思想・良心を有することも自由であり、それが内心にとどまる限り、国家が特定の思想・良心の保持を禁止することはできない。また、国家が、個人が有する思想・良心を理由に差別したり、不利益を課すこともできない。」(市川正人 基本講義憲法 初版p117 新世社)というものである。

 防衛省は事前に戦闘訓練に参加しようとする隊員がいても、指導者の思想あるいは、それを信奉するかもしれない隊員の思想を理由に行動を止めることなどできない。それは憲法を遵守する精神である。日頃憲法遵守を叫ぶ共同通信なら、それぐらいは分かるであろう。自衛隊法とともに憲法19条も読んでから記事を書いたらどうかと思う。

■共同通信の記事のバカバカしさ 不毛な連想ゲーム

 以上のように、共同通信が配信した記事は批判に何の根拠もなく、戦闘訓練は何も問題にならないのは明らか。

 それを問題があるように無理作りしたのは、荒谷氏が三島氏を信奉していること、現役の自衛官が相手であること、楯の会と似ていることなどから、アレルギーのような症状を起こしたものと考えられる。

 自衛隊ー三島氏信奉ー楯の会ー軍部暴走ー5・15ー2・26ー戦争

 彼らの頭の中はこの不毛な連想ゲームでいっぱいなのであろう。この記事のバカバカしさは、共同通信の配信を受けていない朝日新聞が追いかけず、加盟社の毎日新聞は少なくともネットでは記事にしていないことからも分かる。

 共同通信はいい加減、このような手法の記事作成はやめたらどうか。

4 thoughts on “自衛官に私的戦闘訓練 ”から騒ぎ”のメディア

  1. アバター トトロ より:

    松田さん、今のマスコミは、自身の思想の前では、
    ファクトチェックをしないプロパガンダ機関です。
    そのいい例が、昨年毎日の伊藤のインタビュー記事。
    膝関節をケガしてベットから起き上がるのが辛いと公言して、
    膝関節を傷めるキックボクシングしている記事を記載している時点
    ファクトチェックが機能していません。
    https://twitter.com/mainichi_dmnd/status/1324559632682127360
    https://www.elle.com/jp/culture/a229544/cin-shiori-ito-me-too-in-japan18-0228/
    https://twitter.com/Palledo_namai/status/1348868924557836288
    https://twitter.com/DMLPG36HKI3TKFm/status/1350038572435349506

  2. アバター 通りすがりの匿名希望 より:

    イイねボタンはどこですか?b

    1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

      >>通りすがりの匿名希望様

       記事の上の方に青い長方形のボタンがありますので、そちらを押していただければと思います。

  3. アバター 匿名 より:

    日本人としてのモラルは失われてしまったメディア

通りすがりの匿名希望 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。