現職保坂氏に新人内藤氏逆転狙う 世田谷区長選

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 世田谷区長選(23日投開票)で4期目を目指す現職の保坂展人候補(67)、自・維推薦の内藤勇耶(ゆうや)候補(29)が22日、選挙戦最終日の訴えを行った。過去3回、自民系候補は保坂氏に敗れているが、今回はこれまでにない接戦が予想される。投開票前日、両候補の選挙活動を取材した。

■内藤氏「横に並んでる、あと一歩」

経堂駅前で演説する内藤氏(撮影・松田隆)

 激戦が続く世田谷区長選挙は投票日前日、2人の候補が最後の訴えを行った。内藤氏はこの日正午前から小田急線経堂駅南口でマイクを握った。保坂区政12年で事業達成率が35%に過ぎないことを指摘、今こそ、区長も世田谷区もチェンジが必要であると訴えた。

 今年は関東大震災から100年となり、いつ大地震が起きても不思議はない状況。ところが、地震時の避難所となる小中学校の建て替えが全く進んでおらず、築50年超え、旧耐震基準の学校が40校にのぼると指摘する。

 その結果、92万人の世田谷区の人口に対し、避難できるスペースは、すし詰め状態で20万人が精一杯という。保坂氏の区政の下、災害対策が全く進んでいないとして、当選したあかつきには地域の避難所を整備していくことを約束した。

 その上で「現職(保坂氏)は非常に強いんです。もう背中は見えてます。横に並んでる。でも、あと一歩が足りない。このあと一歩を、残り1日、私を区政に押し出してほしいんです。」と訴えた。

 過去3回、自民党系候補は保坂氏に敗れている。それもここ2回、2015年は約10万票、2019年は約6万8000票差をつけられる完敗。今回は世田谷区内で生まれ育った元財務省職員の内藤氏を立てて23区最大の人口を抱える世田谷区奪還を目指す。

 大きなポイントになっているのが保坂区政の下で進む区の新庁舎建設問題。内藤氏は区民に400億円の負担が生じると指摘し、命名権の活用などで区民の負担をなくすと主張している。これに対して、保坂氏は工事は3分の1進んでおり、170億円は支出が確定しており、区民負担ゼロはあり得ないと反論した。

■区の新庁舎400億円問題の真意

 経堂駅での演説後、当サイトの取材に対し、内藤氏は以下のように答えた。

ーーここまで手応えはいかがでしょう

内藤:正直、かなり接戦になってきていると思います。4年前、8年前と違って、本当に横一戦の状況になっていると思います。

ーー区の新庁舎建設に関する話の区民の方の反応はどうでしょうか

有権者と握手する内藤候補(撮影・松田隆)

内藤:かなりいいと感じます。400億円かかるというのを知らない方が多かったのと、実際に0円にできる方法があるのか、いいよね、というのがあります。区長は私に対する批判もされていて「170億円の支払いは決まっていてゼロにならないじゃないか」という話をされていますけど、私の話は業者の方に400億円払いませんという話ではなくて、400億円を区民の皆さんの代わりに、しっかり稼ぎますよというプランなので、払うことが決まっていることと両立する概念です。そのあたりをしっかりと、上手に区民の方に伝えられるかにかかっていると思います。

ーー現職は革新系に支持基盤がありますが、その層にもアピールできていると感じますか

内藤:私の政策はたとえば消費税10%で、生活必需品を買う時は還元しますよという政策も掲げていますので、そういうところが伝わるのであれば、考えていただく余地はあるのかなと思います。ただ、現職は共産党から事実上支援をいただいていたり、社民党、立憲民主党が支援したりで、簡単には(有権者が)こちらには来ていただけないことは重々承知しています。しかし、私自身はイデオロギーによる政治をしたいわけではなくて、92万の区民のための政治がしたいので政治思想とか関係なく、どちらの方が区民のために仕事をできるかということでご判断いただいて、投票していただけたら嬉しいなと思います。

ーー若さ(29歳)はアピールになっていますか

内藤:私の場合、正直、若すぎるという話もあるので、どちらかというと政策をアピールしています。

■実績をアピールする現職の保坂氏

 一方、4期目を狙う保坂氏は午前10時から祖師ヶ谷大蔵駅前で演説を行った。区政を担当する中、小中学校の給食費の無償化、高校生までの医療費も所得制限なしに無償化などの実績をアピール。

 2年半に及ぶコロナ禍の中、世田谷区保健所を140人からピーク時には500人体制として対応したこと、高齢者施設で感染者が出た場合、その日のうちに全員のPCR検査ができるようにしたこと、ワクチン接種について区役所を挙げて臨んだこと、それらのことで死者を1人でも減らすことに寄与したと語った。

 教育問題に関しては、子供たちのためにこれまでの枠組みにとらわれないオルタナティブスクールをつくること、教師が世田谷区に根を張って活躍できるように区採用の先生の枠をつくることなど、主に教育のソフト面の充実を主張した。

 選挙戦についても触れ、3回連続で一騎打ちの形になっているとして、暗に4選への自信をのぞかせた。

 ここまでの手応えを聞くと「手応えはすごくいいです。(自らの区政は)区民のもとに出かけているということなので、会った方が多いんですね、この12年間で。十分に手応えはあります。」と話した。

■外国人の地方参政権で分かれる見解

 内藤氏はイデオロギーによる政治をしたいわけではないと話すが、実際のところ、自民・維新が推薦する保守系の内藤氏と、社民党の衆議院議員であった保坂氏はイデオロギー的には完全に対立構造にある。

 その点が特に現れるのが、地方自治での外国人の参政権の問題である。この点を聞くと両者は全く異なる見解であることが分かる。

 内藤氏は「私は反対です。現段階では議論は熟していないかなと思っています。」と明確に反対の立場を示した。一方、保坂氏にこの点を聞くと異なる立場であった。

ーー地方レベルの外国人参政権についてどう考えますか

祖師ヶ谷大蔵駅前で演説する保坂氏(撮影・松田隆)

保坂:地方参政権については、まだ実現してないですけども。移民の問題が、これから労働力不足で問題になると思います。今、日本は移民を認めていません。あと、円安ですよね。外国の方がなかなか入ってこない。そういう時にしっかりと国会で議論してほしいと思います。

ーー外国人の地方参政権については

保坂:検討するべきだと思います。

ーー前向きにということですか

保坂:検討するべきだと、そこまでにとどめておきます。

■保坂氏陣営も危機感?

 8年前に10万票あった差は、4年前には6万8000票に詰まっている。今回は生まれも育ちも世田谷、財務省出身の29歳ということで、高い人気を誇る保坂氏といえども楽な戦いではなく、これまでにない接戦が予想される。

 実際、関係者は「厳しい戦い」と話しているという(日刊スポーツ電子版・【統一地方選】激戦の東京・世田谷区長選 29歳新人VS4選目指す現職、新庁舎建設問題で対立)。

 駅前に集まった人数は保坂氏、内藤氏とも同程度で、支援の熱量も大差ない印象。投票箱が閉まるまで激しい戦いは続き、どちらに転んでもおかしくない状況と言える。

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