29歳内藤氏の挑戦実らず 世田谷区長に保坂氏

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 世田谷区長選挙(23日投開票)は現職の保坂展人氏(67)が18万票を超える得票を集め、自民・日本維新の会推薦の内藤勇耶氏(29)を下して4選を決めた。財務省研究官の職を辞して臨んだ内藤氏は14万7000票以上を集め、過去3回の区長選の中では最も現職に迫る善戦。早くも4年後の立候補を宣言した。

■過去2回より接戦3万9000票差

落選が決まった後、支援者にあいさつする内藤氏(撮影・松田隆)

 全国的にも珍しい自民・維新推薦の内藤氏は、公明党や国民民主党の応援も受けて保坂氏に挑んだが、一歩及ばなかった。

 午後9時過ぎ、支援者が待つ選挙事務所に姿を見せたが表情は険しく「非常に厳しい戦いです」と一言。午後10時過ぎに開票率12%の段階で2万票で並んでいるという開票速報が報じられると支援者の間からは「おお」という声が漏れた。

 支援者の一人は「前回は(開票と同時の)午後8時に当確が出ましたからね。いいんじゃないですか」と当選に期待を込めた。

 しかし、開票率49%の時点で保坂氏9万票に対して内藤氏8万票と1万票の差が出ると、事務所内から落胆の声が漏れた。午後11時過ぎ、NHKの開票速報で保坂氏当選確実の報が流れると、内藤氏が自らテレビを消し、関係者に促されて敗戦の弁を語った。

 「今回、2か月前、2月8日に財務省を辞めまして、世田谷区長選に立候補することを決めたわけですけれども、短期間、2か月と半分の中にもかかわらず、本当に多くの区民の皆様にご支援いただきましたことをあらためて御礼申し上げます。今回の選挙戦は初めてよその政党の支援を受ける、こういう形の区長選ではありました。しかしながら、私の力不足のせいで、今回、僅かな票差ではありましたが、落選が確定ということになりました。」と言って支援者に頭を下げた。

 最終的な票数は保坂氏の18万6553票に対して、14万7361票と、その差は3万9192票。8年前が約10万票、4年前が約6万8000票の差であったことを思うと、無名の20代の候補が4期目を目指す現職区長に善戦と言っていい内容であった。

■叩き上げvs東大法学部ー財務省

 選挙戦前日まで「あと一歩」と支援を訴えた内藤氏だが、やはり3か月にも満たない準備期間が短かったと言えるのかもしれない。保坂氏はいわゆる麹町中学内申書事件(最高裁昭和63年7月15日判決)の当事者として知られ、定時制高校を中退して教育ジャーナリストとなり、その後、国会議員になるなど、叩き上げのキャリア、3期12年の区長としての実績を持つ。

 一方、内藤氏は東京大学法学部を卒業して財務省官僚という華麗な経歴の弱冠29歳。結果として、そのことが今回の選挙においては有利な条件とはならなかったと言えるのではないか。選挙前日の22日、演説する内藤氏を見守る維新の関係者は「ここは現職が強いからなぁ」と語っていたが、その不安が的中する形になった。

支援者に頭を下げる内藤氏(撮影・松田隆) もっとも、内藤氏は早くも4年後の区長選を見据える。「私自身はこの世田谷で生まれ世田谷で30年、次の4年後の世田谷区長選に向けて明日からしっかりと、活動を進めてまいります。必ず次の4年後の世田谷区長選挙においては、しっかりと当選確実、(午後)8時に当確を目指し、明日から一歩一歩着実に歩みを進めてまいりたいと思います。そして、さまざまな政党の応援を受けられたことでもありますし、次の4年後も幅広い方々の応援をいただけるよう、私としても活動を続ける所存であります。」

 当サイトから「区長選以外の選挙は出る考えはないのでしょうか」という質問に対しては「ありません」と世田谷区長選以外への出馬の可能性を否定し、強いこだわりを見せた。

 その後、支援者から個別に励ましの言葉をかけられ、頭を下げてお礼を言う内藤氏。事務所の外で支援者を送り出した後、背中を向けてハンカチを目に当てる仕草をしていた。勝負の世界の厳しさを垣間見せる瞬間であった。

■3期12年の実績を強調の保坂氏

 当選した保坂氏は、これで4期目となる。2011年の世田谷区長選に挑んだ際には、保守分裂選挙となったために「棚ぼた」に近い形で当選と言われた。

 しかし、2015年には対立候補にダブルスコアの圧勝、19万6068票を得て2期目に入った。前回2019年は18万9640票と、前回とほぼ同じ票数で圧勝し、ここ2回は強さを発揮している。今回は3期12年の実績を強調、教育面での改革などを訴えて前回とほぼ同じ票数を得た。

 当サイトの取材に対して、外国人参政権も「検討すべき」とリベラル色の強い政治姿勢を見せたが、その牙城は揺らぐことはなかった。

 4年後には71歳となる保坂氏が5期目を目指して出馬するかは分からないが、内藤氏は出馬を明言しており、2027年に世田谷区民がどのような選択をするのか注目される。

"29歳内藤氏の挑戦実らず 世田谷区長に保坂氏"に1件のコメントがあります。

  1. 匿名希望 より:

    今回の選挙は、若い方が沢山出られて、嬉しかったです。内藤氏は今回は残念でしたが、次回は期待が持てますね。
    また、芦屋市長の高島りょうすけ氏は26歳ということで、よくマスコミから取り上げられています。
    また、参政党公認で福井県議会議員に当選した藤本かずき氏も26歳です。藤本氏はそれだけではなく、なんと、参政党のボードメンバー(役員)にも選ばれたとか。
    私の若い頃は「最近の若い人は」と批判的な意味で言われましたが、今はその言葉を良い意味で使われることが多いような気がします。
    喜ばしいことですね。

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